軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

585.幼子でも説明は省かない

ローズが寝ている間に、とレオンの様子を見に行く。廊下で猫とすれ違い、慌てて引き返した。決められた部屋の中ならいいけれど、廊下は危険だわ。仕事中の侍従に踏まれるかもしれないし、侍女が水を運んでいたら被るかも!

白い尻尾をぴんと立てて歩く猫は、足元もおぼつかない子猫だったのが嘘のよう。しなやかな体で堂々と歩き、立ち止まって私を振り返った。追って来る足音に気づいたのね。ぴくぴくと耳が動いて、シロがダッシュする。あと少しだったのに、逃がしてしまったわ。

足首に絡むワンピースのスカートに溜め息をついて、また追う。

「お母様? なぁに?」

以前のように可愛い「なぁに?」が聞けて満足よ。朝の挨拶をして、ヘンリック様を見送った武勇伝を語る息子を抱き上げた。その間に、ランドルフが猫のシロを捕獲する。やっぱり運動神経がいいランドルフには敵わないわ。……短いスカートならイケたかも? 叱られちゃうから無理だけど。

首に腕を回したレオンが頬ずりするのを許し……えっと、お風呂に入ったばかりだから平気なはず。感染予防が頭をよぎった。石鹸で洗ったし、新しい服に着替えているから大丈夫。と思いたいわ。

「レオン、たくさん頑張ったのね。すごく偉いわ! ヘンリック様の隣で寝たの?」

「お父様と、らるふと一緒!」

ああ、だんだんと言葉が大人びていく。きちんと発音できるのは成長の証なのに、前のたどたどしい話し方が懐かしかった。そんなこと、思っていてはダメね。

頭を撫でて、床に下す。だいぶ重くなったから、抱き上げてあげられる時間もあと僅かかしら? 仰け反って腰をとんとん叩きたい気分だけれど、傷つけるから諦めましょう。ランドルフが駆け寄り、レオンと手を繋いだ。

代わりに猫のシロを受け取る。逃げたくせに、抱っこされたらそれはそれでいいの? ゴロゴロと喉を鳴らし、ご機嫌でへそ天姿を晒した。近くにいた侍従に猫を預ける。

「部屋に戻して頂戴、逃げたみたい」

「承知いたしました」

フランクかイルゼに連絡が入って、しばらく猫の脱走の監視が厳しくなるわね。いつも脱走するのはシロ、ときどきミア。なぜか、サビーネとアイは滅多に脱走しない。

「ろじぃは?」

「まだお熱があるの。夜までは無理そうね」

「そう……」

悲しそうにするレオンに、ヘンリック様との昨夜の武勇伝を振る。話題に飛びついたレオンは、得意げに一緒のお布団に入った後のことも語った。絵本を読んでもらったの? まあ、素敵ね。同意する響きが嬉しいのか、レオンは朝起こした話も続けた。ヘンリック様を揺らして起こしたみたい。

「素敵なお話ありがとう、レオン。ローズの看病があるから戻るわね。でもお昼を一緒に食べて、午後は一緒にいられるわ」

きちんと説明する。しゃがんで視線を合わせ、レオンに言い聞かせた。午後は一緒の言葉に、レオンがにこりと笑う。あの様子なら午後もローズは寝て過ごすでしょう。起きても、イルゼやリリーに任せられるわ。

猫に触れたから、ローズの部屋に戻る前に手を洗いましょう。ランドルフと手を繋いだレオンの空いた手を握り、手洗いに向かった。