作品タイトル不明
第562話
鮫の歯を鑑定し、ザックリとスケッチする。こういった授業用の素材には二種類の鑑定を掛けたほうが良いかもしれないぞ。久々に【対物簡易鑑定】に仕事してもらおう。
(対物)
鮫の歯: 死んだ鮫から回収した歯。加工すると様々に使える。ギザギザに注意。
(鑑定)
ホー・ジロー鮫の歯: 退治されたホー・ジロー鮫から回収された歯。歯に沿っているノコギリ状の部分の処理で使われ方が変わる。
これ、鑑定結果がかなり違うな。これはザン=ギュラー先生に聞いてから作業した方がいいだろう。
「ザン=ギュラー先生、ボクは二種類の鑑定を使えるんですけど、かなり結果に差があるんです。どう作業すればいいか教えて頂けますが?」
「どんな感じで見えてるのかな?」
「こんな感じです……」
さっき確認した鑑定差の違いを説明する。特に隠すレベルの内容は無いと思うのでそのまま伝えてしまったけど。
「鮫の種類が出てるのか。普段使いするならこのレベルの鑑定が最高レベルかな。後二段階ぐらい上がるよ。職人で生きていくなら、せめてもう一段階は上げておかないと不便かもね」
「そうなんですね」
「それと、今は職校の授業だから見えた事は全部報告してもらっても構わないけど、外の仕事なら全部開示しなくていいよ」
「あ、その話は外部の職人さんから聞きました」
「ノートの書き方を見てそうじゃないかとは思ってたけど」
前にラルフロ=レーンさんから聞かされていた鑑定内容を隠すやり方だ。それよりまだまだ上があるんだな。出来ることなら最高レベルまで育ててみたい。
「そうだザン=ギュラー先生、『 無礼(ぶれい) コール』も育つんですか?」
「育つみたいだよ。最終的には人物鑑定の上位スキルになるみたいだけどね。最上級だと寿命が見えるとか噂されてるけど、それはガセネタだと思うな」
「寿命!?」
「そんな神様じゃないんだから、寿命までは見える様にならないと思うよ」
それは神様は神様でも死神のスキルじゃないの? でも、俗に言う聖人・聖女や高位の 死霊術師(ネクロマンサー) だったら寿命も見える様になるのかもしれない。
「ホー・ジロー鮫の歯だと確認出来たと言う事で鑑定も間違いなく機能してるよ。たまにホー・タロー鮫だと騙される人がいるんだよね。後、鑑定では魔力痕は付かないから安心してね。さて作業の説明をするよ。周囲のギザギザを全部残す必要はないかな。今回は 鏃(やじり) を作るのでバランスよく整えつつも 刃(・) を意識して研磨して欲しい。砥石はこの辺りを使って。そこに置いてある研磨用具はどれを使っても構わないからね。作業は午前中で終わらせる様に」
「はい、分かりました」
ニセモノにホー・タロー鮫がいる事実!! キノコと言いサメと言い、タローとジローには何か因縁があるのか??? どこかにタローラモ氏も居るんじゃないだろうな。
これ、もし 鋸(ノコギリ) の歯に使う場合ならギザギザを全部残すんだろうな。アクセサリーなんかの装備品だったらギザギザを間引いて先端を丸くして、更に触れた箇所が切れない様に刃引きしなきゃ危険かな。そして 鏃(やじり) は武器だから刺さりやすく飛びやすくを要求されるんだろう。矢は矢羽根もしくは 矢柄(やがら) に射出に関わるエンチャントを掛け、 鏃(やじり) には攻撃力に関わるエンチャントを掛ける二段階方式で強化出来ると説明された。勿論、強化無しの矢でも構わない訳だが。そして弓は弓で弦と弧に分けてエンチャント出来る。弧、つまり弓の本体部分は多くのパーツで構成されるので、その気になったら大変な事になるんじゃ……。そう考えると弓使いが少ない理由が分かる気がする。そして小分けにエンチャントを掛けるなら総魔力量の多さが関係してくるから “ 弓ならエルフ ” というのも強ち間違いではないのか。
そして俺は頭の上の林檎を撃ち落とすより、ボウガンでヒャッハーしたいクチです。オープンカー仕様の馬車ことカブリオレ馬車に乗ってボウガンでヒャッハー……どこの世紀末の破落戸だよ。あっ、サイドカー。オープンカーの隣にネコ車を取り付けてヒャッハー。ちょっとハーレー=ポーターさんにサイドネコ車を耳打ちしてみるか。
下らない妄想はさておき、研磨を開始した。ザン=ギュラー先生は何かしらのデザインを描き始めた。多分、彫刻の仕事のデザインなんだろう。
先端を削ってみたけど、鮫の歯研磨、楽しいな。ブッスリ突き刺さるだけなら周囲のギザギザを削り落として平たく鋭角の三角錐にすればいいんだろうけど、ザン=ギュラー先生の言葉から察するにギザギザは活かせという事に違いない。先端はスッキリさせて 矢柄(やがら) に取り付ける方のギザギザは程良く残してみようかな。
取り敢えずデザインを決めよう。特にギザギザ部分を……だな。返しにならないかもしれないけど若干角度を変えてみるか? 削り落とすギザギザを使って角度の変更を試してみて分かった事は、縁は薄くしてやると刃の様になり肉程度は十分に切れる。一般的な鮫の歯とは違うって事だな。多分、ホー・ジロー鮫は魔獣の類なんだろう。
何種類かの砥石を使って形状は整えた。まだ刃は付けてないけど。魔獣の歯だと言っても所詮はカルシウムよ。排水は集めておいてある。回収されなければ部屋の 木賊(とくさ) に掛けてあげよう。
そして試し刺ししてみたいなぁ……。肉も果物も持ってきていないから無理だけど。まぁ、思うままに作ってダメ出しされればいいか。別に 鏃(やじり) 職人になる訳でもないし。そう言えば 鏃(やじり) は武器だから槍なんかと同じで 大(おお) 鍛冶師の管轄になるのだろうか? それとも 小(しょう) 鍛冶師のお仕事? 今度リンド=バーグさんに聞いてみよう。
全体を 木賊(とくさ) で整える。一息入れたら刃を入れよう。
………クソっ、ギザギザ有りすぎ問題!!
調子に乗ってギザギザを残しすぎたかもしれない。もう少し間引いても良かったんじゃ……。俺のなかではいい感じのバランスに削っちゃったから、今から間引くとロクでもない 鏃(やじり) になるから泣く泣く刃を付ける。
「そろそろお昼になるよー。あと十分」
「えっ、はい。大丈夫です」
集中し過ぎて時間を忘れてた。多分、こんな感じでいいと思う。鑑定結果は “ ホー・ジロー鮫の歯で作られた 鏃(やじり) ” と出た。ノートに記入して 鏃(やじり) と一緒にザン=ギュラー先生に提出した。納期、ギリギリセーフ。