軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

754.宝物を譲る繋がりは切れないもの

抱きしめて落ち着かせ、ベッドに横たえる。久しぶりに子守唄を歌った。目を閉じて寝息を立てるまで、しっかりとラルフを守る。この子はまだ幼くて、前世なら守られる年齢だった。貴族に生まれなければ、近所を走り回る年齢だわ。

ユリアン達がのんびり育ったのも、近くの領民と平民同然に触れ合って育ったから。そういう環境は必要ね。ただ貴族の子は難しいわ。簡単に保育園を作って子供を集めたら、間違いなく問題が起きる。警護、送迎、爵位や財産格差による差別。考え付くだけで片手が埋まるほど。

男爵家の子が、侯爵家の子息を殴ったら? 家を巻き込んだ大事件に発展してしまう。逆に公爵家の子が子爵家の令嬢に暴言を吐いたら……なかったことにされるでしょう。幼い頃に刻まれた痛みや屈辱は、未来にわたって遺恨を残す。

保育園の話は、絶対に口に出さないようにしましょう。皆が賛同してくれるとしても、大騒ぎになるわ。それに子供達を集めて楽をする施設ではないんですもの。ただ、交流する機会を増やさないと視野が狭くなってしまう。

「何かないかしらね」

ある程度の年齢になったら、保育園のように交流できる施設……学童みたいな? 平民ならそれこそ、街中で走り回って遊ぶ間に上下関係が構築される。守る側と守られる側が出来て、ガキ大将に似た存在が群れを率いた。ごく当たり前の光景よ。

これが貴族になった途端、難しくなるんだもの。レオンは公爵家の嫡男だから、最強のスペードのエース状態だった。他の子が何か言ったり手を出したりすれば、周囲が許さない。それも可哀想よね。子供の頃は触れ合って、叱られて育つのですもの。ケンカして、仲直りする経験も必要だわ。

あれこれ考えている間に、ラルフは完全に眠りに落ちた様子。魘されてもいないから、大丈夫ね。肩を撫でて立ち上がり、ふとサイドテーブルの天板に目をやった。何か転がりそうな小物がある。一つが落ちそうなので手を伸ばし、中央へ寄せた。

「どんぐり?」

気になって一つ持ち上げてみる。加熱していなかったら大変だわ。そう思ったけれど、きちんと処理してあった。そこで思い出す。レオンが何かをラルフにあげていた。もしかして、このどんぐりかしら?

家族で初めて旅行した際に拾ったどんぐりは、レオンの大切な宝物だ。それを分けてあげたの? 熱処理すると艶が消えてくすむ。その表面をもう一度丁寧に磨いてあった。ユリアンが教えたのかもしれない。

大丈夫、あなたは繋がっている。可愛いレオンを通じて、シュミット伯爵家の弟妹にも、王家の皆様にも……これから知り合う子供達とも。何も心配いらないわ。そう囁いて、私はどんぐりを戻した。数が減っていたら、慌てさせちゃうものね。