軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30.(フランク)猫という生き物

貴族は猫を飼わない。どの家でも当たり前の状況でした。なぜなら、猫は家を傷めるから……家具で爪を研ぎ、高価な絨毯を毛だらけにし、高い場所に飾った食器や置き物を落下させる。貴族夫人の大切なお衣装に爪を立てて駆け上り、出かける前なのに毛をつけてしまう。

可愛い動物ですが、同時に自分勝手で命令を聞きません。犬であれば躾けて叱ることで、お衣装を汚す失態は避けられるでしょう。猫は躾が出来ず、避けられてきました。倉庫でネズミを捕るのが得意なため、平民の間では飼われることも多いと聞きます。

そんな中、筆頭公爵家ケンプフェルトのお屋敷で、猫が飼われることになりました。若様のお願いと、奥様の希望が重なった結果のようです。旦那様はお二人がいいならと許可なさいました。今後が思いやられる、そう思ったのですが……奥様から意外な提案がございました。

猫達を専用の部屋で飼う、と?

一つの部屋を用意し、猫と触れ合う際はその部屋へ移動する。猫が飛び出さないよう、二重扉を作る。毛や汚れを落とすため、廊下に専用ブラシを用意する。聞けば聞くほど、驚きのご提案でした。そのような方法があったとは!

奥様のお言葉通り、手配をいたしました。ちょうど温室を作っていた職人に相談したところ、すぐにガラスの二重扉が用意されました。後日、様々な改良が加えられますが、ひとまず形になりほっとしたのを覚えています。

猫の生活は夜型なので、昼間は眠っていることが多い。それを邪魔しないのも、奥様の意見でございました。若様はもちろん、シュミット伯爵家の皆様もきちんとルールを守って猫と触れ合います。下働きの中から、数名、猫の世話係を選びました。これも奥様からご提案いただきました。

実際、世話係を買って出たものの、子供のうちは忘れてしまうことも多く……。猫は生き物ですので、我慢ができません。排泄の箱が汚れていれば、絨毯の上でも用を足す。ご飯がなければ、寄越せと鳴いて騒ぐ。本能に従う猫にとって、当然の要求でしょう。

それらを放置すればストレスになると、奥様はお考えのようでした。下働きの子には、仕送りをしている者が多くいます。猫係の仕事をこなすことで、給金が増えると聞いて立候補者が殺到しました。猫を飼った経験がある者に限定して選び、世話を任せています。

猫も快適なようで……おっと。足に擦り寄る猫に気づき、足を止めた私は白猫を抱き上げました。服が汚れてしまいますが、脱走は見逃せません。赤子を抱いたことはありますが、猫は初めてで……くにゃくにゃする体は抱きづらく……温かくて触り心地が極上でした。

先日、妻イルゼに誘われたときは猫部屋の訪問を断ったのですが……次の休日に同行してみようかと思うほどです。誘われなければ、私のほうから持ち掛けてみましょうか。