作品タイトル不明
第296話
ダークエルフは闇墜ち種族でも褐色の肌をしたエルフでもない。鬼族と呼ばれる種族と混血したハイブリッドエルフを総称してそう呼んでいる。それ以外の混血エルフはハーフエルフと呼ばれる。エルフは血統的に強い種族なので混血してもエルフの特徴が色濃く出るのだと言う。そうかエルフは優性遺伝なのか。この世界で優性遺伝という知識があるのか不明だけどね。
代表的な鬼族には『 酒羅(シュラ) 』、『 癒鬼(ヒールオーガ) 』『 魔打鬼(マタギ) 』、『 羅雪(ラセツ) 』、『 南無破幻(ナムハゲン) 』等がいる。『 酒羅(シュラ) 』は南方の酒好きで好戦的な鬼族。『 癒鬼(ヒールオーガ) 』は 神樹桃(ネクタルピーチ) の守護者。北方に居る鬼で『 魔打鬼(マタギ) 』は魔族を狩る鬼。『 羅雪(ラセツ) 』は雪鬼で雪女。『 南無破幻(ナムハゲン) 』は粛清鬼、神様に代わってワルイコをオシオキしてくれる。博打に溺れたり酒を飲み過ぎた家人もオシオキされるらしい。家に居着いてしまった『 南無破幻(ナムハゲン) 』にお帰り願うにはお酒を沢山提供する事だという。詰まる所、結局は酒好きじゃないか。
ナックヤーマン=キーン=ニックさんは南方の鬼、『 酒羅(シュラ) 』の血を引いているのだという。確か『 酒羅(シュラ) 』って鬼はバトルジャンキーじゃなかったっけ?
「ナックヤーマン=キーン=ニックさんの得意技にはどういった物がありますか? 近接攻撃で俺達ドワーフに参考になるものがあれば教えて下さい」
「そうだね……これくらいの距離で説明しようか。危険だから君は動かないでね」
ナックヤーマン=キーン=ニックさんが質問した生徒の前に一メートルくらい離れて立つ。
「じゃあ、いくよ。 パワーー!!!!」
ナックヤーマン=キーン=ニックさんが叫びながら右手てグーパンチで踏み込んでくる。生徒の顔の十センチメートルほど手前で指をVサインにして停止する。まさかの目潰し攻撃だ!! 勿論、本気の戦闘ではないのでそこまでの試技だ。
「ひぃ……」
「ゴメン、怖がらせちゃったか。対人戦闘だったらこれが効果的だと思うよ。素人がグーパンチで殴りかかるとね、間合いを見切れる者だったらギリギリ当たらない位置に下がって躱すんだよね。お前の攻撃は見切ってるぞ、って意味で。でもね、その位置で指を伸ばすと攻撃が当たっちゃうんだ。倒せなくても敵は怯む。その隙に逃げればいいんじゃない? それに目玉は筋肉と違って鍛えられないし…」
「はわわ……は…い。あっ、 ありが…とうございましゅ」
「根性があるなら 抉(・) る(・) とかね…、指先に爪が出し入れ出来る 猫爪(キャットクロウ) ナイフでも着けるとか、伸ばした自前の爪に薬品を塗っておくとか、指先から弱い雷魔法を放つとか…ね。まぁやれる事は色々あるかな」
白い歯を見せながら爽やかな笑顔でそう説明してくれる。その内容はちっとも爽やかじゃないんですけど…。
「たっ、薪、薪!!」
さっきの今のせいで皆がナックヤーマン=キーン=ニックさんから距離を取る。オロール先生が帰ってきたら目潰し攻撃がエルフ共通の認識なのかどうか聞いてみよう。
「待たせたな」
「すみません、スペース開けてください」
馬車で現れたパーティーが『 旋斧鬼(せんぷうき) 』で、担架を担いで現れたのが『 鉱坑(こうこう) 息子』? あ、担架に横たわっている 人(ドワーフ) には『負傷者役』って名札が付けらている。つまりこれも訓練って事だな。
「では職校の生徒にそちら側の設定を教えて貰えないだろうか?」
「『 脈(みゃく) 見役(みやく) 』は地脈の調査中という設定です」
「『地底 娘(こ) 』は【 運魔(ウマ) 】二頭を連れて隣町まで積荷の輸送任務という設定です」
「『 旋斧鬼(せんぷうき) 』は馬車で討伐任務の途中で野営地に来たという設定だ」
「『 鉱坑(こうこう) 息子』は採掘作業中にメンバーが負傷。作業を中断し最寄りの町に負傷メンバーを搬送中という設定です」
うん、如何にもありそうな設定だ。
という訳で、それぞれのパーティーが距離を取って野営準備を始める。テントを張ったり簡易竃を作ったり。炭焼き窯のある作業場には簡単なトイレは有るのでトイレの準備は不要なのだと。これが本当に何もない場所で一晩過ごすのであればスライム甕を使ったり簡易トイレを作ったりが必要になる。四パーティー共ちゃんとスライムを入れた専用甕は持ってきていた。簡易トイレを設置するのは『 旋斧鬼(せんぷうき) 』と『 鉱坑(こうこう) 息子』。この場所にいる人数が多いからという理由もあるけど、『 旋斧鬼(せんぷうき) 』は本番であっても訓練であっても常に万全の準備を整える方針で、『 鉱坑(こうこう) 息子』は設定上怪我人が居るのでテント近くにトイレを置きたいと言う理由だった。
『地底 娘(こ) 』の場合は少し特殊というか性別的な問題で野営地にトイレが設置されている場合はそこを使うという条件が発生する。一応、襲われないためにという女性冒険者特有の理由だ。魔獣やゴブリンに襲撃されるのは男女関係ないけど、 “ 飢えたケダモノ ” 対策はまた別だからね。当たり前だけど冒険者なら誰であれ一人で野外での用足しには行かないものだ。
という事で、クララさんが「スライムちゃん、ゴハンやで〜」と言いながらスライムに乾燥牛糞と水をを与えている。あれも何度か見たけどその度にペットでスライムを飼いたくなるんだよなぁ。まぁ赤スライムでなければ餌は残飯とか用意してあげられるけどね。『動物王国』補正で赤スライム飼育が簡単になるとかないかな?
「そうそう、今回我々は巷で話題の魔獣を狩ってきた」
そう言いながら『 旋斧鬼(せんぷうき) 』のリーダー、メルート=ダーンさんが地面に拭き草の葉を敷くと獲物を取り出して並べ始める。そう、
リーチフロッグ
ヒル
深山(ミヤマ) マンバ
それってウケ狙いなんでしょ? 食材と言うよりネタ枠なんだよね?