作品タイトル不明
746.幼くてもきちんと説明する
夕飯後の団欒で、ラルフが通いになる相談をした。すでにユーリア様には手紙で知らせて、承諾も得ていた。以前は、通いだと狙われるのでは? と不安があったの。騎士達の鍛錬も兼ねて、護衛を増やすことで折り合いがついている。
あとは子供達の気持ちの問題ね。
「緊張して任務に当たる経験が必要だ」
ヘンリック様はそう言い切った。きょとんとした顔のレオンは、内容を理解できているのかしら? 心配になって確認すると、指を折って話し始める。これはラルフの教師の教えみたい。順番を整理して話すには、指を使うのはいいかも。
「ラルフ、夜はお家かえる。んで、朝くる。あと騎士様いっぱい!」
思ったより理解していたわ。微笑んで、少し付け足してあげる。
「夜は一人なの。怖かったらお母様の部屋へ来ていいけれど、ノックはしてね」
「うん」
ラルフは俯いて考え込んでいる。
「ラルフに何か足りないから帰すわけじゃないわ。レオンの側近はあなたで決まりよ。ただ、まだ母親であるユーリア様に甘えていい年齢なの。私相手では上手に甘えられないでしょう?」
驚いた顔で私を見つめ、何か言いかけて呑み込む。
「話して頂戴。ラルフの考えを聞きたいわ」
もしラルフが帰りたくないと言えば、尊重するつもりよ。ユーリア様は残念がるでしょう。でも当人の気持ちが一番大事だもの。
「俺は、その……母上に甘えるのは、もう」
公爵家の次男は肩書きとして強いけれど、将来が約束された地位ではない。嫡子がいる以上、どうしても控えになるわ。甘えてばかりはいられない。表情に出ていた。
「ラルフ、あなたはまだ甘えていいのよ」
「まだ……いいの?」
幼い言葉遣いになったのは、本心だから? 微笑んで頷き、伸ばした手で頭を撫でた。猫のように気持ちよさそうにしている。目を細めるところとか、そっくりね。
「妹も生まれたのでしょう? ならば、一緒に暮らして仲良くなってきて。うちのローズに優しくしてくれたように、妹も大切に出来るかしら?」
「はい」
いい返事ね。迷いはかなり消えていた。
ヘンリック様の膝でハンカチか何かを弄るローズは、まったく会話に参戦しない。ユリアーナは早々に部屋に戻って休んでいた。明日、事情を聞かなくちゃね。
「いつ帰る?」
レオンが首を傾げた。もっともな疑問だわ。ここでヘンリック様に説明役を譲った。
「次のお茶会だ。み……三回寝て起きたら、だ」
三日後と口にしようとしたのに、言い直してくれた。頭が良くて素直な人なの。だから理解して納得したら、実践しようと努力する。
「きょう、一つ?」
指を折って数えるレオンが驚いた顔で、目を見開いた。
「すぐ!」
「そうね、すぐよ」
三日したら帰るけれど、四日目の朝はちゃんと通ってくるの。そこが抜けている気がして、ちゃんと話したらレオンは笑った。