作品タイトル不明
7-1.(ルイーゼ)あたしは立派な”ちゅくじょ”よ
今日はレオンに会いに行く。お母様と着飾って、綺麗なドレスでいくのよ。きっと、レオンも喜んでくれる。鏡の前でくるりと回った。レオンの色に合わせて、薄紫にしたの。汚れてもいいように、上に巻きスカートもしてもらう。
巻きスカートは水色なの。空の色より薄くて、小さな黄色の花も刺繍してある。お気に入りの巻きスカートは三角に巻いて、大きな帽子も被った。 ち(・) ゅ(・) く(・) じ(・) ょ(・) は、日に焼けたらダメなのよ。あたしも立派な”ちゅくじょ”だから、帽子は嫌いだけど我慢するわ。
”ちゅくじょ”は、お母様みたいな素敵な女性に使うと教わった。レオンのお母様もきっと”ちゅくじょ”だわ。だっていつも笑っていて、優しくて、温かい人だから。抱きしめてくれることもあるの。あたし、レオンのお母様も大好きよ。
「ルイーゼ、馬車に乗るわよ」
「はい」
お母様に駆け寄り、手前のステップに足を乗せる。ぐっと体を持ち上げたら、後ろから支えられた。中に乗ってから振り返れば、一緒に行くおばあ様がいる。
「ありがと、おばあ様」
以前は人がいるところで、おばあ様と呼んではいけなかった。でも今はいいのよ。あたしがよく間違えるから、おぉ兄様が決めた。今日はちぃ兄様が一緒よ。
「ローレンツ、先にどうぞ」
「いえ、お母様とお祖母様が乗られてからです」
そういって、ちぃ兄様はお母様に手を貸した。あたしの時はしなかったのに。ぷんと唇を尖らせたら、後から乗ったおばあ様に唇を指で押された。これは引っ込めての合図よ。あたしはいい子だから、ちゃんと引っ込める。
「せっかくの可愛いお顔が台無しですよ、ルイーゼ姫」
「うん、わかった」
馬車が動き始めると、おばあ様がこっそり教えてくれた。”ちゅくじょ”は、馬車に乗るときは手を差し伸べるの。ちぃ兄様や騎士はその手を取って、乗るのを手伝ってくれる。あたしはそれをしなかったから、手を出せなかったのね。
「次からは出来ますか? 下りる時も同じですよ」
「できる!」
大きく頷いた。大丈夫、ちゃんと”ちゅくじょ”するわ。馬車は毎日乗れないから、いつも窓から外を見るの。知らない景色がいっぱい。よく遊びに行くレオンのお家への道は、もう覚えちゃった。一人でも行けると思う。でも勝手に行くのは、”ちゅくじょ”じゃないからダメ。
おばあ様のお膝に座って、少し近くなった窓の景色を眺める。森があって、小さな動物が見えたりするの。今日は小さな兎がいた。茶色くて耳が長い兎に手を振って、道は大きく左へ曲がった。もうすぐレオンの家だわ。
頭の中で順番を考える。ちぃ兄様の手を借りて下りるのが”ちゅくじょ”で、その後はガラスの部屋で遊べるのよね。ローズも遊べるかしら? ランもいるけど、ちぃ兄様は一緒に来る? いつもお母様達とお話ししているから、今日は一緒だといいな。