作品タイトル不明
第188話
農業ギルド支部長さんが特殊な笛を吹いたら二羽の大きな鶏がこちらにやって来た。
コカッ!! コカー!!
「では農業ギルド支部長、例のものを」
「『発芽』、『発根』、『促成栽培』!!」
どこかで聞いたことのある文言と共に皿に乗せた種が発芽し草体が伸びる。あ……あれはナズナか。 草木(くさき) 魔法で発芽させた清潔なナズナだ。『促成栽培』って魔法があるんだ。
コカッ コカッ コッコッコカッ 新鮮なナズナを前に二羽の鶏も嬉しそうだ。
「ではミーシャ=ニイトラックバーグ、この【鶏餌草】を【番コカトリス】の前で食べて貰えぬか?」
はぁっ!? 【番コカトリス】って何??? 俺、コカトリスの前でナズナ食べたらコカトリスの怒りを買って石化させられちゃうの? いや、コカトリスはそもそも草食なのか?
「え、えぇっ??? コカトリスの前でですか?」
「ん? ミーシャ=ニイトラックバーグは【番コカトリス】を知らなかったか。それは改良品種だから啄かれても石化はしない」
「でも、コカトリスなんですよね?」
「【番コカトリス】こと『品種名:コカコッコ』は我々が 生(・) で(・) 卵(・) を(・) 食(・) べ(・) る(・) 為に必要不可欠な生き物なのだ。【番コカトリス】が皿の上のナズナを気にしているぞ」
「ボク…、似たようなシチュエーションを知ってます」
「【 紫萌肥し(アルファー・アルファー) 】と【 穂先(ホ) 黍(キビ) 】事件だな」
商業ギルド支部長、あれ、事件扱いにしてるのかよ…。仕方ない、コカトリスの前でナズナを食べよう。…って、待って!! 今さっき農業ギルド支部長が 生(・) で(・) 卵(・) を(・) 食(・) べ(・) る(・) って言ったよね? この世界って鶏卵を生食出来るの!? マジー? マジで!? 本当ならありがとうマヨネーズ、 TKG(卵かけご飯) いらっしゃ〜い…なのでは??? いや、 TKG(卵かけご飯) って言ったけど米飯はまだ手に入れてないんだけどさっ。
「コッコッコー、コカコッコさん、一緒に【鶏餌草】を食べようね…」
いや、俺も過去二回の体験で、 “ 動物たちの前で独りで餌を食べちゃダメ!! ” ってことは学びましたよ。
ではナズナを一口……パクッ。もぐもぐ…、うん美味いな。俺がナズナを口にしたら、コカトリスがナズナを取られまいと慌てて突進してくるし…(汗) めっちゃナズナを持つ手を啄いてくる。でも何となくチクチクするけど石化はしないんだな。やはり改良品種:コカコッコなんだ。
「はい、どうぞ。新鮮で美味しいよ」
コカコッコにナズナを与えると鶏冠の立派な方の個体が咥えて受け取る。そして隣の個体に口渡しした。その個体は床にナズナを置くと半分位の量を啄み、残りを咥え直すと立派な鶏冠の個体に口渡しする。そして鶏冠の立派な個体がそのナズナをモシャモシャと飲み込んでいった。
「ほう、コカコッコの番の食事風景が間近に見られるとは」
コカー!! コカー!!
もっとくれ!とばかりに鳴いて催促してくるのでナズナをもう一掴みして鶏冠の立派な個体、推定=雄に与える。ついでに俺も一口。暫くそれを繰り返していたら皿の上に乗っていた新鮮ナズナは無くなった。
“ 番(ばん) コカトリスの 番(つがい) ” 。ドワーフ語を始めとする異世界言語で書いたら全然違う単語だけど、前世の日本語で書いたら見た目は同じ漢字な訳で………俺より先に転生してきた元日本人が日本語で様々な文献を残していたとしたら、何だか中途半端に訳されてそうな予感がするぞ。
コカッ コッコッ コカッ コカコッコー!! コカッ コカッ
雌コカコッコが雄コカコッコの蹴爪をポキッと折り、その蹴爪を俺に手渡してきた。
「これ、ボクにくれるの? ありがとう。大事にするね」
【 運馬石(ウマセキ) 】の次はコカコッコの蹴爪か…。どう考えても魔獣素材だよね?
「見たかね商業ギルド支部長、コカコッコが蹴爪を渡したぞ」
そうだ、『対物簡易鑑定』と『対物鑑定(中)』をかけてみよう。差があるのか無いのか気になる…
【コカコッコの蹴爪】: コカトリスの改良品種、コカコッコの雄の蹴爪。石化防止効果があると言われている
【コカコッコの蹴爪】: コカコッコの改良品種、コカコッコの雄の蹴爪。装備すると石化防止(弱)の効果がある。粉末にしたものは石化防止薬や解毒剤の素材の一つとして扱われる。
微妙に違う!! でも何で鑑定スキルが二つあるんだろう。簡易鑑定をし過ぎて鑑定が生えたんなら下位スキルは統合されたりするものじゃないの?
{ そこは…ほら、スキルオーブの結果を隠したりするからですよ…… }
そうか!! 確かに上位スキルを隠したり出来るし、逆に派生元のスキルを隠したりするのか。ヤーデさん、情報ありがとうございます。
「あの、農業ギルド支部長さん、商業ギルド支部長さん、ボクがコカコッコの蹴爪を貰ってしまってもいいんでしょうか?」
「構わない。第一それはコカコッコからミーシャ=ニイトラックバーグへ渡されたものだ。我々、両ギルドがどうこう言う資格はないだろう?」
「あ、ありがとうございます。コカコッコも蹴爪をプレゼントしてくれてありがとう」
コカーッ!! コカコッコー!!
二羽が羽ばたきながらジャンプし、俺の頭や肩に乗ってくる。そしてそのまま嘴でチョンチョンコツコツと軽〜く啄き回してきた。