軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31-1.(ランドルフ)不思議なご一家の一員

猫という動物は知っているが、触れたのは初めてだった。レオンが大喜びで会いに行くのを、ガラス扉越しに見ていた。危害を加えられるようであれば、猫を排除するのも俺の仕事だろう。そう思った時期もあったけれど。

「らぅふ、こち!」

まだ三歳のレオンは、小さな「っ」が発音しづらい。母に聞いたら、俺も同じだったと笑った。最初は話す内容が聞き取れなかったのに、すぐにわかるようになる。家庭教師が教えてくれた「順応力」ってやつだ。

ランドルフは言いづらいから、と「ラルフ」と愛称を決めた。それも時々、言いにくいようで……ラルになったり、ラゥフになったり。くすくす笑いながら、呼ばれた俺は扉をくぐる。ガラス扉の内側は、猫用の部屋だった。

爪とぎをされたので、壁に板を張っている。きちんと製材されてデザインされた分厚い板は、部屋を一周していた。高い位置が好きな猫のために、壁にステップを作る。高い木を大きな鉢植えにして持ち込んだのも、猫が登るから。

窓がガラス張りで足元まで見えるのは、猫が外を見るためだろうか。公爵夫人のアマーリア様は、貴族夫人らしくない。悪い意味じゃなくて、いい意味でだ。お優しいし、俺のこともレオンと変わらず気にかけてくれる。猫も使用人も、過ごしやすいよう手配していた。

使用人に休暇を与え、給金のほかにお小遣いを渡す。初めて聞いた。使用人がいつ休んで働いているかなんて、考えたこともなかったから。自分に置き換えて考えてごらんなさい、とアマーリア様は言った。

仕事を一生懸命朝から夜まで頑張って、得たお金をすべて家族に送る。手元に残らないから、休みの日はぼうっと過ごす。そんな話を聞いて、恐ろしくなった。長期休みに別宅や実家へ遊びに行かないのか? 一日休みでも、街へ出ないで寝ている? アマーリア様に教わらなければ、知らなかった。

猫もそうだ。平民が飼う動物で、家やドレスを傷めるから貴族は飼わない。ネズミや虫を捕まえる汚い生き物と聞いていた。貴族の屋敷で飼われているのは、馬が中心だ。広い敷地を持つ上位貴族なら、羊や牛、管理するための犬だろうか。

この屋敷では使用人も猫を飼っており、最近ではお屋敷の猫と交流しているらしい。それって平民の子が貴族と遊ぶのと同じじゃないか? 驚くが、アマーリア様もレオンも気にしなかった。二人が平気なら、ケンプフェルト公爵閣下も何も言わない。

不思議なご家族だ。そう呟いたら「あら、ラルフも家族なのよ」とアマーリア様が笑った。そっか、俺も一緒なら、外から見たら俺も不思議なのかもな。想像したらおかしくなって、一緒に笑う。

母上がアマーリア様を好きな理由がわかりました。俺は、最高の主君とご一家に仕えることになりそうです。