軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33-2.(ローラント)年下の婚約者のために

ヴェンデルガルト嬢が、小さな毛玉に襲われている? いや、じゃれついているだけか。膝の上と肩に飛び乗った二つの毛玉は、こちらを見て「にゃん」と鳴いた。猫の存在は知っているが、触れられる距離で見るのは初めてだ。

「猫……?」

「ローラント、先にご挨拶なさい」

母に叱られ、慌ててケンプフェルト公爵夫人に挨拶をする。子猫はもう一匹いて、レオン殿と遊んでいた。レオン殿が触れているのは、黒と茶が混じったような模様の猫だ。縞模様だろうか。表現が難しい柄だった。

「まあ、間に合いましたのね。こちらへどうぞ」

ヴェンデルガルト嬢に勧められ、やや腰が引けた状態で隣に座る。猫は爪や牙で襲うと聞いていたが、平気なのか? 貴族の屋敷はいくつも訪問したが、犬を飼う家はあったが……猫は見たことがない。

白い子猫がこちらに興味を示し、ヴェンデルガルト嬢の膝から飛び移ろうとしている。ふりふりとお尻を揺らし、伏せるような姿勢になった。獲物に飛び掛かるときの姿ではないのか? 心配になって声を掛けようとするも、直前に猫がジャンプした。

ぴょんと飛び乗り、硬直した僕の膝の上で得意げに胸を張る。顔だけでなく尻尾も上げて、こちらを小馬鹿にしたような目で……。どかそうと触れた指先に、予想外の感触があった。ふわりと柔らかくて、ほんの少し冷たい。だがしっかり掴むと温かかった。

ごろごろと音を立てながら寝転がり、膝の上でぐにゃんと崩れる。愛らしいと思う気持ちを、鋭い爪が消し去った。ふくふくした口が開いて、大きな欠伸をする。小さいながらも立派な牙が並んでいた。噛まれたら痛そうだ。

「まあ! 私のときより早く懐くなんて」

ヴェンデルガルト嬢の唇が尖る。淡いピンクに色付けされた唇は艶やかで、どきりとした。年下なのに、彼女のほうが大人びて感じる。目を離せずにいると、母上に叱られた。

「 お(・) い(・) た(・) をしたら許しませんよ」

「っ、はい」

用意されたお茶に手を伸ばそうとするも、猫が邪魔で動けない。ぐたんと伸びた猫は、少しの動きで流れ落ちそうな気がした。手で支えてカップを掴み、引き寄せようとして諦める。再びソーサーの上へ戻した。

熱い紅茶を、万が一にでも零したら? ぞっとした。膝の上で眠る猫の白い毛皮に垂れて、火傷をさせたらと思うだけで恐ろしい。レオン殿の猫だろうか。それとも公爵夫人の? 判断ができずに膝に乗せたままでいたら、ケンプフェルト公爵夫人の指示で侍女が猫を回収した。

両脇をひょいと掴まれ、ぶらんと伸びる。全長が倍くらいになったぞ? 変な動物だ。目を奪われていたら、母上が猫を飼う相談をしていた。

……この動物が家に? 爪と牙があるのに? それ以前に服に毛がついたんだが……。貴族が飼わない理由がよくわかり、同時に飼いたがる母の気持ちも理解した。可愛いと思っているのだろう。侍女から受け取った白猫を撫でている。ケンプフェルト公爵夫人が止めてくれるだろうか。

生き物は簡単な気持ちで飼うものではない。そんな話に母は迷い始めた。世話を使用人に任せきりにすれば可能だが……。

「バルシュミューデ公爵家で飼うのですか? 毎日でも通っちゃうわ」

「母上、猫を飼いましょう!」

ヴェンデルガルト嬢が毎日来てくれるなら、猫を飼うべきだ。飼わない理由はない! 僕はそう主張した。リースフェルト公爵家では、すでに却下されたらしい。母も賛同したが、父上の反対で屋敷内の意見が割れることになった。頑張れ、母上!