作品タイトル不明
第187話
「ではジョーブ=ヤークから発表してくれ。『 黒板(ボード) 』は追加しておいたから要点を板書してくれてもいいぞ」
「僕は最初、ポケットの奥にオマケの空間が繋がっていると想定し、その空間を探そうとして何度か僕なりの『キーボックス』を試していました。そうしたら人差し指が穴に入って、それが『エアポケット』でした。次に、穴を探るのではなくポケットを拡げる感じでイメージしながら『キーボックス』を試してみたら今度は成功していました」
へー、 他人(ひと) の発想を聞くのって始めてだけど、考察は面白いな。メモを取りたいけど筆記用具が無い!!
「ピエール先生、余分な紙とペンって貸してもらえますか?」
「ミーシャ=ニイトラックバーグ、どうした?」
「ボク、今、筆記用具が手元にないんです」
「あ、今日は仕方ないな。明日から筆記用具は必帯だぞ」
ピエール先生から紙とペンを借りると慌ててジョーブ君の試行理論を書き留める。ついでに俺の試行錯誤も箇条書きしておく。
「ボクはピエール先生が自分の傍に異空間があって、そこに収納の小箱があると言っていたので、小さな 箪笥(チェスト) が有って、その 箪笥(チェスト) に引き出しが付いている、その引き出しの中が『キーボックス』だと想定しました。でも、何度試しても引き出しが空間の縁に引っ掛かって出て来なかったので、いっそのこと 箪笥(チェスト) の形状を引き戸にしてみたら…と思い直して試してみたら開きました」
折角、黒板が有るので簡単に箪笥の絵を描いて要点も記入してみた。
「それは面白い考え方だな。 箪笥(チェスト) の引き戸を連想するのは初めて聞いた。パート=ラッシュも『コインポケット』の報告だ」
「成功してない俺もなの?」
「いやいや、パート=ラッシュはそこの二人が取得していないスキルを発動させたからな。報告してくれ」
「俺は…、ポケットの向こう側じゃなくて、余計にポケットが付いてればいいんじゃね? って考えて試していたら、それが『キーボックス』じゃなくて『コインポケット』だったんだよ」
成る程、考え方のもっていき方で似て非なるスキルに分化したのか。改めて『汎用魔法』って謎だらけだな。有れば便利なスキルって事だから、個人個人で細分化しちゃうんだろうな。パート君の報告もメモったぞ。
「では、スキルオーブ【簡易・一視】を渡す。ちゃんと新しいスキルが生えたか確認しろよ」
結果としては、パート君は『コインポケット』、ジョーブ君は『エアポケット』と『キーボックス』、俺は『キーボックス』が生えていた。俺は後で『 黒板(ボード) 』と『エアポケット』と『コインポケット』を覚えるんだ。ついでに『黒板消し』が生えるのか試すぞ。
「後、後期の講義日程は各自確認しておくように。以上。後は昼飯にするなり、興味のある作業を見学に行くなり自由にしていいぞ」
「じゃあな。次にあった時は『キーボックス』を披露するからな」
「お互い頑張ろうね」
「またです」
馴れ合うとか馴れ合わないとかとは別に、一緒に授業を受ける訳でもないので、あの二人とはそこまで顔を合わせないだろうな。いや、あの二人がオロール先生の刺し子の授業を受講するなら一緒になるのでは?
午後一時に商業ギルドに行かなきゃいけないのでサッとお昼ご飯を済ませないと。学食はパスだな。適当に買い食いしちゃうか。
「ミーシャ=ニイトラックバーグです」
商業ギルドの受付に名前を告げたら商業ギルド支部長さんと農業ギルド支部長さんの待つ応接間に案内された。
「ミーシャ=ニイトラックバーグ、今日は商業ギルドと農業ギルドと連名で指名依頼を出したいのだが」
「ボクに指名依頼ですか?」
それ、拒否権の無いやつだよね、俺知ってる。
「農業ギルドとしても是非ともお願いしたいのだよ」
「分かりました。危険な内容でなければお請けします」
「では行こうか」
そのまま両支部長に付き添われ、連れてこられたのは農業ギルド所有の家畜飼育場だった。小規模だけど牛も馬も羊も鶏も居る。豚の姿が見えないのは野生の猪やオークなんかが居るからなのかな?
「さて、我々が向かうのは養鶏舎なのだがね…、その前に浄化だよ。その扉を潜って欲しい」
敷地に入る前に小さな建物に通される。言われるまま扉を開けるとそこは一メートル四方ほどの小部屋で、目の前にすぐ次の扉が現れる。小部屋に入ると天井から床から浄化の光が降り注ぐ。家畜飼育場にウイルス類を “ 持たない・持ち込まない・持ち込ませない ” 為なのか。こういった点では異世界は便利だ。
「浄化の魔道具だ。動物たちを病気から守る為に来訪者は必ずこの小部屋を通過してもらっている」
鶏舎は半分が野外で半分が鶏小屋といった感じで、野外の方は雌雄一緒に平飼い飼育
。鶏小屋の方は雌鶏だけ飼育。当然だが前者は有精卵、後者は無精卵が採れる。それぞれザッと見で三十羽ずつくらい居るかな? よく見たら派手な羽色で立派な鶏冠をした一回り大きな鶏が二羽いて、それぞれの鶏舎の中をパトロールよろしく闊歩している。
コッカコッココー!! コッカコッココー!! コカー!! コーカコッコッコ
あの鶏、品種が違うのかな? 地鶏系? もしかして肉用だとか? あれ? 卵を啄いて転がしてるけど、それっていいの?