軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第186話

「俺は『ロングヒル』から来たパート=ラッシュだ。ラッシュ氏族は特定の職業に就く事には拘っていないので、 職校(ここ) にやりたいことを探しに来たんだ。宜しく頼むぜ」

「僕は『ウェルス=マウンテン領』の『ブラックパート』から来たジョーブ=ヤークです。ヤーク氏族は土木と採掘がメインだよ。『ネオ=ラグーン領』は初めてなので色々教えて下さい」

「ボクは『ネオ=ラグーン領』の僻地の集落出身のミーシャ=ニイトラックバーグです。氏族名は無かったので、お世話になった二人のドワーフの庇護養子にしていただきました。その二人の氏族名に接頭語を足したニイトラックバーグを名乗っています。趣味は鉱石研磨です。宜しくお願いします」

ちなみに三人とも寮生だ。

「誰が最初に『キーボックス』を取得できるか競争しようぜ」

パート=ラッシュさんは、やんちゃオラオラ系か? それともただ騒がしい系?

「僕はそういうのはいいよ。すぐ覚えられそうでもないし」

「ミーシャ=ニイトラック…?トラックバーグはどうよ?」

「ボクはミーシャ=ニイトラックバーグです。呼び辛いと思うのでミーシャでいいです。あとボクも競争は遠慮しておきます」

「ちぇっ、つまんねぇの。じゃあ今から二人を呼ぶ時はジョーブとミーシャな」

「パート君、ミーシャ君、改めて宜しくね」

「パートさん、ジョーブさん、宜しくです」

「自己紹介はそろそろいいだろう。では『キーボックス』取得の為のコツを教えるぞ」

いつの間にか校長先生とは別の講師が小会議室に入ってきた。

「本来なら小会議室から第一教室に移動するんだが、人数も三人しかいないからこのままな。オレは座学担当のピエール=ガリバーだ。じゃあいくぞ、『 黒板(ボード) 』、『 白墨(チョーク) 』」

『汎用魔法』で黒板出せるんだ。確かに何処でも黒板は楽だな。もしかして黒板消しは使わずで、文字で黒板が埋まったら黒板自体を出したり消したりするのかな? よし、『 黒板(ボード) 』は覚えよう。ついでに『黒板消し』が覚えられるのか実験してみようかな。

カリカリカリ……

「いいか、これが『キーボックス』の原理だ」

自分の隣に異空間が有ると仮定して、その異空間に小さな収納ボックスを作るのか。

「実はこの『キーボックス』は時空魔法や次元魔法とかではなく、単なる『汎用魔法』だ」

ナンダッテー!? 廉価版・四次元物入れ袋じゃないんだ!!

「マジでかよ!!」

「よりによって『汎用魔法』だったとは…」

「まさかの『汎用魔法』」

ザワつく三人。仕方ないよ、どう考えても機能的に考えたら空間魔法一択でしょ?

「原理上は “ 異空間に収納小箱が有る ” だけどな、実際は “ ズボンのポケットの奥に鍵入ってないよな? ってゆーか入っててくれ!! ” だからな。で、 “ ここにオマケの収納エリアがあればいいのになぁ… ” って思って取得を促す訳だ」

あーー、飲み過ぎた後の家の鍵どこ? あるあるが発端だったのかよ…。

「えーー、そんなものだったんですか?」

「そうだ、そんなもんだ」

「もっとこう、難しいやつかと思って損したな」

「おっ、パート=ラッシュ、随分と大きく出たな」

『汎用魔法』は試行錯誤と試行の回数が物を言うから、様々なシチュエーションを妄想しながら試行を繰り返し、発動兆候が出るのを待つしかない。……ので、パート君が騒いでいる間にも俺はトライ・アンド・エラーを繰り返す。さっきピエール先生が言ってたズボンのポケットの向こう側は今一つ感覚が掴み辛いな。やはり前世が元日本人なので、某・青タヌキ…ではなくて未来の世界のネコ型ロボットのお腹を想像してしまうせいだろうなぁ。あのネコ型ロボット、机の引き出しから出てくるんだっけ……、ん!? 引き出し!?

俺の手元に小さな箪笥の様な収納家具が有って、その引き出しの把手をそっと引く…。これならどうだ?

「まぁ、焦らずに卒業するまでに取得してくれればいいからな」

「長ぇよ!!」

「あ…、穴が空いたかも…」

「おっ、ジョーブ=ヤーク、早いな。試しにこれを入れてみな。成功してれば取り出せる」

ピエール先生がジョーブ君にコルク栓を渡す。何故にコルク栓…。

「はい、お借りします……入りました。で、取り出しま……せん!! 行方不明です…」

「あちゃー、それは『エアポケット』だな。それは、発動すると入れたものは亜空間に落っこちるやつだ。落ちた物は帰ってこない。別名:ゴミ捨て だ」

ジョーブ君、いきなり別スキルを獲得かよ。ゴミ捨てスキル、いいなぁ……。さて俺も頑張らなくては。……、ん!? 引き出しが引っ掛かった? これ、スキル生えかけ中?

ガタガタする妄想引き出しを取り出そうとする。が、出て来ない。これ、箪笥の形状を変えたほうが良くない? いっそ引き戸にすれば……ガラガラガラ あっ、開いた!!

「ピエール先生、今度は穴じゃなさそうです。もう一回、何か貸してください」

やべぇ、ジョーブ君ってマジ優秀な子なの? 優秀な留学生って認識でいい?

「では銀貨を一枚貸してやろう。出て来なかったら夕飯時にエールを一杯で返してくれればいいぞ」

「あ、はい、分かりました。……入りました。で……出て来ました!!」

「良かったな…。後は出し入れをスムーズにする事と、『エアポケット』の封印だな。間違っても二つを繋げるなよ」

「俺も出たかも…、違う。ポケットの上にポケットが付いた」

「それは『コインポケット』だ。コインが数枚入るが口が閉じないから角度でコインが落ちる」

「あの…ボクも試したいです」

「ミーシャ=ニイトラックバーグも何か生えたか。じゃあ、このチョークをやろう」

ピエール先生からチョークを受け取ると、引き戸の空いた妄想・小箪笥に仕舞い、再び引き戸を開く。チョーク、無事生還。

「良かったー、チョーク戻ってきました。ピエール先生、お返しします」

「はい、一旦休憩な。パート=ラッシュももうすぐ生えてくるぞ。先ずは発動出来た二人に試行内容を発表してもらおうか」