作品タイトル不明
第554話
「しかしミーシャは凄いな。従魔だけでなくその親とも話ができるのか」
「あ…、はい」
テイマーには従魔と意思疎通が出来るスキルがある事は知られているので特に怪しまれなかった。後、畜産業や魔獣と触れ合う機会の多い職業だと意思疎通を補助する魔道具を使う者がいるので、魔道具的にも特に怪しまれはしなかった。でも【聞き耳帽子】は人前で使うのは止めておこう。
「それと 覆輪(ベゼル) は極小サイズでなければ俺も作れる。ラルフロ=レーンの方がいい仕事をするが」
「だったら先にリンド=バーグさんに見せます。それとコカコッコは何の石を使っても構わないと言っていたんですけど、装飾用の石って何処で買えますか?」
「本気で仕入れをしたいなら『マウンテン=ペアー』領に行く必要があるが、別に宝石クラスの石を装着する訳でなければ鉱石を取り扱う店でいいだろう。探せばあちこちに有るぞ」
「あちこちに……」
「鉱石取り扱いの看板を出してない店もあるからな。それこそカーン=エーツかラルフロ=レーンに 「付き合って下さい」 と言ってみるとかしてみたらどうだ?」
それ、勘違いされそうな言い回しじゃねぇか。
そうか、鉱石や原石の取り扱い店ってそれなりにあるんだ。前世のファンシーショップや書店の片隅にパワーストーンや鉱石標本が置いてある感覚なのか?
折角だから鳥に関わる名前の鉱石にしてみようかな。さて前世だと何が有ったかな……。有名どころと言うか鉄板ネタだと翡翠。日本語だと漢字の読みが、そのままヒスイにしてカワセミだ。 孔雀石(マラカイト) と鶏冠石も有る。鶏冠石は有毒なのでパス!! マラカイトはアズライトやクリソコラと共生する場合も有るけど。
後は……パロットクリソベリルとか、ホークスアイとか、カナリアイエロートルマリンとかも有ったな。後、ピジョンブラッドルビー。順番に 鸚鵡(オウム) 、鷹、 金糸雀(カナリア) 、鳩だね。
そうだ、孔雀だったらピーコックパールも有る。それなら非鉱物系繋がりでフラミンゴオパールもあるぞ。パールとオパール、貝取れるのがパール、貝の火がオパールとネタにしたものよ。
羽っぽい模様という事ならセラフィナイトだ。鉱石名はクリノクロアだったかな?
そう言えば竹取物語に燕の子安貝って有ったな。タカラガイの事だったけど、ホタテの貝殻にタカラガイを重ねるのも無粋だ。あっ、ハトムギの仲間にジュズダマって植物が有った。石じゃないけどな。非常食にはなるだろうけど、非常食ばかり装備しているコカコッコってのも何だか嫌だぞ。これらは無かったことにしておこう。
「何か思いついたのか?」
「折角なので鳥に関する名前のついた鉱石や原石にしようかと思いました」
「そこはミーシャの気持ち次第だから好きに選べばいいだろう。今日はこの後作業の予定は入っているか? 何なら昼飯でも一緒に……」
「この後、ボクが保護した【カミチスイコウモリ】を使って知り合いのクルラホーンが飛行実験をするんです。その立ち会いがあるので残念だけど遠慮しておきます」
「これまたレアな実験をするんだな。アリサが聞いたら見たがるぞ」
「やっぱりレアケースなんですね」
「クルラホーンと【カミチスイコウモリ】がそうそう揃わないからな」
報告に結構時間を食ってしまった。急ぎで戻って飛行実験の準備をしないと。
【カミチスイコウモリ】は鳥カゴに入れられたまま飛行実験をする部屋に置かれていた。この教室は『キーボックス』のスキルを取得する時に使った部屋か。誰もいないのでコッソリ【聞き耳帽子】を被って話しかける事にする。
「【カミチスイコウモリ】さん、今日はクルラホーンとの飛行実験を宜しくね。少しだけ赤ワインをあげるよ。飛行実験を頑張ってくれたら終わった後にもっと飲ませてあげるからね」
キィキィ
(「姐さん、飛ばなきゃダメっすか」)
あ、通じた。【カミチスイコウモリ】に作業をさせる時は先に数滴の赤ワインを与え、作業後にご褒美的に赤ワインを追加で与えるのが使役するセオリーだとの事。まぁ鼻先のニンジン作戦が一番っちゃ一番だ。
「お願いします。ボクのお友達のクルラホーンがどうしても飛んでみたいって言うんです。クルラホーンだと【カミチスイコウモリ】さんに餌の赤ワインを分けてあげられないので、ボクが代理で用意しました」
キィキィ キィキィ
(「仕方ないっすねぇ。どうせなら俺をテイムしましょうよ」)
「ごめんなさい。間に合ってます」
アルチュールさんは飛行実験前のチェックを受けているそうなので邪魔をしない事にする。体重測定とか身長測定とか、実験に使う様々なデータを取られてるのか。よく見たら校長室にハーレー=ポーターさんと学園長先生がいるの? 後あれは……確か錬金術ギルドの偉い人じゃない? これって実は凄い実験だったの?
「お~いミーシャ、久し振り!!」
「あ、パートさんお久し振りです。炭焼き実習は終わったんですか?」
「まだ、年内いっぱいは実習だ。今日はクルラホーンの飛行実験を見たくて抜けてきた」
「やっぱり興味あるんですね」
「そりゃあ勿論。それより俺、ついに登録料でエールを飲んだよ。登録料で飲む酒って噂通り美味いんだな」
「おめでとうございます」
「ミーシャにも入ってると思うぞ。その様子なら登録料の入金に気付いてなかっただろ」
「恥ずかしながら気付いていませんでした」
「だったら今夜にでも飲んでみればいいぜ。マジで美味いからさ」
「はい。試してみます」
そうか、パラパラポンチ絵の発案の登録料か。パート君、すまん。俺は入学前に手にした登録料で学費も寮費も向こう六十年分先払い完了してるんだよ。そればかりかポニーに、家を建てる為の土地も手に入れちゃってるよ。それでもエール一杯で喜ぶ姿を見るのは微笑ましいけどね。