軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15-1.(ヘンリック)嫁には出さんぞ!!

可愛いローズにもう虫がついた。レオンの側近として住み込むバルシュミューデ公爵家のランドルフだ。次男とはいえ、同じ公爵家の者が側近につくのは珍しい。長兄がいるのだから、兄のサポートをするのが一般的だった。

優秀で飲み込みが早く、受け答えや礼儀作法も問題ない。公爵夫人のユーリア殿が直々に話に来たこともあり、受け入れたが……。ローズは絶対に嫁に出さないからな!

てちてちと愛らしい走り方でレオンを追いかけたローズを、ランドルフは抱き上げた。まだレオンが手伝えないのは仕方ないが、そこは俺の役目だろう。父親であり家族で、何よりローズを大事に思っている俺が助けるべきだ。

睨んでいると、アマーリアに脇をつつかれた。

「ヘンリック様、睨んではいけませんよ。ほら、お口を開けて」

人前だがいいのか? 視線で問えば、にっこりと笑顔が返ってきた。問題ないな。素直に口を開けて菓子を貰う。小さめの菓子を選んだのは、一口で入るからか? 甘くて溶ける砂糖菓子を味わうついでに、アマーリアの指先にキスをしたいが……さすがに我慢した。

王宮での振る舞いとして、どうかと思うからな。ここに集まった誰かが口外したり、吹聴したりする心配は要らないのは幸いだ。

「仲がいいのね」

嬉しそうに笑うマルレーネ様に、皆が頷く。今日は公爵家のみを集めたお茶会と聞いた。バルシュミューデ公爵ロルフ殿と夫人ユーリア殿、リースフェルト公爵イザーク殿と夫人パウリーネ殿、後は子供達が並ぶ。国王カールハインツ陛下は、母君の隣で穏やかな顔を見せていた。

この国は一時期、俺やマルレーネ様がいなければ傾くほど歪な状態だった。アマーリアが嫁いですぐ、変化は目に見えて現れる。彼女自身が何かを強制したことはない。いくつか提案したり、自ら動いてみせたりしただけ。

感化されたのは王家と公爵家だけではない。ティール侯爵家をはじめとして、様々な家が影響を受けた。文官達の仕事時間も定時に収まり、武官は護衛などの任務時間の短縮を可能とした。それでいて問題なく国政は回っている。

家族との時間が増えたことで、俺自身も変化した。自覚がある。家で絨毯に座り、猫を膝に乗せて遊ぶなど……かつての俺に想像できただろうか。アマーリアと出会って僅か三年、それ以前の生活が霞んで思い出せないほどだ。

「このお茶はパウリーネ様がご用意くださったのよね? とても香りがいいわ」

初めて見る焦げ茶色のお茶だ。紅茶を見慣れているため、渋いのではないかと心配になる。だが蜂蜜も入れずに口をつけたアマーリアは「美味しい」と微笑んだ。覚悟を決めてお茶を煽る。

「うまい、な」

驚いた、さっぱりしていて飲みやすい。紅茶と同じ葉を、特殊な製法で熟成させているとか。アマーリアの麦茶と並んで、これは流行しそうだ。そう伝えたら、パウリーネ殿は嬉しそうに口元を緩める。以前「悪い人ではないけれど」と評された彼女は、公爵夫人らしい落ち着きを保って会釈した。