軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第321話

【プルモニア】の 母体樹(ぼたいじゅ) の治療が終わったので『スワロー』に戻ってきた。『 脈(みゃく) 見役(みやく) 』は炭焼き窯の所に戻るとのこと。どこに四本の枝を挿し木するか検討するか相談するんだって。それによって今後の活動が決まるらしい。どこに植えるのか俺には教えてくれるみたいだ。

食堂で遅目の昼食を取り、それからパイク=ラックさんの家に向かう。毎回いきなり押しかけていて申し訳ないのだが、電話やそれに準じる物が無いからなぁ…。連絡の魔道具は有るには有るけど見た感じでは黒電話より不便な仕様だったよ。研究開発は誰かがしてるんだろうから俺はノータッチ。電話チートでもなければ魔法を魔道具に転用する知識も技術も無いしな。それこそ初代問題児・ハーレー=ポーターさんに頑張ってもらおう。

「お忙しい中、今回もいきなり押しかけてしまいました」

「ミーシャじゃし、いきなり来てもよいのじゃぞ」

「いいんですか? 迷惑してません?」

「ミーシャは孫みたいなもんじゃからな。アッシュと変わらぬのじゃ」

庇護養親と庇護養子は見做し親子という事なので、家族会議には参加できる権利があるとのこと。よほどの理由がなければ氏族会議には参加できないけどね。

「また何かトンデモ案件を発案したかのう? それとも何か や(・) ら(・) か(・) し(・) た(・) のかのう?」

「いえ、今日はパイク=ラックさんのお話を聞きに来たのと、それに関係して見せたいものがあって…」

「言葉を選ばなくてもよいのじゃが…。儂も若い頃は散々 や(・) ら(・) か(・) し(・) た(・) もんじゃよ」

「パイク=ラックさんが!?」

「まぁ、古来より “ ドワーフは決まって何か や(・) ら(・) か(・) す(・) もの ” と言われるものじゃがの」

まさかの種族特性なのかよ。

「周囲を見渡してみるのじゃ。ミーシャが関わったドワーフは皆どこかしら や(・) ら(・) か(・) し(・) て(・) はおらぬかのう?」

「確かに言われてみれば……」

人類みな兄弟ならぬ、ドワーフみな や(・) ら(・) か(・) し(・) かよ。発明発見・創意工夫には や(・) ら(・) か(・) し(・) が付き物って事ですか?

「今日はなんじゃね?」

「パイク=ラックさんは【 樹精(ドライアド) 】の加護持ちだそうですけど、それについて聞きたくて来ました」

「ほうほう」

「その加護って生まれつき保有していた加護ですか? それとも何らかの理由のもとに取得した加護ですか?」

「儂が若い頃にじゃな、加護を授けてくれた【 樹精(ドライアド) 】との出会いが有ったのじゃよ」

「どんな出会いですか?」

「儂は今でこそ木工と籠細工を生業としておるのじゃが、それこそ若い頃に植物学を学んでいた話をしたことがあったじゃろ?」

「はい。あの『僻地の集落(仮)』でチラッと聞きました」

「儂の氏族はそもそもが木工を得意とする氏族なのじゃが、その頃の儂は籠細工にも興味を持ってしまっていてのう、山に籠細工に使う蔓を探しに出ておったのじゃ。木工はじゃな、材を規格通りに切って整えてやれば設計図通りに組み上げることが出来るものじゃろう? あの頃の儂は少し粋がっていたと言うか調子に乗っていたと言うか、まぁ自信過剰だったわけじゃな。若気の至りじゃな」

パイク=ラックさんがポツリポツリと過去の話を語り始める。

「それでじゃ、蔓は山から取ったままで規格なぞに縛られておらず、設計図を意識することなく思うままに形を作ることの出来る籠細工に魅力を感じてしまってのう、心奪われてしまったのじゃよ」

「分かります」

「まぁ、木工に関してはそのまま修行を積めば問題なく師範を名乗れる腕前には成れると思ってしまってのう……、そこから暫く籠細工に没頭したのじゃ」

「ご家族からは何も言われなかったんですか?」

「木工はそれなりに修めておったし、やりたい事を試しながら遠回りしてみるのも本業の木工を極める為には必要じゃろうと許してくれたのじゃ。それで様々な蔓を試したくて山に分け入っておったのじゃ。アケビ蔓、山ブドウ蔓、 藤蔓(グリッシー) 、 葛蔓(ツヅラー) …。蔓だけでなく樹皮も剥いで編んでおったものじゃよ」

「研究を始めたわけですね」

「そうじゃな。誰かに師事するわけでもなかったのじゃ。若気の至りじゃよ。そして様々な素材を試してた時に【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓と出会ったのじゃ」

「パイク=ラックさんが得意とされている素材ですよね」

「普通に籠を編むだけでなく【 魔多々媚(マタタビ) 】を使えば猫の人にとって人気商品が作れると思ってのう。それこそ付加価値が付けられると思ったのじゃ。それからは毎日のように山に【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓を探しに入ったものじゃ」

今のパイク=ラックさんからは想像できないアグレッシブさなんだけど。いや、今でも結構好奇心の塊なところはあるか。

「その時にじゃな、一本の樹に【 魔多々媚(マタタビ) 】が絡みついておったのじゃよ。その時の儂は大層興奮していてじゃな、植生の事など考えずに【 魔多々媚(マタタビ) 】を刈り始めたのじゃ。今思うとあの時は何かに取り憑かれていたのかもしれぬのう…」

「パイク=ラックさんが植生の後先を考えずに刈りまくったんですか?」

「不思議なことじゃがそうじゃった。普段の儂なら【 魔多々媚(マタタビ) 】を刈り尽くそうじゃなどとは思わんのじゃが、あの時は特別じゃった。そして妙な勢いのまま【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓を収穫し終わろうとしていた時にじゃ、謎の女性に声を掛けられたのじゃよ。それが【 樹精(ドライアド) 】じゃった。【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓が 母体樹(ぼたいじゅ) に絡み付いて雁字搦めになっておったのじゃ」

「つまり、パイク=ラックさんが【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓を 母体樹(ぼたいじゅ) から刈り取りまくったのって、結果的に 母体樹(ぼたいじゅ) を助けた事に繋がった…と」

「じゃな。【 樹精(ドライアド) 】に大層感謝されてのう、その時に加護持ちになったのじゃよ」

「そんな過去があったんですね。加護を得たことで何か変わりましたか?」

「木を斬って細断し木材を組む事が生業の木工師はじゃな、ある意味【 樹精(ドライアド) 】に恨まれこそすれ感謝はされないものなんじゃがのう、加護のお陰か技術が上がったのじゃよ。籠細工の腕もメキメキ上達したのじゃ。そして【 魔多々媚(マタタビ) 】蔓の籠細工が猫の人の目に留まり、名誉猫獣人になったことぐらいかのう……。そしてミーシャに出逢えたのう。この歳で総魔力量が増えたことも驚きじゃし……」

「ボクにですか?」

「あの関所の集落はのう、近くに質の良い【 魔多々媚(マタタビ) 】が生えておるのじゃよ。あの集落にこんな棺桶に片脚を入れた様なジジイが赴任していた理由はじゃな、【 魔多々媚(マタタビ) 】の蔓欲しさで立候補してしまったからじゃよ」

まさかの欲望の赴くままに僻地単身赴任の立候補かよ。でも気持ちは分かる。そこに俺が現れて……散々エールを冷やした挙げ句、総魔力量が増えた…と。それって加護が関係あるか?