作品タイトル不明
第541話
「そうだね、ここはビゴの様にBPAPの術式を使うとするか……」
オロール先生は【 臥蝶(テコナコ) の 腕輪(わっか) 】に【 秋津(ダンブリ) の 腕輪(わっか) 】を無理矢理合体させた【 臥蝶(テコナコ) 秋津(ダンブリ) の 腕輪(わっか) 】を作り、そこに【蝉コ】を足すという謎の合成術で特製の 腕輪(わっか) を作り上げた。
合成術というか魔改造だけど。
オロール先生曰く、BPAPの術式というのはバンド・フェニックス・アシミレイション・パーツの略で、複数の異素材を合成し不死鳥の様に新しく蘇らせる術式なのだという。そしてこのBPAPの術式を生命体に使った場合キメラが産まれてしまうので、普段は禁呪とされているのだとも。
そしてそのBPAPの術式を得意とするのがダミアン=アナナス=ビゴという名の錬金術師なのだとか。勿論、古代エルフだ。
他種族に寛容で、金ピカ装備で歌って踊れるパリピ錬金術師。異素材を用いる素材融合を得意としている。
「ふぅ、成功したよ。この 腕輪(わっか) は転生を繰り返しても記憶を留める仕様にしたからね。幾らでも転生して想い人を待てるよ」
「おお、かたじけない」
「まぁ……想い人と巡り合うのが先か、心が折れるのが先か、気が触れるのが先か……だけどねぇ。それでも良ければ装着しておくれ。着けたら最後、外すには『チュエレ山』行きだ。良く考えてから着けておくれ」
「いや、問題無い。オロール先生、感謝する」
躊躇なく特製の 腕輪(わっか) を左手に装置するミケヲさん。男前だ。何度転生しても記憶持ち、しかも累積って俺だとちょっと耐えられない気がする。
「いくら猫が九つの魂を持つとか言われていても、転生することで生まれる魂の重なりを術師に掴まれると操られてしまうからね。 重魂(じゅうこん) 封じの 腕輪(わっか) で押さえてしまえば安心だ。気が済むまで転生しておくれ。そしてその 腕輪(わっか) を装着している限り、古代エルフと友好関係が保てるよ」
「ほう」
「あ……、友好関係ってまさかお酒を集られるアレですか?」
「そうとも言うね」
「それでは吾輩、オロール先生にお礼のお酒をご馳走するのだよ。昼酒になる訳だが、ミーシャ、何か合わせる料理は有るのかね?」
「あ、はい。この後作ります。今日は【タロール茸】と【バサルトタートル】のお肉を用意しています」
「よし、ここから先は宴会だね。猫の人とドワーフと古代エルフ、三種族の交流に乾杯をしようじゃないか」
「あの……、 三毛皇(みけおう) 閣下とオロール先生にお伺いを立てたい事があるのですが……」
「何かね?」
「もう一人、宴会に参加者を追加しても宜しいかお尋ねします。クルラホーンの同席は問題無いでしょうか?」
「クルラホーンかい? 私は構わないよ。それこそ け(・) や(・) ぐ(・) だよ」
「吾輩も問題無いね」
「それなら、ボクの懇意にしているクルラホーンを紹介します」
「友達かね?」
「友達と言うよりはビジネスパートナーですね。お酒を対価に色々と採取してもらっています」
アルチュールさんの参加も許可されたので、この後は調理のできるいつもの部屋に移動する。そして宴会。その前に顔合わせだな。
ムキュウ ムキュウ
(「ますたー まてたの」)
「アンディー、お待たせ。カトリーヌは起きてる?」
ムキュウ
プープー プキッ
(ブラッシング気持ちよかったしー)
ムキュウキュウ
(「ぶたさん ごきげん」)
良かった、カトリーヌが起きてた。しかもご機嫌みたいなのでホッとした。
小型従魔のお世話も各ギルド職員や職校及び学園の講師に課せられる業務という事で、ナオ=エーツさんは楽しみながらお世話の仕方を習っていた訳だね。
ちなみにアンディーとカトリーヌは商業ギルドでは人気者だ。愛らしいし、何より暴れないからね。
「アルチュールさん、前にお話していた古代エルフの方を紹介します。職校の非常勤講師でボクに古代エルフ伝統の刺し子を教えてくれているオロール先生です。オロール先生、そちらが先程お話ししたクルラホーンの方です」
「初めまし……おや、いつぞやのクルラホーンかね?」
「あんた、いつぞやの古代エルフ」
「あれ、顔見知りでした?」
「この前 “ センベロ酒場 ” で意気投合したよ」
「いやー、あの時はゴチになったぜ」
まさかの飲み仲間だったとは。飲み仲間というよりは相席して飲んだというのが正しいのか。アルチュールさんにしてみたら酔っ払ってる奴は大体トモダチだから仕方ないか。
「そっちは猫の人の有名人だしな。ミーシャ、パネェな」
「これは吾輩のカクテルを振る舞い甲斐があるというものよ」
「あざーっす、ゴチになります。 三毛皇(みけおう) 様からゴチになったってな、末代まで自慢出来らぁ」
「何を作られるんです?」
「猫にちなんだカクテルと言えば【 子猫ちゃん(プッシーキャット) 】と【 猫娘(キティガール) 】だね。まぁ【 子猫ちゃん(プッシーキャット) 】の方はノンアルコールだが」
「 三毛皇(みけおう) 様、俺は商業ギルド職員のホーク=エーツと言います。そのお酒は異世界に由来する物ですよね?」
「そうだね」
「あの……、差し支えなければ登録していただけますか?」
「おや、もしかして知られていないカクテルだったのかな?」
「はい、初耳です。そして俺はその、ノンアルコールカクテルという物が気になります」
調理場のある部屋に移動する。結局、ホーク=エーツさんも確認する為に参加してきた。新しくカクテルの登録の為と言うよりノンアルコールカクテルを飲んでみたかったんじゃない?
「先ずは【バサルトタートル】を煮込みます。それから【タロール茸】の料理を手掛ける事になります」
「あ、【バサルトタートル】の時期になったのか。そこの鍋を使うといいよ」
【バサルトタートル】を煮込む間に【タロール茸】とカトリーヌの話をする。
「この【タロール茸】は吾輩のいた世界では松茸と呼ばれていたね。松林に生えるから松茸。そして高級品だった。この香りが堪らないね。まぁ、味はそうでもないと言えばそうでもないんだが」
「何と、 三毛皇(みけおう) 様の転生前の世界にも同じキノコが生えているとは。つまり、過去の転生勇者達も口にしていたと」
「それはどうだろうね。物によっては一本が金貨一枚ぐらいしたからね。庶民の口にはそうそう入らない代物だ」
「【タロール茸】を転生勇者のキノコとして売り出しても良さそうですね。流行り物好きなヒト族にはウケそうです。香るキノコ繋がりで【トリル茸】の廉価版として売り出せそうです」
「まぁ、前世では “ 香り松茸・味シメジ ” と言われていたものだよ」
「おや、そんな格言が」
「そして【タロール茸】も【トリル茸】もこのカトリーヌが匂いを嗅ぎ付けて探し当ててくれました」
プープ プープ
(アタシ、お手柄っしょ?)
「カトリーヌ、褒めて使わす」
プープ プーププー
(ありがとうだしー)