作品タイトル不明
586.ずっと仲良くいてね
ぐっすり眠るローズを置いて、レオンやランドルフと過ごす。早く走れるようになったと自慢するレオンに付き合い、芝生の上を走った。少しだけ加減をして、レオンが一番早く駆け抜ける。ランドルフが手前で減速したのよ。
そうしたら……戻ってきて「めっ!」と叱った。驚いて見ていると、レオンはランドルフに対して勢いよく言葉を投げる。
「めっ! なの! 一番がいいけど、遅く走るのは、違うの……っ、ぼく、やだ」
叫んだ前半から、徐々に声が落ち込んでいった。最後は「こんなのは嫌だ」と泣きだしてしまう。驚いた顔をする私は固まって動けずにいた。泣きながら走るレオンが激突し、受け止め損ねて一緒に芝生に転がった。咄嗟に手を出して抱えたから、ケガはないと思う。
「大丈夫? レオン、ケガはない?」
「……っ、うん」
自分でも驚いたのか、レオンの涙が止まっていた。
「ごめん、レオン。公爵夫人と一緒だから……ちょっとだけ遅く走った」
一緒に泣いてしまったランドルフが、おずおずと近づいて来る。手が届く手前で止まって、ぺこりと頭を下げて謝った。
「……うん、ぃいよ」
しっかり頷いて、それからお尻から倒れた私の上から降りる。レオンは私をじっと見つめて、また涙を零した。
「お母様、痛いくなった!」
懐かしい言い方ね。痛いたい……よく使っていたわ。ふふっと笑って立ち上がれば、ちょっとだけお尻が痛い。転んだ時に着地した部分は、どうしても痛いものよ。でも微笑んでレオンの頭に手を乗せた。
「大丈夫よ、痛くないわ。レオンがケガをしなくてよかった。ランドルフと仲直りできた?」
「できた」
安心した様子で、まだ濡れた頬で笑う。芝生の上に座り直し、二人を手招きした。泣いて濡れた二人の頬を、ハンカチで順番に拭う。
「ランドルフはね、意地悪をしたんじゃないのよ。私と一緒だから、レオンのカッコいいところを見せたかったの。こんなに速いんだぞ! って自慢したかったのね」
レオンがこくんと頷く。ちゃんと理解したみたい。ランドルフの頭にも遠慮なく手を乗せ、笑顔で話を続けた。
「レオンはランドルフの足が速いことを知っている。だから手抜きされたと怒ったの。理由を知らなかったからよ。これからも同じようなことがあったら、二人で謝って理由を話すようにできるかしら? そうしたら、ずっと仲良くいられるわ」
「わかりました」
「うん、話す」
二人の相性はいいから、ささいな誤解でこじれないように。将来、何か拗れたときに役立つように。いつも言い聞かせていきましょう。せっかくのお友達、誤解で失うのはもったいないものね。