作品タイトル不明
第546話
アルチュールさんは明日朝イチで職校に来てくれる事になった。戻ったら明日の空き教室の塩梅を確認しておかないと。そしてクルラホーンによる【カミチスイコウモリ】装備の飛行実験をします、と申請だ。もしかして見学者とかが来たりするのか?
【カミチスイコウモリ】用に一番安い赤ワインを買った。飼うつもりはないのでポーション瓶に一本分だけ詰めてもらった。余ったら料理の隠し味にでも使おう。もしくはアルチュールさんに安酒でスミマセンと渡せばいいか。
そう言えば、十一の月の【スキルオーブ】を使うのを忘れていた。一回岩塩でブッ倒れた時に確認したから特に増えてないだろうと思っていたせいもある。職校に戻ったら【スキルオーブ】を貰ってチェックしてみるかな。学園と職校、計二つ貰えるのは美味しい。
商業ギルドを出て養鶏場に向かう道すがら、オロール先生が話しかけてきた。
「ミーシャ、さっきは商業ギルドだったので話せなかった事があってね。夕飯の後に私の部屋に来てくれないか?」
「今、歩きながら話すのは駄目なんですか?」
「駄目だね。二人っきりでしないといけない話だよ」
「分かりました。アンディー、カトリーヌ、今夜もコカちゃんとお留守番していてくれる?」
ムキュウ!!
プキィ
従魔も立ち会えない話か……。何だか気が重いよ。
養鶏場に着いたので、一連の消毒の儀式を済ませいざ入室。受付でベストな餌を注文しておく。髭飾り、ヨシッ。
「コカちゃん、迎えに来たよ」
コッピョ コッピョ
はぁ〜〜可愛い。数日ぶりなので殊更可愛い。可愛いけどこのカラーリングは目にくるな。流石、警戒色だけはある。
コカッ コカーコッコ コカコッコー!!
コカコッコー!! コカコッコー!!
あ……あれ? タッキーとチャーモにめっちゃディスられてね? ディスられると言うか意見されてる感じだな。俺、何かやらかしてたとか?
「タッキー、チャーモ、こんにちは。ボク、コカちゃんを迎えに来たんだけど」
コカコッコー!! コカコッコー!!
(可愛いコカになにさせた!!)
コッ…… コッ…ピョォ
(コカパパ やめてよぉ)
両翼を大きく広げてコカちゃんの前に立ち塞がる様に出て来るタッキー。軽く助走しては蹴り掛かる仕草も見せてくる。お怒りじゃ、コカコッコ様がお怒りじゃぁぁ!!
コカコッコー!! コカコッコーー!!
(酒エルフだな、お前か? お前が原因だな!!)
タッキーは俺の後ろにいたオロール先生を見つけると執拗に追い掛け回し、ドロップキックをかまし、足元を突き始める。
「わっ、わい、やめでけれ!!」
訳:(わぁ、わぁ、止めておくれ!!)
人間、慌てると元言語が出るんだな……。【翻訳コニャック】を飲んでても口から出るのは古代エルフ語になってるじゃないか。
「あの……ボクには何が起きているのかよく分からないのですが」
「そちらのコカちゃんですが、大分疲労されていまして。失礼ですが解毒を強要するとかされましたか?」
「解毒ですか? ボクは……あっ、今タッキーに追い回されている古代エルフですけど、コカちゃんに会わせた時にコカちゃんが興味を示しまして、その時に楽しそうに突いていました」
「古代エルフを? 楽しそうに突いて?」
「はい。あの古代エルフは職校の非常勤講師の方で、ボクに刺し子の指導をして下さる先生です。学生寮の同棟に寝泊まりしている関係もありまして、コカちゃんをここに連れてくる前に会わせました」
「その時コカちゃん自ら古代エルフを突いたと?」
「はい」
「それですね」
「わい、助けでくれじゃ〜〜。いでべな、いでべな!!」
訳:(わぁ、助けておくれ。痛い、痛い!!)
コカコッコーー!!
怒るコカコッコ、酔っ払いエルフを走らす。
「オロール先生、あ、あの古代エルフの名前なんですけど、コカちゃんに突かれた後にとても体調が良くなったと言っていました」
「体調が……」
「そうだ、コカちゃんは翌日も突いていました」
「雛が、よりによって古代エルフを連日突いた!?」
えっ、物凄いやらかしなの??? 酔い覚まし=解毒だよね? ヒヨコにはまだ早いって事だったとか?
「あのですね、古代エルフは言わば状態異常の塊でして、常に酔っている、これは毒状態で過ごしているのと同じです。そして塩分過多により体内に過剰な塩を溜め込んでいます。ご存知かと思いますが塩と石には双極性の関係がありまして、石化と塩化は治癒業界では同義であると考えられております。つまり古代エルフは体内に石化状態を抱えているという事になる訳です」
「毒状態と石化、まさか!!」
「そのまさかです。コカちゃんが
古代エルフを突いたという事ですが、そこで解毒と石化解除を同時に行ってしまったのです」
「成鳥でも大変そうなのに、コカちゃんってまだヒヨコ……」
「なので大問題だと。しかも二日続けてです。もう一日・二日突いていたら恐らく命が尽きたかと……」
「ごめんなさい!! 知らなかったとは言え、ボクはコカちゃんをそんな危険な目に合わせちゃった」
「それは雛に直接伝えてください」
「はい。コカちゃん、ごめんなさい」
コッピョ コッピョ
「もう危険な目に合わせないからね」
コピョ コッピョ コッピョ コッピョ
(ヒゲママ なかないで。ぼく げんきになったよ)
コカちゃんが俺の手を優しく突いてくれた。そのまま乗ってきたのでそっと抱きしめる。
「あっ、さっきお酒を飲んじゃったから突かないでね」
コッピョ〜
そして高血圧は、異世界基準だと体内が石化異常をおこしていて、血液の循環が悪くなっている状態のことを指すみたいだった。そして、血管が破裂したら死なないまでも石像の様に動けなくなる……。
あれ……毒状態と石化状態、これが古代エルフ短命の秘密か!? 結局、酒量過多と塩分過多が原因じゃねぇか。