作品タイトル不明
第297話
ワギュとラリーにタワシでササッとブラッシング。俺は帰り支度を始めています。
「解体ショー、始めるぞー」
『 旋斧鬼(せんぷうき) 』がリーチフロッグと 深山(ミヤマ) マンバの解体実演をするという。
「先ずはヒルだ。ヒルはヒル瓶に入れてしっかり蓋をしておくこと。生きたヒルは取引価格が高い。生きているヒルはマジックバッグや次元収納、『キーボックス』に入れてはいけないぞ。入れたら死ぬ」
生徒は皆、怖いもの見たさでヒル瓶に近付く。これ……が異世界のヒル!? 間延びしたラッキョウというか、痩せたタマネギというか、芽が伸びたニンニクというか…ヒルだと知らなかったら気付かない。尻尾?側が細い方。ニンニクの芽が伸びたような尻尾をヒラヒラゆらゆらと揺らしている。不気味可愛い…のか? コレ。
「これはテイム済みの【 鏑矢(かぶらや) 山魔(ヤマ) ビル】だ。頭部の形が 鏑矢(かぶらや) に似ている【 山魔(ヤマ) ビル】なのでそう呼ばれている」
「テイムの理由は何ですか?」
「魔力過多症や魔力暴走の治療用だ。この【 鏑矢(かぶらや) 山魔(ヤマ) ビル】は魔力を好んで吸う。テイムしてあれば戦闘中に敵の魔力を吸い取らせる事も可能だ」
「餌は何ですか?」
「月に一度、極小の魔石を一粒与えればいい。他の危険なヒル類も含めて資料は冒険者ギルドにあるので時間が有ったら閲覧してくれ」
まさかのテイム済み。これは飼いたくないかな……。ヒルだと思わなければいいんだろうけどチョット無理かも。
「次はリーチフロッグの処理だ。これは簡単だな。腹を割いて内臓を処理したら内腿の付け根、人体で言う鼠径部から肉と皮の間に指を入れて皮を剥く。茹でて骨を外しても良し、丸焼きにして骨を外しながら食べるも良しだ。まぁ、こんな荒業も有るぞ……『脱骨』!!」
謎のスキル『脱骨』によって骨が身から抜け出た!! 何このスキル???
「骨が!!」
「これ魔法なの!?」
「いいな、それ」
シャチホコで有名な都市の手羽先で有名なお店もビックリな肉から骨を外す技だ。荒業って事は複合魔法か複合スキルっぽい。
「俺の場合は、空間魔法と探知スキルと『汎用魔法』の『除去』系の複合技だな。他にも発動条件の組み合わせがあるから試してみたい奴は頑張れよ」
『除去』系!! これは覚えたら手羽先が美味しく食べられそう。それより鱧の骨切りが不要にならないか? 『除去』ってもしかしたら派生させまくったら独立した『除去魔法』に進化しそうな気がするんだけど。ちょっとだけ研究してみようかな…。
「そして最後は 深山(ミヤマ) マンバだ。これは最初に毒を採取する。頭を掴んで上顎から生えている牙を採毒瓶に入れてやり、牙を軽く瓶の内側に押し付ける様にすると毒腺から牙を通って毒が出て来る。三回くらい押し当ててやると採り終わる。生かしておきたい場合は専用の木箱に詰めておく。食用に締める場合は先ず頭を落とす訳だが、全部切り落とさずに皮一枚残して皮を剥いてしまうと楽だな。皮を剥いだら内臓を除去する。頭部と皮は売れるから保存しておく。骨を外したかったら背中側から背骨に沿って切れ目を入れる。肋骨に沿ってナイフを動かしたらそれなりに肉は削ぎ落とせるが、蛇は細長いし肋骨は細い。なので…」
「『脱骨』ですか?」
「まぁ、『脱骨』してもいいけど、肋骨ごと叩いてミンチにするか、クルラホーンを頼る」
「クルラホーン?」
「クルラホーンは酒飲み妖精だ。ほらレプラコーンっているだろう? 偶に気まぐれで作業を手伝ってくれる妖精。あれの酒墜ち版だ。手伝い賃で酒を渡してやればいい仕事をしてくれる」
「クルラホーン以外の妖精には頼んだら駄目なんですか?」
「手が汚れるから嫌だって拒絶されるな」
意外なクルラホーン利用法だった。確かに器用そうだし。
「で、この鱗がキラキラした蛇が 松見(マツケン) マンバだ」
「 松見(マツケン) マンバの特徴を教えて下さい」
「名前の通りで 松(・) の 見(・) られる場所で良く見られるマンバ蛇だ。こいつの毒は神経毒だ。毒自体は弱いんだが、こいつに咬まれると神経がやられて手足がチグハグに動き出す。身体が動いたかと思えば急に硬直して止まる。踊っているように見えるから別名『 踊り毒蛇(タランテラ・ヴァイパー) 』とも呼ばれている。同様の毒を持つ生物には『 踊り(タランテラ・) 毒土蜘蛛(タランチュラ) 』がいる」
前世のキラキラ衣装を着たあの芸能人のサンバを思い出すのは俺だけです。マンバ、ビバ、マンバ……。
「踊りだすだけなら平気じゃね?」
「解毒すれば死なないんでしょ?」
「おいおい甘い甘い。戦闘中に咬まれて踊りだすと敵のヘイトを集めるんだ。しかも毒の効果でどう動くかのかは仲間には予想不能だ。毒で死ななくとも敵の攻撃の集中砲火で死ぬ。それだけじゃない。こいつのヘイトを集める効果は俺達にも向くんだ。つまり、 松見(マツケン) マンバが敵側の魔獣を咬んで、咬まれた魔獣が踊り出すと俺等がその魔獣だけをタゲってしまう」
「あ、デコイ作戦が敵に仕掛けられちゃうのか」
「そうそう。危険だから箱に仕舞うぞ」
まさか咬まれてしまうと敵も味方も皆、踊り明かしてしまう事態が発生!?
「そして、リーチフロッグ、ヒル、 深山(ミヤマ) マンバ、これが揃うと【飲み拳】だ。今、流行りのバトルシステムだ。知ってる奴?」
「はーい」
…って、パート君が挙手してるし。俺もコッソリ低めの挙手をしておこう。
「あれ、皆知らなかったか?」
「知ってる知ってる。冒険者組は皆知ってるから」
「暇潰し中に権利の押し付けあいをするとかな、単純に勝ち負けを争うとか、単純だけにアツくなる。カードも使わないから気楽に勝負できるからな。これを考えた奴は中々だと思うぜ。魔法カードバトルよりも遥かに単純なのがいい。まぁ飲みの賭けに使うのは程々に…だがな。アツくなり過ぎると身を持ち崩すぞ」
「じゃあ皆でやってみよう。これがリーチフロッグ、手を開く。これがヒル、握り拳で親指だけを立てる。最後にマンバは指でVの字を作る。リーチフロッグはヒルに勝って、ヒルはマンバに勝つ。マンバはリーチフロッグに勝つ。以上!! 簡単だよ」
アリサお姉ちゃんが【飲み拳】バトルの音頭を取り始めてしまった……。