作品タイトル不明
35.(ルイーゼ)猫は我慢する
お母様は猫を飼うと言った。おぉ兄様はダメだと言う。王宮はお客様が来るし、いろんな部屋に猫が入るのは困るみたい。ちぃ兄様はお母様の味方で、猫は可愛いし部屋で飼えばいいと話した。
「ルイーゼはどう思う?」
おぉ兄様に聞かれて、少し考える。あたしは猫がいてもいいけど、可愛いけど……。ちらちらと三人を見る。ちぃ兄様とお母様がいるほうへ行ったら、おぉ兄様が悲しむと思う。もしかしたら泣いちゃうかも。あたしなら泣いちゃうわ。もう大人だから、すぐ泣き止むわよ? でも泣くと思うの。
「おぉ兄様」
手を伸ばして抱っこをせがみ、おぉ兄様は笑って叶えてくれた。お父様はもういないから、抱っこはいつもおぉ兄様だ。あたしはおぉ兄様が大好き。
「ねこ、がまん、する」
お母様は「あらぁ」と悲しそうな声を出した。ちぃ兄様も唇が尖る。でも、おぉ兄様を皆で責めたらダメなの。あたしは仲良くがいいから。
「猫、可愛かったでしょう?」
「うん」
お母様の質問に頷く。
「だったら、家にいたらいいなと思うだろ?」
「うん」
ちぃ兄様の質問も、その通りだと思った。だから頷く。
「なのに、飼いたくないのかい?」
おぉ兄様は困ったような顔であたしに聞いた。それも「うん」で頷く。全部嘘じゃないし、適当でもないわ。あたしは猫がいたらいいなと思うし、飼いたくないんだもの。
「どうして飼いたくないの?」
お母様は不思議ねと首を傾げた。あたしも傾げて、また考えてみる。
「レオ、とこ、いくもの」
猫はレオンのところにいる。もし家に猫がきたら、お母様やちぃ兄様はレオンの家に行かないかもしれない。行く回数が減るのが嫌だった。何回でも、毎日でも遊びに行きたい。
レオンの家に猫がいるから、お母様も遊びに行くでしょう? だから、家には猫はいらないの。何度も説明したら、おぉ兄様が「なるほど」と頷いた。わかってくれたみたい。
「ルイーゼは、レオンが好きだからね。彼に会いに行く回数が減るのは嫌だから、猫は要らない……あってるかい?」
「うん」
おぉ兄様大好き! 両手を広げて抱き着いた。しっかり抱きしめてぽんぽんと背中を叩く。おぉ兄様のこういうところ、本当に好き。
「……猫がいても遊びに行くわよ?」
「母上、負け惜しみのように聞こえます。ルイーゼの判断を認めてください」
お母様は大きく息を吸って吐いた。
「生き物だから責任をもって管理する、アマーリア夫人にもそう言われたの。猫が年老いて寝てばかりになっても愛せるなら応援します、と」
すでに釘を刺されていたのよね。と頬に手を当てたお母様が悲しそうな顔をした。まさか……レオンのお母様は、あたしのお母様の頬に釘を刺したの? 痛いのかしら。ところで、釘ってどんな形? こてんと首を傾げて、おぉ兄様に尋ねた。笑いながら、今度見せてもらう約束をしたわ。