作品タイトル不明
34.(ロルフ)猫? ダメだ!
妻ユーリアと息子の婚約者リースフェルト公爵令嬢は、一緒にお茶会に行ったはずだ。息子ローラントが合流していたと知り、驚いた。王宮でひと騒動あったと聞いているからだ。休日でも呼び出されるのが、王族の補佐役なのだが。
「きちんと顔を出して処理し、陛下の許可を得て帰りましたよ」
ローラントは思ったより有能なようだ。婚約者のために頑張ったらしい。微笑んで頷いたものの、三人の要求は意味が繋がらなかった。ケンプフェルト公爵夫人のお茶会に参加すると、何時も感化されて戻るのがユーリアだ。
あれが素晴らしかった、これも素敵。私も欲しいわ。そのお強請りは可愛らしい。幸い、バルシュミューデ公爵家は高位貴族であり、裕福だった。たいていの物は手配できるし、手に入る。ユーリアはそれらを手に、別のお茶会で 布(・) 教(・) してくる。
そう、外から見ている僕にしたら「一種の宗教」のようだった。盲目的に慕い、良いと信じて周囲に情報を振りまく。実害はないし、ケンプフェルト公爵夫人はそれだけの人格者だと思う。だから注意してこなかった。しかし……。
「猫?」
商家が倉庫でネズミ捕りに飼う、あの小さな獣か。どうしても飼いたいと訴える。物ならば好きにすればいいが、生き物は別だった。必死になるローラントの隣で、手を組んで祈るような姿勢のリースフェルト公爵令嬢が「頑張れ」と応援する。もう操られているのか?
やれやれと思うが、どの家も「奥様が強い家は安定する」のが常だ。僕もユーリアのお願いは叶えてきたから、妻の強い家に分類されるのだろう。リースフェルト公爵令嬢がしっかりしていて、頼もしいと思うべきだ。
問題は――猫。
「なぜ猫なんだ」
「アマーリア様が飼っているのよ。すごく愛らしい仕草をするの」
ユーリアの説明だと、ケンプフェルト公爵夫人が飼っているから欲しいと聞こえる。それは却下だな。
「生き物を飼うことで責任感を養うことができます」
ローラント、お前はすでに責任感があるだろう。成人間近なのに、幼子のような説得をするんじゃない。やはり、却下しよう。
「猫は液体なのだそうですわ」
「液体?」
思わず反応してしまった。リースフェルト公爵令嬢が必死にアピールを始める。柔らかい毛皮、しなやかで無駄のない動き、跳躍などの身体能力、人に懐くが適度な距離を置く? そして、ぐにゃりと箱に収まる所作は、まるで液体のようだと。
興味がそそられる。だがダメだ!
「……っ、家畜以外はダメだ。諦めなさい」
たまには当主としての威厳も必要だ。きっぱりと「ダメ」を言い渡した。諦めきれない妻に寝室で熱心にお願いされ、決断が揺らぐまで……あと数時間。