作品タイトル不明
16-2.(ユリアーナ)異例尽くめで楽しい
黒くてカップの底が見えないお茶は、初めて飲んだ。他国から仕入れたお茶らしい。リースフェルト公爵夫人が選んだと聞いて、なるほどと納得した。だって、公爵夫人のセンスって独特だもの。紅茶は明るい色でカップの底が見えるから、内側に鮮やかな絵や模様を描いたカップも多かった。
今日のカップはつるんとしていた。持ち手がないから、両手で包むように持つけれど、熱いので縁に触れてしまう。リースフェルト公爵夫人の説明では、これが正しい作法で問題ないそうよ。ほかにも色の違うお茶が何種類もあって、紹介していくんですって。
楽しみね、渋いお茶は甘くして飲めばいいし、すっきりしたミントみたいなお茶もあるかしら? お姉様やヴェル様とお茶の話で盛り上がった。お茶菓子は厚みのあるさくっとした焼き菓子、薄くてぱりぱりした触感のチョコ菓子、ナッツが入ったケーキと三種類並んでいる。
ナッツのケーキはお酒が染み込ませてあると聞いて、ヴェル様と顔を見合わせる。私達はお酒があると食べられないわね。そう思ったら、ベッティーナ様が別のお皿を差し出した。
「こちらはお酒を使っていないわ。どうぞ」
「ありがとうございます!」
ヴェル様と二人で手元に取って、お皿に置いた。カトラリーに手を伸ばそうとしたら、ヴェル様は指先で摘まんで口へ。構わないの? 王族がいるお茶会よ?? きょろきょろしたら、お姉様もお義兄様も手で摘まんでいた。なんと王太后陛下まで!
今日は異例尽くめのお茶会ね。お茶のカップに持ち手がなくて、初めての黒いお茶で、さらにお菓子は手で食べるなんて。でも不思議と楽しい。淑女らしい礼儀作法は心地よさを与えるけれど、今日のお茶会はただただ嬉しくて幸せだわ。
「あら、レオン。口から落ちちゃうわ」
お姉様が手を伸ばし、レオンが零した欠片を拾った。当たり前のように口に入れる。それを見たローズが、真似てお菓子を膝に落とした。期待の眼差しを向ける先で、お姉様が「あらあら……困った姫だこと」と笑って同じように食べる。嬉しそうにローズが足を揺らした。
「ケンプフェルト公爵夫人って、本当に素敵よね。幸せを絵に描いたような……体現する、の表現がぴったりなの」
ヴェル様の言葉が嬉しくて、満面の笑みで頷いた。
「このお菓子、私達が作りました。といっても、私のしたことは粉を振って混ぜるくらいですが」
国王カールハインツ陛下の暴露に、え? と皆の視線が手元に向かう。このお菓子、すごく美味しいし綺麗に出来ているけれど……陛下がお作りになったの? 正確には、王太后陛下を含めたご家族で作ったみたい。すごく美味しいと褒めて味わい、瓶に入った飴をルイーゼ様からもらった。
蜂蜜入り? 綺麗な紙に包んだ飴は形が不格好で、それが手作り感が出てて素敵。ルイーゼ様にお礼を言えば、嬉しそうに笑って手を振ってくれた。ローズも成長したら、こんな感じかな?
……にしても、粉は振るものじゃなくて篩うものよ。国王陛下相手だから私は言わないけれどね。ローレンツ殿下にしっかり指摘されていたわ。