軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第289話

明けて十一の月・一週目・一の日。登校は職校へ。調理の授業でパン作りの実習に参加している。なので朝イチの授業でパン生地を捏ねた。別に野菜刻みを続けても構わないそうだけど、広く浅く学びたいのでパン作りの初歩の初歩を学ぶ事にしたよ。パン用の酵母の作り方も習えるぞ。食材は普通に市場から仕入れているけど、授業の一環で粉挽き、バター作り、搾油なんかも学べる。どちらかといえば農業系の実習になるんだけど、作った素材が調理に適しているかを知るために連携して学習することになっている。来年からはデンプン作りもカリキュラムに追加されると連絡ボードに貼り出されていた。

パン生地を捏ねに陶芸を専攻している生徒が参加している事実。普段から粘土を捏ねているからパン生地やパスタ生地を捏ねるのも上手なんだとか。変わりパンというか、パン生地を細長く伸ばしてバスケットの形状に組み上げて焼いてみたり、人形の形にして焼いてみたりすることもあるそうな。パンで作ったバスケットに棒プレッツェルというかグリッシーニというか酒のツマミになるスティック状の堅焼きパンを刺して酒場に持ち込んだらウケたって話を聞いたよ。

それを聞いたら前世で千切りにしたジャガイモを揚げてカゴと言うか半球の食べられる容器にして、そこに炒め物とかを盛り付けた料理を思い出した。あれは横浜の中華街で食べたんだったか…。

「コレね、千切りジャガイモを揚げて、それを引き揚げたらザルで形つけるヨ。冷えて形になったら二度揚げするね。お客さんみんな喜んでかじってるけど、ワタシタチあまり食べないヨ」

って言ってたけど。ドワーフだったら酒のツマミに丁度良さそう。芋もいいけどパスタなんかを使って揚げてもいいんじゃない? ガルシア籠で騒がれる予感がするのは何故だ。

「今日はドーナツの日だよ」

厨房のおばちゃん達がそう教えてくれた。初めてパン生地を捏ねた学生がいた場合、焼いて失敗しない様にドーナツに回すのだとか。それって優しさなのか、お前の捏ねたパン生地は焼けねぇ! なのか分からない。熟練の職人が見たらちゃんとパンに焼き上がるかは分かるそうだけど。

「今月からドーナツには微粉になるまで砕いた飴を砂糖代わりに振りかける事になったよ。チョッピリ甘い美味しいドーナツになって嬉しいね」

「そうなんですか?」

「 黄金虫(スカラベ) さんに感謝しなきゃいけないね。水飴も作ってくれたって言うじゃないか」

「そうですね。展示されてましたもんね」

それ、俺です……。とは言えないんだけどね。

告知ボードによると明日は炭焼き窯に木を詰めて火入れの準備をするんだって。トラブルなく進行したらそのまま点火するので炭焼きを専攻する生徒は交代で見張り番だ。俺は体験というか段取りを学ぶだけなので授業時間外の見張りには参加しない。二回目の炭焼きは生徒だけで製材、窯詰め、火入れをする。十中八九良い炭は出来ないので三回目から丁寧に教えてもらえるんだって。その窯に火の入っている数日間は良いチャンスとばかりに冒険者が野営の練習に来るのだとか。山火事にならない様、防火対策となんちゃって軍事訓練。この国は今現在は平和そのものなので異種族間で戦争なんて起きないんだけど、それでも有事を想定する事は大事なんだと思うよ。海を越えた遠くの大陸には別の国家が存在するのだろうし…。

明日から学園の学生寮から職校の授業に参加する変則登校が始まりますよ。別に職校の学生寮から追い出される訳ではないので借りてる部屋に 木賊(とくさ) 管理でちょいちょい行くけど。いい感じに育ってきている。株分け前にパイク=ラックさんにやり方を教わらないとな。オロール先生の部屋は鍵が空いていた。荷物が置いてあるとか無いとかの理由ではなく、単にヤニ臭いから消臭目的らしい。これは『汎用魔法』の『消臭』を取得するチャンスかもしれない。もしかしたら『ヤニ除去』もしくは『タール除去』なんて魔法も有るかもしれないな。うーん、俺って除去魔法王になろうとしてるのか?

それより、午後から学園で薬草学の授業があるのですよ。最初から聞いてないから多分チンプンカンプンなんだろうけど、薬草実験(と書いてカレー実験と読む)をする為の権利を獲得する為には受講が必要なのだ。

お昼ご飯に揚げドーナツとサラダを食べ、 乳清(ホエー) を飲んだら学園への移動途中で商業ギルドに顔出しをする。ガルフ=トングさんが自宅の有る『スリーストライプ』に帰るので別れの挨拶をするのだ。結局、ガルフ=トングさんは【蛇魚類裂き包丁】を夫婦包丁というか、大中小の親子包丁として提出させられていた。【バーサーカッター】に【シュパー】、【 剃髭(ていし) カミソリ】、【トングース】、タワシの件も有るのでランクアップの審査にかけられる模様。「俺は発案品を試作しただけだから…」と恐縮していたけど、俺の拙い説明を形にできるんだから凄い職人さんだと思う。

「ガルフ=トングさん、お世話になりました」

「いや、俺の方こそ振り回されて面白かったよ」

「また遊びに来てください」

「またミーシャが変なアイディアを浮かべたら、の間違いだろう?」

「そうかもしれません」

「ちょくちょくエールのお賽銭を払いに来るよ」

「待ってます」

「それでは儂が馬車組合に付いて行くのじゃよ。ミーシャの献上品も【黒猫印の配送便】のスタッフさんに預けておくからのぅ」

「パイク=ラックさん、お願いします」

「ミーシャ、月が変わったら【スキルオーブ】だぞ」

「忘れてました!!」

あ…、職校の月イチの無料【スキルオーブ】サービスが有るのを忘れてましたよ。