作品タイトル不明
第552話
養鶏場に向かう途中、市場に立ち寄る。萎びた野菜とフスマ、値引きされている豆類を購入。お詫びの差し入れ品ね。それと実を軸に着けたまま乾燥させたトウモロコシを二本。俺のかわりにこれを突いて下さいって事で。
タッキーとチャーモに話しかけてみて、通じなかったら帽子を被る事にした。動物を扱う施設だからレアな帽子を被っても大騒ぎされないだろう……というのは甘い考えか?
「昨日は災難でしたね」
「いえ、子供が危険な目に遭ったんですからタッキーとチャーモが怒るのも仕方ありません」
コッコッコッ 鶏達ともスッカリ仲良くなった。俺を覚えて挨拶してくれてる? 卵を産まなくなり肉用として出荷された鶏と若鶏とが入れ替わって、いつの間にか知らない鶏になっていたりしてるんだろうけど。
「タッキー、チャーモ、コカちゃんを連れてきたよ。コカちゃんを危険な目に遭わせてごめんなさい」
コカコッコー
(「ふむ、分かればよい」)
コカッ?
(「あら?」)
コカッ コカ?
(「スキルか道具か?」)
コッピョ コッピョ
(「コカパパ、コカママ、 ぼくたちヒゲママとおはなしできるよ」)
コカーッ?
(「それがこの感覚か?」)
「改めまして。ボクはミーシャ=ニイトラックバーグです。宜しくお願いします」
コカッ コッコッ
(「あら、ヒゲママさんは丁寧なのね」)
「今日はお詫びの印も兼ねて差し入れをお持ちしました。鶏さん達と食べて下さい」
コカコッコー
(「いつも悪いな。鶏達も喜ぶ」)
「あ、この乾燥【 穂先(ホ) 黍(キビ) 】はお二人にです」
コカコッコー
コッコッ コカッ
コカコッコー
おおっ、タッキーとチャーモとも話ができる!! つまり、『シン・動物王国』の分子の数字に含まれているって事でいい?
俺の中だとワギュ、ラパン、アンディー、タッキー、チャーモ、カトリーヌ、コカちゃんの順で登録されていると思う。どうせなら登録メンバー名を表示してくれればいいのに……。
{ ――― 善処します ――― }
この男声は誰だ!? まさか上様??? 上様だったら宜しくお願いします。
そしてコカコッコ同士の内密話の内容は分からずじまい。それはそれでいいと思うよ。全部聞こえたらお互いストレスだと思うし。そうだ、印象が良いうちにお詫びのホタテの貝殻も渡してしまおう。
「あ、後、ご迷惑でなければ【ホヤッキー】の貝殻も差し上げます。鶏やコカコッコには砕いたら美味しく食べられるんですよね?」
コカッ!?
(「【ホヤッキー】だと」)
コカココッ
(「まぁ、なんという事でしょう」)
「あ、お気に召しませんでしたか?」
餌用マジックバッグから出すフリをしながら『 次元収納(インベントリ) 』からホタテの貝殻を取り出し二羽の足元に差し出す。
コカコッコ コカコッコ
(「あなた、どうかしら?」)
コカコッコー!! コカコッコー!!
(「似合っているぞ。俺はどうだ」)
コカッ コカッコー
(「お似合いですわよ」)
えっ、チャーモの後頭部とタッキーの胸元にホタテの貝殻が付いてる!? 一体どんなスキルを使ったんだ? コカコッコには 念動力(サイコキネシス) があるとでもいうのか?
コカココッ
(「少し大きいですわ」)
コカッ コカッ
(「確かに」)
えっ……コカコッコもホタテビキニ(ハーフ)を装備するの? 食べるんじゃなくてか?
「おや、タッキーにチャーモ、素敵な装備を頂きましたね」
コカコッコー!!
コッコッ コカッ
コカッ コッコッ
「少し大きいですね。どうせなら専用装備に加工してもらいましょうか」
コカコッコー!!
コカコッコー!!
うわ〜〜職員さんが何だか嫌な事を言ってるし。しかも俺の事をチラチラ見てくる。無言の圧を感じるんだけど。
コカッ? コカッ?
(「ヒゲママさん、あなた【ホヤッキー】加工は出来るの?」)
「あ…、今、練習中です」
コカコッコー
(「ならば頼もうとしよう」)
コッピョ
コカコカコッコッ
(「コカちゃんは大きくなったらお願いしましょうね」)
まさか、コカコッコから研磨依頼を請ける事になろうとは……。
タッキーとチャーモがどうやってホタテビキニ(片)を装備したのかというと、『 隠者(ハーミット) 倶楽部(クラブ) 』というスキルを使用したのだという。ヤドカリをヒントに生まれた鎧下が無くても鎧の類を装備出来る便利スキルだ。
コカッ コカッ
(「鶏冠の後ろの引っ掛かりを減らして下さる?」)
コカッ コカコカ
(「俺はこう、胸元にフィットする様に頼む」)
「分かりました。完成まで時々確認してもらっていいですか?」
コカコッコ
(「そうだな。どうせ毎日やって来るのだしな」)
コッピョ コッピョ コッピョッピョ
(「コカパパ、コカママ、よかったね。ヒゲママありがとう」)
どうやら毎朝確認し、微調整をすることになる模様。
コカッコッコ
(「破片は分けてくださる?」)
「いいですよ。ところで、魔導 鍍金(メッキ) は掛けなくて良いんですか?」
コカ〜ッ? コカーッコカーッ
(「はぁ? それでは非常食にならぬではないか」)
ホタテビキニはまさかの非常食だった。鎧にもなる非常食なのか、非常食になる鎧なのか……。
コカッ コカ
(「どうせなら石も付けてもらおうか」)
コッコッ コカッ
(「あら、良いですわね」)
なし崩し的にコカコッコの為のホタテビキニを作るハメになりました。
「コカコッコの為の【ホヤッキー】の夫婦装備ですか。実に羨ま…、いや素晴らしい」
今、羨ましいって言ったよね? 羨ましいって。
俺に出たオーダーは、コカコッコ用ホタテビキニの夫婦装備で、何らかの石を取り付ける事。別に強化石で無くてもよいと言われた。後、毒性が有る石でも問題無いとも。まぁコカコッコだから解毒しちゃうもんなぁ。その前に毒石は俺が触りたくないわ。
加工と言ってもホタテの貝殻の研磨をした後、当たりの気になる箇所を削り落とすだけだ。石の取り付けはまた別の工程になるので別の貝殻で練習してからだな。それはオロール先生に聞けばいいだろう。オロール先生が無理でもリンド=バーグさんかラルフロ=レーンさんなら取り付けられるんじゃない?
コカコッコッコ
(「頼んだぞ」)
コッピョ
(「ヒゲママまたね」)
この時の俺は “ ホタテビキニの匠(ホヤッキー・マエストロ) ” と呼ばれる未来が見えていなかった訳で……。