作品タイトル不明
第320話
白いタコさんウィンナー。これは一体何なのか…???
マック=アーサーさんが拾い上げたそれを皆で眺める。かっ、鑑定だ!! こういう時にサッと使わないでどうする。
(簡易)
【 母体樹(ぼたいじゅ) の気持ち】: 母体樹(ぼたいじゅ) からのプレゼント
うん、『対物簡易鑑定』がポンコツ表示なのは知ってた。ホッコリし過ぎだろ。これで喜んでいた時代もありました…。
(鑑定)
【 母体樹(ぼたいじゅ) の気持ち】: 母体樹(ぼたいじゅ) が『 木々奇鱗(きぎきりん) 』治療のお礼に渡してくれたプレゼント。季節外れに咲かせた 母体樹(ぼたいじゅ) の花。
これ、花なんだ…。
「これ、【プルモニア】の花?」
「【プルモニア】だね。俺の鑑定にはそう出てる」
「エルフ語だと【 瘤林檎(ジャクアポロ) 】です。古代エルフ語での呼び名は不明です」
「この 母体樹(ぼたいじゅ) は【プルモニア】だったのか」
ザワザワ ザワザワ 母体樹(ぼたいじゅ) の枝が揺れる。どうやら正解だった模様。そして『 脈(みゃく) 見役(みやく) 』のメンバーの鑑定は俺より上位の様なので、俺の知る鑑定結果を誤魔化す必要もなさそうだ。
「ボクはこれが 母体樹(ぼたいじゅ) の花なのは分かったんですけど、ボクの鑑定ではそこまででした」
「鑑定は色々だからね。ミーシャ=ニイトラックバーグはまた若いんだから、色々使って鍛えていけばいいと思うよ」
「 母体樹(ぼたいじゅ) の花なのが分かっただけでも凄いよね。グレードの低い鑑定だとこれが花だって出ないから」
「そうなんですね」
「色々と体験してね、どこまで伝えるかを覚えていかないと…なんだよね。万人に同じ表示が出ないのが鑑定の特性で、それがまた使いにくさなんだけど」
「ほら、世の中には伝えたほうがいい事実と、伝えないほうがいい事実とが存在するから…」
「そうですね。難しいと思います」
何処にでも顔を出してくる鑑定度合いの公開問題。内容見える俺スゲー!で済むんなら簡単なんだけどねぇ…鑑定結果の小出しというか何処まで出すかの探り合いってポーカーなんかを連想させるな。
「それはそうと、その 母体樹(ぼたいじゅ) が渡してくれた【プルモニア】の花だけど、ミーシャ=ニイトラックバーグが持っていればいいと思うよ」
「 母体樹(ぼたいじゅ) のお礼の気持ちだからミーシャ=ニイトラックバーグが持ってるのが一番だよ」
「【プルモニア】って事は【 水母(プルモ) 】と関係があるんですか?」
「花の形と実の形が【 水母(プルモ) 】に似てるからその名が付いてるよ」
「実の中から小さい子供の【 水母(プルモ) 】が出て来るのも似てるよね」
「 母体樹(ぼたいじゅ) さん、ボクが受け取っていいの?」
{ ――よき。 感謝する―― }
受け取った白いタコさんウィンナーは、花だとは聞いていたし鑑定結果にもそう出ていたけど触れた感じは花らしくなかった。少し弾力があってひんやりとした物体だ。そう、当に冷蔵庫から出してきたてのタコさんウィンナーって感じなのだ。しかも白い。俺の中では前世の記憶のせいでタコさんウィンナーと言えば赤が定番なんだけどなぁ…。
「これ、お花なんですよね。せっかく頂いたけど枯れちゃいません? 保存方法とかって知ってますか?」
「ゴメン、知らない」
「そのまのま姿で保存するんなら、魔導ガラスを使った標本がなかった?」
「あ、あの植物見本の!!」
{ ――腐らぬ。 好きにせよ―― }
流石は【 樹精(ドライアド) 】を宿す 母体樹(ぼたいじゅ) 、ポツリポツリと念話を挟んでくる。
「ありがとうございます。無理しないでくださいね。【木々 奇鱗(きぎきりん) 】が治ったばかりですし、無理をされては体力を消耗してしまいますので」
ザワザワ ザワザワ
キュウキュウ
ザワザワ
ムキュウ
いつの間にかアンディーが 母体樹(ぼたいじゅ) に登っていた。カーバンクルとは言えフリーダム過ぎるぞ。 母体樹(ぼたいじゅ) 的には許してくれているのだろうか? 一本と一匹の間でザワザワ、キュウキュウと会話している様にも見えるし。
(「ますたー ぷるもにあ ありがとう いってる」)
(「そうなんだね。アンディー、教えてくれてありがとう」)
(「こかこっこに よろしく いってる」)
(「コカコッコにもお礼を伝えないとね」)
(「ますたー えだ くれるって」)
(「枝?」)
アンディーが念話でそう伝えてくれる。
{ ――我が分体 そなたらに託そう―― }
「【プルモニア】の 母体樹(ぼたいじゅ) よ、その意図は?」
{ ――なに気紛れよ 樹精(ドライアド) の依り場を一つ二つ増やしたくもある―― }
「そういう事なら受け取って植えたらいいんじゃない?」
「それこそミーシャ=ニイトラックバーグの家の庭とかに」
「ボク、学生寮暮らしなので…」
「残念。それなら今は鉢植えにしておいて、将来家を買った時に庭に植えればいいじゃない」
「前向きに検討します」
一つ二つとか言ってたくせに、渡してきたのは枝五本。一本は俺が受け取った。残りは『 脈(みゃく) 見役(みやく) 』が責任持って植えてくれるとのこと。龍脈から外れたところに挿し木するんだって。
「【 樹精(ドライアド) 】の宿る 母体樹(ぼたいじゅ) を植え替えたり挿し木や接ぎ木をする時は龍脈外しをしなきゃいけないよ」
「 母体樹(ぼたいじゅ) と龍脈が喧嘩するんですか?」
「 母体樹(ぼたいじゅ) は時に水脈を引き寄せるんだ。それが原因で龍脈が不機嫌になるのさ」
「古くから都市がある場所の地下なら龍脈は外れてるからね。庭に植えても問題ないよ。鍛冶師が炉を設ける時の方が気を付けないといけないかな」
「地中には龍脈に繋がる細かい気脈が走っています。その事を知らずに上に炉や竃を作ったら龍脈を逆撫ですることに繋がります」
検脈師の話から仮定すると龍脈は地下水の事ではなさそうだ。だとしたら活断層説が濃厚なのかな?
そうだ、確かパイク=ラックさんは【 樹精(ドライアド) 】の加護持ちだったハズ。後で話を聞いてみよう。この【プルモニア】の 母体樹(ぼたいじゅ) の話もしておかないといけない気がする。