軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第539話

ナオ=エーツさんはカトリーヌを眺めたり寝姿をお絵描きしたり。それなりに楽しそうだ。俺もまさかカトリーヌが棚の中で寝てしまうとは思わなかったよ。

「ナオ=エーツさん、カトリーヌが起きたらこの野草クッキーを食べさせてあげて。それからブラッシングしてあげたらカトリーヌがご機嫌になると思うから。もし十一時になっても起きなかったら 「オヤツの野草クッキーがあるよ」 と言って起こしてあげてね」

「はい、分かりました。ブタさん……カトリーヌちゃんが起きたらお世話します」

「お願いするね」

「妖精さんは……」

「俺は気にしなくていいぜ」

「そこの妖精さんはクルラホーンという種族で、名前はアルチュールさん。お酒が好きだけど自分では注文する事も買うことも出来ない種族なんだって」

「可哀想です」

「と言っても神様が決めた事だからなぁ……、俺にはどうにもなんねぇわ」

「妖精さんにこの小さな瓶を渡してあげて。ボク、まだ今日のお礼をまだ渡してなかったんだ。ナオ=エーツさんから渡してもらえる?」

「妖精さん、はいどうぞ」

「ありがとよ。可愛い嬢ちゃんから貰った酒は殊更美味いだろうな」

「はい、そこのクルラホーン、ナオに近付かない」

「ヘイヘイ」

「妖精さん、カーンおじちゃんより変じゃないよー」

まさか、ナオ=エーツさんの中でカーン=エーツさんのランキングがアルチュールさんより下だとはね。

◇◇◇◇◇

「やぁ、諸君、ごきげんよう」

いつもの様に商業ギルドの奥の方からミケヲさんが姿を現した。商業ギルドの奥には転送陣が有るので、そこを利用する事によりミケヲさんは馬車などで移動するより遥かに安全に来訪出来るという訳だ。まぁ、それはミケヲさんが偉い人で、尚且つ猫の人だから出来る訳なんだが。

俺らも一応、転送陣で移動は出来るよ。黒猫スタッフの同伴転送だけどね。ただ、利用料金がべらぼうに高いのですよ。運転手付きのリムジンをチャーターする様な感じだね。かなり遠方でもなければ自家用【 運魔(ウマ) 】で移動すればいいし。まぁまだ仮免状態な訳だけど。

「 三毛皇(みけおう) 閣下、おはようございます。まだオロール先生が到着しておりません」

「おやおや、古代エルフはお寝坊さんかね?」

「どうでしょう。朝風呂なのか朝酒か……」

「ところで今日は何か美味しい料理は用意されているのかね?」

「はい、お耳を拝借してよろしいでしょうか?」

「うむ、許す」

許可が出たのでミケヲさんにそっと耳打ちをする。今日は松茸尽くしですよ……ってね。

「にゃにゃ、にゃんと、きにょこ!!」

あっ、噛んだ……。

オロール先生も到着したので三人で小会議室に移動。施錠し防音の魔道具を起動させる。ミケヲさんが「なぜこんなチンケな部屋に通すのかね?」タイプの 首領(トップ) でなくて良かった。俺もそうだけど、会議室?ハイハイ、だしな。商業ギルドは冒険者ギルドより情報漏洩対策設備がちゃんとしてるから仕方ないとも言う。但しドワーフ領に限る。支部でこのレベルなら、本部のセキュリティはどれだけだよ……。

(共)「あの、挨拶の前に言語を決めましょう」

(共)「うむ、確かに」

(共)「 三毛皇(みけおう) 閣下はドワーフ語は堪能ですか?」

(共)「勿論だ」

俺、知ってる。それ、異世界転生特典のスキルのお陰なんだけどねぇ。

(共)「それならドワーフ語を基準としようかね。まぁ私は【翻訳コニャック】を飲んだらどうとでもなる訳だけど」

(共)「【翻訳コニャック】とは?」

(共)「 三毛皇(みけおう) 閣下、それは古代エルフの秘薬で、それを飲んで酔いが回っている間はどんな言語でも使いこなすことが出来るみたいですよ」

(共)「では飲むよ」

オロール先生がほんの一口分だけ【翻訳コニャック】を口にした。そんな量で大丈夫か……? なレベルの量だけど。

「ええと、通じてるかねぇ?」

「うむ、大丈夫だ」

「これど ちがるか〜?」

訳:(「これとは違うかね?)

「吾輩、それは止めてもらいたいね。全くわかぬ故に」

嘘だろ!! ミケヲさんはスキルを通せば古代エルフ語も理解してるハズだ。

改めてオロール先生とミケヲさんが挨拶を交わした。まぁ、猫の人のトップで転生者だとか、古代エルフの職校の非常勤講師だとかそんなレベルの内容だけどね。ミケヲさんは俺のせいなのか、オロール先生の事を “ 先生 ” 呼びしてたけど。

「そうだオロール先生、吾輩ちょっとだけ試したいことがある」

「何かねぇ?」

「今から吾輩、前世で使っていた言語で話す故、それが翻訳出来るか確認してもらいたい」

「相分かった」

あ、それは大事な実験じゃないか。日本語をポロリした時に意味を拾われたら危険だわ。

(日)「えー、テステス。生麦生米生卵。東京都特許許可局。バスガス爆発。春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際」

少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

そこで枕草子を出すか? 心のなかでつい反射的に文章を続けてしまったじゃないか。良く考えたら 古典文学(これ) も日本人炙り出しワードだな、気を付けよう。

「それはどこの言葉なんだい? 私には何が何やら、さっぱり意味が分からないねぇ……」

マジか!! 日本語ってこっちのスキルや道具を通しても通じないんだ。それならミケヲさんとコソッと会話しても傍受されないって事じゃない? そして下手にポロリすると転生者だと疑われたりもするんじゃない?

「そうか、分からなかったか……」

(日)「それなら、酒は飲んでも飲まれるなとか、短命県返上!! とか、思ってたエルフと違う!! とか言えばよかった」

「言ってる意味はよく分からないけど、ちょっとだけイラッとするのは何故だろうねぇ?」

「いや吾輩、お酒は楽しく程々にと言っただけだよ」

嘘です。デタラメとまではいかないけど嘘です。

「それより、僅かな量の【翻訳コニャック】で大丈夫なのかね?」

「ああ、これかい? 先に飲んで酔いを回してきたからね。酔いが覚めるまで効果は消えないから大丈夫だよ」

(日)「おいおい、いつも酔っ払ってるんじゃないのかい? “ 酔(すい) 酔う(よう) どうでしょう ” なんでしょ? “ 酔う酔うs(ようようず) ” なんでしょ〜う?」

ミケヲさん、容赦ねぇし!!