作品タイトル不明
第322話
「儂の話はそんなところじゃな」
「ありがとうございます。【 樹精(ドライアド) 】を助けたり、冷しの秘匿魔法を会得したり、名誉猫獣人に認定されたり、それなりに武勇伝をお持ちなんですね」
「まだまだあるがの。そうじゃ、猫の人用の【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓の新年飾りなんじゃが、職校の実習用に二百個程発注が入ってるはずじゃが、ミーシャは受注したかね?」
「本当ですか? 初耳です」
「炭焼き実習期間じゃったから見てないかもしれぬな」
「多分そうだと思います。学園にも顔出ししてたので…」
「請けなくても単位には一切関係ないものじゃよ。炭焼き実習で授業に穴が開く事もあるからのう、その期間の穴埋め作業みたいなものじゃよ」
「多分、生徒の受注は終わってますね。ボクも一つくらい組んでみたかったけど…」
「ミーシャの時間が許すなら儂の所で作っていくとよいぞ」
「いいんですか? ボク、パイク=ラックさんから習いたいです」
「それなら、職校の事務に 「木工師のパイク=ラックの工房で終日【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓細工の指導を受けてくる」 と伝えるのじゃよ。申請しておけば実地実習扱いになるのでのう。それも単位に算定されるのじゃよ」
「わかりました夕方にでも申請しておきます。 「 『全 極星(ポラリス) 級・木工師』のパイク=ラックさんの工房で終日【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓細工の指導を受けてきます」 と伝えればいいんですね」
「よく覚えておったのう」
「勿論、覚えてますよ」
ユニークスキル『 知識保管庫(アーカイブ) 』、ありがとうありがとう。
「それこそ明日でもいいんですか?」
「構わぬのじゃよ」
「明日の実地実習で申請してきます。九時・五時ですよね」
「そうじゃよ。夕飯も食べていかんかね?」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて誘われます。寮の門限を遅い方で申請してきます」
「儂の家じゃからな、冷しエールも飲み放題じゃよ」
よしっ、パイク=ラックさん直々の籠細工指導だ!! これはメッチャ嬉しい。冷しエールも嬉しいけどねっ。
「そうだ、パイク=ラックさんの作ってくれたアンディーの 巣箱(ケージ) なんですけど、どちらの 巣箱(ケージ) もとても気に入ってくれました」
キュウキュウ
「それは良かったのじゃ。儂も長く生きてはきたが、流石に樹上棲カーバンクルの 巣箱(ケージ) を手掛けるのは初めてじゃったよ」
「学園寮の 巣箱(ケージ) も職校寮の 巣箱(ケージ) もどちらも機能も雰囲気も違うので、楽しそうに使ってますよ」
「アンディーじゃったな、どちらが好みかのう?」
ムキュウ キュッキュッキュ
(「かご すき はこ すき」)
「どちらも好きだって言ってますよ」
「それは良かったのじゃよ。ホッとしたのじゃ」
「あっ!! 今月末にコカコッコの雛が家族になるんです。また 巣箱(ケージ) をお願いすることになりそうです」
「従魔を増やすのはよいが、部屋が狭くならぬかのう?」
「それなんですよね。ゆくゆくは家を買おうと思ってますが…。その時は相談に乗って下さい」
「勿論じゃよ」
「ミーシャねぇね、こんにちは。じぃじ、ミーシャねぇね、冷たいワートをどうぞです」
「おお、アッシュ気が利くのう」
「アッシュちやん、ありがとう」
「母様にじぃじ達にワートを届けてあげてと言われました」
ムキュウ
「ミーシャねぇね、それは従魔ですか?」
「数日前にボクの従魔になってくれたグライダー・カーバンクルのアンディーだよ」
「可愛いです。アンディーさん、初めましてアッシュ=ラックです」
ムキュ〜ウ
(「よろちく」)
「宜しくだって」
とまぁ、アンディーの 巣箱(ケージ) のお礼やら、アッシュちゃんにアンディーを紹介したりと雑談が続く。ワートのおかわりを勧められたのでアンディーの分も貰った。
ムキュウ ムキュウ
(「あまいの おいちいの」)
アンディーがワートを気に入った様なので明日も出してもらうことにした。アッシュちゃんは 「また明日です」 と退席したので本題に取り掛からないと。
「それで、本題はこれなんです…」
鞄の中から白いタコさんウィンナーと 母体樹(ぼたいじゅ) の枝を取り出した。流石に生きているか死んでいるのか分からないものなのでマジックバッグには入れられないし。
「おお、これは【 樹精(ドライアド) 】持ちの【プルモニア】じゃな。これまた何処から出してきたものなんじゃ?」
流石、【 樹精(ドライアド) 】の加護持ち。初見でも一発正解です。
「実は実習の時に……」
炭焼き実習の時に始まり、 母体樹(ぼたいじゅ) の治療までにあったアレコレを伝える。
「なるほどなるほど…。ミーシャ、それは【プルモニア】の 母体樹(ぼたいじゅ) の素直な感謝の気持ちじゃよ。素直に受け取らんでどうするのじゃ」
「ボク、 母体樹(ぼたいじゅ) からこれらを貰ったのはいいけど、どうしようか悩んじゃったので…」
「それこそさっき家を買う話が出たじゃろう? その時に庭に植えてやればよいのじゃ」
「植えていいんですか?」
「ミーシャの側に植えて欲しいから渡してくれたんじゃよ。それはのう、スキルには出ないが 母体樹(ぼたいじゅ) よりの感謝の印なんじゃ。それこそどこかに居を構えた時に庭に植えてやらねば恨まれるかもしれぬのぅ…」
「恨まれるとか、それはちょっと……。それまでは鉢植えでいいんですよね?」
「出来れば花を付ける前に植え付けてやるのがよいのじゃよ」
「はい、分かりました。パイク=ラックさんの見立てではどれくらいで花を付けそうですか?」
「そうじゃな…、木が落ち着くまで二・三年といったところじゃろう。花が咲くのはもう一・二年先かのう?」
「それって結構短い…のかな?」
「まぁミーシャなら直ぐにでも家を建てそうじゃが…」
「お金も土地も無いですって!!」
「フォッフォッフォッ…それはどうかのう?」
いや、本当に無いですから!!
そして白いタコさんウィンナーは 母体樹(ぼたいじゅ) 化している【プルモニア】の花なので、枯れることも朽ちることもないのだという。アクセサリー化して装備するのがよいとの事。身に着けていたら植物に対するトラブルが減るみたい。それこそ草負けしなくなるとか漆カブレしなくなるとか。流石に毒への耐性は付かないみたいだ。花粉に対するアレルギー反応が無くなると嬉しいんだけどね。