軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

748.情緒教育も順調なようです

レギーナと呼ぶ許可を得た時点で、関係が良好なのは窺えた。貴族令嬢は、基本的に家名で呼ばれるの。女性は家の付属という考え方が強いせいね。ユリアーナはシュミット伯爵令嬢、結婚した私はケンプフェルト公爵夫人となる。

男性も同じルールが適用され、ヘンリック様は外でケンプフェルト公爵閣下と呼称された。ファーストネームは、親しくなったら許可を得て呼ぶもの。勝手に呼んだら非常識な者として、貴族社会から 嫌厭(けんえん) されるでしょう。

「お名前を許していただいたのね」

「ええ、とても素敵な子で可愛いの。柔らかいブラウンの髪も緑の瞳も、大好きよ」

なにやら容姿のことで盛り上がったのかしら? ユリアーナの髪は金色だけれど、私と同じでくすんでいる。きらきらの髪ではないから、平凡な茶髪のクラネルト子爵令嬢と話が弾んだのかも。

「今回の件も丁寧に謝ってくれて、私のほうが申し訳なくなったわ。ヴェンデルガルト様とお約束しているから、一緒に出掛けないかと誘ったの」

「そう、リースフェルト公爵令嬢の許可はいただいたの?」

「もちろんよ」

その点はきちんと連絡できているようで、安心した。目上の令嬢に黙って同行者を増やすなんて、護衛やご家族に叱られる事案だもの。

クラネルト子爵令嬢とどんな話をしたか、何のお菓子が好きか、お茶は何を頼んだのか。すべて話すユリアーナは楽しそうだった。まだ隠し事をする年齢ではないことに、ほっとする。いつか、恥ずかしさから隠してしまうかもしれない。その日が遠いことを願った。

「あっ、お買い物してから合流する予定なの。出かけていい?」

「ええ。行ってらっしゃい、気を付けてね」

レオン達を見ているので、玄関まで見送らない。馬車と護衛の手配は確認した。合流までは五人の騎士が同行し、リースフェルト公爵家の護衛と合流したら二人が帰る。

「お母様、ほら」

嬉しそうにレオンが走ってきて、手のひらを上にして見せたのは虫。長細い芋虫系ね。でも毛虫ではないから、大丈夫そう。毒の心配をした私に、後ろからティムが「問題ありやせん」と笑った。そうよね、彼らが見落とすわけないわ。

「潰さないようにそっと、ね」

「うん」

ゆっくりと運んで、近くにある葉っぱの上に置いた。レオンは動き出すのを待っているようだけれど、芋虫もゆっくりしたいでしょう。すぐ動かないわよ?

「レオン、本を読みましょうか?」

ぱっと笑顔になって走ってくる。まだまだ幼子と呼べる息子を抱き留め、続いたローズも受け止めた。それからラルフへ両手を広げる。恥ずかしそうにしながらも駆け寄り、私の手を握った。抱き着くのは無理なの? くすっと笑って立ち上がり、私から抱きしめた。