作品タイトル不明
10-3.(ベッティーナ)甘さに甘さを足して
翌日にお菓子を作ると聞いたローレンツが、手伝いを申し出た。女性の趣味と思っていたが、やってみたら楽しい。にこにこと笑顔で話すローレンツは、元気いっぱいに育った。
「そうですね、ご令嬢が趣味として作ることもありますが、料理人は男性が多いですよ」
笑顔で指摘すると、少し考えて大きく頷く。
「そういえば、厨房も男が多かった」
「ええ、鍋をかき回すのも重いでしょうし、力仕事の面もあります」
パンを練ったり、麺を打ったり、大量に作れば大変なのは何の仕事でも同じ。そう理解したローレンツは素直に「すごいなぁ」と声に出した。以前は気に入らないとすぐ放り出したが、この頃は前向きにあれこれ取り組む。お陰で、騎士団での評判もよかった。
「今日は何を作るのですか?」
「ジャムで飴を作ります」
侯爵家でジャムをよく作った。でもジャムも瓶を開封してしまえば、早く消費しなければならない。大きい瓶で作ったジャムだと、使い終わるまでにカビが生えることもあった。大量の砂糖や果物を贅沢に使っているのに、もったいない。
そんな時に他家の夫人から聞いたのが、ジャムに蜂蜜や砂糖水を足して作る飴だった。熱いので形を作るのは難しいけれど、型に流す方法が使える。作り方と注意点を説明した。火傷が一番怖い。数か月前に作ったイチゴのジャムを取り出した。
未開封だけれど、もう食べないと無駄にしてしまう。砂糖水を用意し、ジャムを丁寧に解いた。少しだけ蜂蜜を足して、色を加える。濃赤が薄くなり、イチゴの鮮やかさを取り戻した。
「綺麗ね」
「本当だ」
金属製のトレイに水を張り、上に小さな器を並べる。そこへスプーンで一つずつ満たした。やってみたいと言い出し、ローレンツが苦労しながら垂らしていく。糸を引いた部分が縦に立ち上がり、折って温かい原液に混ぜた。
「温めるとやり直しができるのよ」
「へぇ」
あまり何度も作り直すのは褒めたものでないけれど、人生もこのくらい簡単にやり直せたら楽よね。埒もないことを考えながら、作業する孫の手元に見入った。生まれたときは、あんなに小さくて頼りなかった指が……今は器用にスプーンを扱う。剣を握り、誰かを守る力を手に入れた。
「ずっと見ていたいわ」
二つの意味を込めて呟く。娘と孫の成長をずっと見守りたいし、今の幸せな光景も見ていたかった。振り返ったローレンツは、笑い出す。手が揺れて、器の隙間に落ちて水底で固まった。
「あっ、やっちまった」
「落ちた飴は、内緒で味見しましょうか」
冷やす器をいくつか取り出し、不格好な飴を孫に渡そうとした。口を開けて待っているローレンツに、口元が緩む。尖った先端のある飴を引っ込め、違う飴を入れた。からころと音を立てて、味わう孫の笑顔に娘の幼い頃が重なって目が潤む。早くマルレーネにも食べさせたいわ。