作品タイトル不明
13-2.(レオン)いたいたいの、とんでけ
「譲れるのは偉い。そうしようか」
「旦那様、腰を痛めるのでお諦めください」
フランクが何か言ってる。お父様は大丈夫と言いながら、遠慮するラルフを肩に乗せた。ぐいっと身を起こして、ベルから僕を受け取る。抱っこするお父様の首は、ラルフが座ってるから……腕でいいや。しっかり掴まった。
「馬車に乗るから、すぐに下りるのよ。気を付けてね」
お母様に言われ、僕は頷いた。少し先にある扉をくぐるとき、上で変な音がする。顔を上げたら、ラルフが頭を押さえていた。もしかして、ぶつかっちゃった? 玄関の扉の上にぶつかったみたい。
「っ、すまない。大丈夫か?」
「は、はい。扉じゃなくて……」
手前にあった飾りに当たったんだって。痛そうだな。撫でてあげたいけど、ここからは届かなかった。外へ出る前にお父様がしゃがんで、僕を先に下す。それからラルフも下ろされた。駆け寄って抱き着く。受け止めたラルフの額が赤かった。
「いたいたいの、とんでけ」
えいっとお 呪(まじな) いをする。これはお母様が教えてくれたんだ。きっと痛いのが消えるよ!
「お呪い、上手になったわね」
お母様はくすくす笑った。間違えてないよね? 褒めてたし。ラルフの手を引いて、一緒に馬車に乗り込んだ。僕達は後ろ向きになるの。お父様とお母様は進む方向へ向くんだ。ロジィはお父様とお母様の間に座って、お澄まししていた。つんとした感じなんだ。
これはアナ姉様を見て覚えたんだと思う。アナ姉様は左側、ラルフが右側、僕が真ん中で手を繋いだ。馬車の中はすごく揺れる。だから滑って落ちないように手を繋ぐの。前にずるずる滑って、僕だけ床に落ちちゃったからね。
落ちるとお尻痛いし、お洋服も汚れちゃう。
「にぃ、かぁ、とぉ……にゃー! らる」
お父様がむっとした顔で「嫁にやらんぞ」とラルフを睨んだ。にこにこしているラルフの様子に、ロジィも嬉しそう。アナ姉様が「なぜ、にゃーなのかしら」と首を傾げた。僕も「あにゃ」と呼んでいたから、まだ呼べないんだよ。もっと大人になったら、僕みたいに言えるようになる。
アナ姉様にそう話したら、いい子ねと黒髪にキスを貰った。手を繋いでるからかな。擽ったくて、きゃー! と叫びたくなる。でも馬車の中は狭いから、我慢だった。
「レオン、王宮が見えてきたぞ……ほら」
ラルフが指さした先、王宮の塔が見える。もうすぐ着く!
「いつものお茶会だけれど、大人しくしてね。ルイーゼ様と仲良くして頂戴」
「はい、お母様」
いい子の返事をして、たくさん褒めてもらう。ルーは大事なお友達だよ。仲良く遊べるし、ロジィやラルフが一緒でも平気なの。前に遊んだ家の子は、ロジィがいると走り回れないと嫌がった。そういう子とは、もう遊ばないけれど。
ルーは、僕が嫌なことをしたり言ったりしない。これからも仲良く遊びたいな。今日もお迎えに来てくれたかも! アナ姉様の手を離して、ラルフと席を交換してもらう。窓の外の景色に夢中になって、途中で気づいてラルフと手を繋いだ。
危なかった、ラルフが僕みたいに椅子から落ちちゃうかも。