作品タイトル不明
第306話
「依頼されているトマホークは最低でも二本だ。 カーバンクル石(カーバンクライト) を二つに切るか、そのまま磨いて一つにだけ着けるか…」
「ボク、石を切った事はないですよ」
「その古代エルフに承諾を取らずに勝手に細工していいのかよ?」
「大丈夫だろう。むしろ喜びそうだ」
「そうなのか?」
「オロール先生なら多分、面白がって喜びますよ」
ムキュウ
「折角アンディーちゃんが出してくれた石を切ろうとしてだ、そこで失敗したくねぇんだよなぁ…」
キュウ
アンディーがそれを渡してとばかりに手を伸ばしてくる。
キュウキュウ キュウキュウ
「ん!? アンディーちゃんが切ってくれるのか?」
キュウッ!!
「アンディー、渡せばいいの?」
(「ますたー 石われば いいの? あたち わるの」)
「どうやらアンディーは石を渡して欲しいみたいですね」
アンディーに カーバンクル石(カーバンクライト) ・三号を手渡した。アンディーは石を受け取ると口に含んで歯でカリカリ音をさせながら噛んでみたり……していたが、そのうちゴクンと飲み込んでしまった。
「のっ、飲んだな」
キュ〜ン
アンディーは自分の石を飲み込んだ後、俺の背中に張り付いたまま手で頭を掻いたり太長い尻尾を毛繕いしたりしていた。そのうち俺の手の方に移動してくると右手に頭を擦り付け始めた。
(「ますたー あたち 石あげるの」)
アンディーの額から俺の手の中にポロポロと小振りな石が二つ落ちてくる。
「凄い、アンディーが石を二つに分けてくれた。凄いやアンディー」
キュッキュッ
「凄いカーバンクルだな。石を割るとか聞いたことがないぞ」
「ミーシャ共々、規格外というか何というか。冗談でも言ってみるもんだな」
ムキュウ ムキュウ ぐぅぅ〜〜
「アンディー、いまのお腹の音だよね? 頑張ってくれたからお腹すいちゃった?」
(「ますたー あたち ごはん ほちい」)
「【食用マンドラゴラ】でいいかな? 今、出すからね」
キュウ〜ン
キュウキュウ
(「おかわり ほちい」)
「えっ、足りないの? チシャレッタがいい? 【 玉菜(キャベツ) 】がいい?」
前世のリーフレタスこと【葉チシャレッタ】、サニーレタスこと【房チシャレッタ】、ロメインレタスこと【羽チシャレッタ】を買ってきてある。でも、レタスはペットの餌用としては栄養価が低いとか前世で聞いた記憶がある。やはりここはキャベツも与えよう。
手提げ袋からレタスを出して渡してやるととモグモグと食べ始めた。キャベツも出して外側の葉を一枚剥がして渡してやるとモグモグと食べ始める。ちゃんと芯まで食べてくれるんだ。俺は野菜の芯は苦手ですがね。
「けっ、結構食うんだな」
「そうですね」
「ミーシャ、マジックバッグを買っておいたほうがいいんじゃねぇのか? 餌の野菜を詰め込んでおいたほうがいいと思うぜ」
「そう思いました」
「それより、その二つに割られた カーバンクル石(カーバンクライト) なんだが、二つ割りではなく、形の整った結晶が二つある様に見えないか?」
「言われてみれば。アンディー、もしかしてただ切っただけでなく、ちゃんと結晶化してくれたの」
キュッキュッ
(「ますたー あたち がんばったの」)
「やっぱり頑張ってくれたんだ。それはお腹空いちゃうよ。いっぱい食べて」
ムキュウ
(「ありがとう。でも無理しないでいいからね」)
(「ますたー やさちい」)
アンディーの能力は凄いけど、頼りすぎると消耗させそうだから基本は封印かな。それなら小さい石を生み出してもらう方がいい気がする。まぁ無理に石を出させたらそれは我儘なヒト族達と変わらないので俺としては強請らないつもりだけど。
(「アンディー、もう無理しちゃダメだよ。ボクはずっとアンディーと一緒にいたいんだからね」)
(「あたち ますたーと いっしょ」)
「ミーシャ、 カーバンクル石(カーバンクライト) 研磨もいいけど、トマホークの柄の方はどうだ?」
「バタバタ続きでまだ練習できてません」
「まぁ慌てても仕方ないからな。オロール女史が戻ってくるまでに練習しておけばいい。俺も特殊な石の組み込み方は学ばないといけないし」
「そうだミーシャ、俺から石を渡してだ、ミーシャの暇な時でいいから磨くなんて仕事は頼めるか?」
「内容にもよりますが」
「あー、ほら、前に【愛の囁き】の “ 終わりかけ ” の持ち込みがあっただろ? あれを何個か頼みてぇんだわ」
「それなら難しくないからいいですけど、納期っていつですか?」
「出来れば今月早目で。例のバニーのカチューシャのイベントに合わせて売りたいんだよ」
「あれ用ですか。確かに売れますよね」
「カーン=エーツが上手いこと大手に売り込んだらしくてな」
「沢山は無理ですけど、二〜三個なら。形に拘りとかあります?」
「任せる。ついでに【 星留(ホシル) 】も一つくらい…な」
「それは冒険者用です?」
「いや、恋の亡霊を祓う…ってネタ商品だな」
「よく考えるものだな」
「いや、【 星留(ホシル) 】は本職がダンジョンに持っていったら使えるからな。ネタ商品でも無駄にはなんねぇ」
「ボク、それも磨きたいです」
「じゃあ…【愛の囁き】は三つ、【 星留(ホシル) 】は百合を一つ渡す」
「百合ですか!?」
「百合の【 星留(ホシル) 】は鎮魂の効果だ。死者がアンデッド化しない様に捧げたり、アンデッドの潜む部屋の扉に下げて一時的に外に出てこれない様にしたり、そうやって使う。確か、産まれてこれなかった子供の供養に使ったりもするハズだ」
「わかりました。工賃は?」
「一つ銀貨三枚で。仕上がり次第で色を付ける。百合は普通に磨いたら発動は一回だろう。二回発動しても問題ないから好きに磨いてみてくれ。流石に三回目は発動しないだろうけどな」
「つまり、ボクに三回目を目指せと?」
「いらねぇ、いらねぇ」
予想外に研磨用の石が増えました。その後はアンディーのトイレと赤スライムを買いに行き、ついでに八百屋で追加の野菜と果物を購入。マジックバッグは明日にでも商業ギルドに相談かな? パイク=ラックさんの所に行って 巣箱(ケージ) を受け取った。銀貨五枚。多分、破格の安さだと思う。
「そのカーバンクルじゃと揺り椅子が好みだと思うんじゃがのぅ…。頼んでくれたら何時でも作るのじゃ」
「その時はお願いします。あ、職校の学生寮にも 巣箱(ケージ) を置きたいのでもう一つ製作を依頼します」
さて、学園の学生寮に戻ろうか。