作品タイトル不明
756.鉢植えの準備に忙しい
鉢に土を入れて、周囲を洗う。ラッピングして渡したいけれど、透明ビニールがないのよ。いろいろ考えていたら、針子が布袋とリボンを準備した。布袋と言っても、きちんと縫ったものじゃないの。
ぐるりと円形に糸を通して、中央に鉢を置いたら糸を引き絞るだけ。糸を隠すようにリボンを巻いて結んだら終りね。色が鮮やかになるし、贈り物っぽさも演出できた。マルレーネ様達にお渡しするのだから、素焼きの鉢のままは難しい。
「持ち帰るのは侍従達ですが……」
苦笑いするフランクの言葉に、相槌を打った。貴婦人が抱えるわけじゃないけれど、やっぱり受け取り時に素焼きの鉢では寂しいわ。リボンや布の組み合わせを変えながら、あれこれと装飾するのは楽しかった。レオンやラルフも嬉しそうに色を選び、ローズは大好きなピンク一択!
ピンクの濃淡で作った鉢を部屋に持ち帰ると言い出した。多めに用意したので、問題ないと伝える。温室内はいつも通り猫達が運動会の真っ最中だった。ローズのリボンにちょっかいを出したシロが追いかけられ、嬉しそうに逃げていく。
こうなったら子供の集中力は続かない。レオンとラルフも加わって、猫の運動会は加速した。ミアやサビーネも一緒に走り回るので、逆に夜はしっかり睡眠をとる時間になっているらしい。見回りする侍女から聞いた話に、なるほどと納得した。
母猫アイは我関せずだったのに、ローズに尻尾を掴まれて参戦する。引っかかれたら、それもまた勉強だわ。顔に傷が残るのでなければ、大丈夫でしょう。ティムは鉢を木箱に避難させた。手伝い終えたハンスが猫の追いかけっこに交じる。
「ティム、今のうちに種を用意しましょう」
「そうですな、奥様」
用意しておいた紙を畳んで、袋を作った。シンプルな形なのは、私が折り紙に詳しくないからよ。作れるのは鶴くらいだわ。そう話しながら折っていたら、鶴の単語に皆が首を傾げた。もしかして、この世界に鶴はいないの?
こういう感じの……と土の上に棒で絵を描いたけれど、伝わらなかった。やっぱりいないんだわ。
紙袋を予定数より多めに作り、種を摘まんで入れていく。その作業に子供達が参加表明した。そこでローズとラルフに袋の口を折る係を頼んだ。たぶん……ローズに入れてもらうのは無理だわ。胡麻より小さな種だもの。
レオンは言われた通り、指で摘まんで中に入れる。覗き込んで入っているか確認し、ローズに渡した。ラルフがサポートしてくれるから、ずっと見ていなくていいし安心だわ。
「お母様、たね、ない……くなった」
以前も良く出た癖ね。なくなったの亜種である言葉を聞いて顔を上げる。多めに入れすぎた?