作品タイトル不明
587.久しぶりの三毛猫と一日ぶりのお出迎え
ヘンリック様の帰宅も、レオンと一緒に手を繋いで迎えた。レオンの逆の手を握るランドルフの足元に、三毛猫が擦り寄った。
「ミア? アイじゃなさそうね」
この家の三毛は二匹、母猫アイと娘のミアだ。ところが両方違う気がする。首を傾げる私の声に、猫は顔を上げてにゃー! と挨拶した。
「……いつだったか、遊びに来た子かしら?」
馬車の音が聞こえてきたため、近くにいた侍従が回収する。何度か窓越しにアイ達と挨拶していた猫みたい。野良かと思ったけれど、毛並みがよくてふっくらしていて。誰かが飼っている気がするのよ。猫のテリトリーは狭いと聞くから、厩番か通いの庭師についてくる可能性もあるわね。
連れてくる気がなくても、猫は飼い主の後をついてきちゃうのかも。それならそれでいいのよ。窓越しに接触している分には問題ないし……この世界も猫風邪とかあるのかしら?
ランドルフから引き離された三毛猫を、レオンが未練がましく視線で追う。
「どして?」
「……匂いかな」
私が首を傾げる間に、ランドルフが返事をした。猫がレオンではなくランドルフのところにいた理由? そうね、私も同じだけれど……猫達の匂いがしたのでしょう。今朝はランドルフが餌係だったわ。レオンは猫達を抱っこしたけれど、足に絡みつくのは餌やりのときだもの。
「ラルフは餌をあげたでしょう? 猫のご飯……あの時はズボンや足に擦り寄るのよ。匂いがしたんだわ」
言葉を足して説明すると、レオンも納得したらしい。同じタイミングで、フランクが玄関を開いた。
「ただいま戻った……っ、アマーリア! ローズはもういいのか?」
「はい。熱が下がってきましたわ。ありがとうございます。ほら、レオンもラルフもご挨拶して」
促すと、レオンが走ろうとした。両手を繋いでいたため、戻ってしまう。手を解くか迷うレオンに、ヘンリック様が大股で歩み寄った。脇に手を差し入れ、ぐいっと抱き上げる。
「大きくなった! それに重いぞ。いいことだ」
「ぼく、いい!」
繰り返して笑うレオンは手を離さなくて、ランドルフが引っ張られている。それでも離さないくらい、仲良しなのね。仕方ないので先に私が離した。レオンがランドルフの手を解放する。ほっとした顔のランドルフに「こういう時は言ったほうがいいわよ」と小声で忠告した。
疲れてしまう関係は良くないわ。
「おかえり! お父様」
「ああ、ただいまだ。レオンは今日何をした?」
話しながら歩くヘンリック様が振り返る。頷くから、私がランドルフの手を取った。
「ラルフのお勉強はかなり進んでいると聞いたわ。どこまで学んだの?」
話を振ると、照れた様子で教えてくれる。レオンは夢中でヘンリック様に、午後のかけっこの話をしていた。ある意味、可愛い武勇伝ね。