作品タイトル不明
27.(下女)猫係という不思議な仕事
筆頭公爵家 様(・) の洗濯係、それが あ(・) た(・) い(・) の仕事でした。毎日、白いシーツやタオルを洗い、真っ白で柔らかい布を畳んで返す。最上級の布に触れられる、洗わせていただける。お針子になるには不器用すぎたあたいにとって、最高の仕事ですよ。
大きな商家の次男に見初められた姉のお陰で、ようやく掴んだコネの成果だ。姉の夫の母親の実家で、姪の次女が嫁いだ先だったかな? 完全に他人だと思うけれど、お貴族様になった次女さんの友人のコネだった。
ただの洗濯係にも、調査が入るんだよ。公爵家様ってのはすごいね。あたいには想像できないほど、高貴な方々だ。それなのに、声を掛けて頂いたことがある。坊ちゃまが服を汚して気になさった奥様が、あたいらに「手間をかけてしまったわ」と仰ったんだよ。
驚きすぎて、何て答えたか覚えていない。丁寧に頭を下げただけだったかも。とにかく、この公爵家様のご一族は最高の貴族様なのさ。運がよかったと、仲間同士で話してる。だってさ、よそのお貴族様で奉公して、いきなり放り出された話を聞いた。
悪いご子息様がいらして、手を出されそうになったとか。なくなった宝石を盗んだと言われ、鞭で叩いて解雇された話もあったっけ。あたいらの手が届くような場所に、宝石なんざ置いてあるはずないのにね。侍女さんが運んできた布を洗うだけの毎日だよ?
まあ、ともかく。この公爵家様は破格の待遇と、過ごしやすい環境が整っていた。絶対に辞めたくないから、全力で洗って最高の状態で侍女さんに渡してんよ。
高貴なご一家では、あたいら平民と違って猫や犬は飼わない。お高いあれこれを傷にするし、毛が飛び散るからさ。臭いもまずいんだね。執事さんや侍女さんも、猫や犬を飼わないのが当たり前だった。なのに、この公爵家様の寝着に猫の毛がついていた。
あたいは最初驚いて、気のせいかな? と思ったんだけど。次の日もまたついててさ。高価なドレスなんてのは、専門の担当者がいる。あたいらは触れられないし、洗えと言われても困るけど。猫の毛はタオルや侍女さん達の服にもついてるんだよ。
聞いたら、猫がいるっていうじゃないか。お屋敷の中にお部屋を貰って暮らしているなんて、あたいらよりご立派なもんで。ある日、侍女さんの一人に声を掛けられた。上級使用人の服を着ていらして、綺麗な方だったよ。ああ、奥様のほうがずっとお綺麗だけどね。
「猫を飼ったことがあって、世話の出来る人を探しているの」
すぐに手を挙げたよ。猫なら実家で飼ってたんだ。ネズミをよく捕まえる優秀な猫だった。このお屋敷でも猫はネズミを捕るのかねぇ。専用の砂を掻いて、フンを捨てる。汚れた部屋を掃除したり、食べ終えた食器を片付けたり。簡単作業だけなのに、驚くほど給金が増えて。
実家へ仕送りしたら、すごい喜んでくれた。お猫様様さ。あたい、これからもお猫様の世話を頑張るよ。