作品タイトル不明
736.お絵描きの成果は……
散々苦労した結果、私は描いた絵と目の前の天使を見比べていた。おかしいわ、なぜか違う……どこが違うのかと問われたら、全部ね。どうしましょう。
「お母様、みして」
「見せるのはいいけれど、上手じゃないの」
言葉を直しながら絵を置く。事前に何を描くか申告していたため、何を描いたと問われずに済むのは幸いかしらね。ラルフは「特徴を捉えていると思います」と上手なお世辞を繰り出した。この子、侮れないわ。
特徴を捉えていると表現すれば聞こえはいいけれど、色で判断したのだと思う。黒髪と肌の色、それから紫色の瞳……頬に少しピンクをのせて、口に赤を入れたのが失敗かも。形はちゃんと子供……よね?
「リリー、 忌憚(きたん) ない意見を聞きたいのだけれど」
「申し訳ございません、奥様。私には絵心がございませんので」
評価するのに、絵心は必要なの? いえ、ないよりあったほうがいいのはわかるけれど。
「……では、フランクかイルゼに聞いてみるわ」
「はい」
笑顔で下がってしまった。壁際で気配を消すように立つリリーの様子に、そんな酷なお願いをしたかしら? と眉尻が下がる。ユリアーナは別室で、今日はダンスのレッスン中ね。呼び出してまで聞くことではなかった。
「これ、ぼく!」
嬉しそうにはしゃいだのはレオンだった。欲しいと強請ったので、いいわよと許可した。複雑そうな顔で「よかったですね」と告げるラルフは……ある意味正直なのかも。猫を描いたときは可愛く出来たのに、なぜ今回は失敗したのか。
「ぼくはこれ」
差し出された絵は、確か……猫とローズが題材だったわね。びっくりするくらい上達しているわ。猫がちゃんと楕円で描かれている。棒のような手足がついて、四本足で立っていた。頭にある三角が耳ね。母猫アイの絵、本当に上手だわ。
ローズも……微妙だけれど、棒人間から進化した。手足が太く描かれ、髪もきちんと塗られている。後ろにほかの猫と思わしき楕円が二つ。前脚を折り畳んで寝る猫と思えば、納得できる。色から判断して、おそらくシロとサビーネでしょう。
「ミアはいないの?」
「これ」
すっごい小さな丸……いえ、クレヨンの点? これがミアなのね。猫は母子四匹で描かれ、ローズがピンクの何かを握っているみたい。
「これはお花ね」
「うん」
嬉しそうに肯定するレオンの顔に、間違わなくてよかったと胸を撫でおろした。その後、ラルフは描いた絵を背に隠して、見せることを拒んだ。私は「それならいいわ」と諦めたのに、レオンは譲らなくて。結局、見せてもらったの。
凄く上手で、プロの描いたスケッチのよう。白黒写真があったらこんな感じよ。たくさん褒めたら、照れて真っ赤になってしまった。
「きっと、ユーリア様も喜んで飾るわ」
そんなことない? いいえ、だって母親ですもの。我が子の描いてくれた自分の絵は、宝物に決まってるじゃない!