作品タイトル不明
6-3.(ユリアン)小さな変化と変わらぬ温もり
公爵様が帰宅して、一緒に夕食を食べる。相変わらずの円卓だ。少しだけ変化があった。大皿は円卓の中央ではなく、壁際の細長いテーブルに並ぶ。理由は侍女や侍従が取り分けしやすいから。円卓の中に置いたら、取り分け作業のたびに誰かの間に割り込まないといけない。
「お皿も工夫したのよ」
にっこり笑うリア姉が、ほらとお皿を見せてくれた。初めて見る形だな。
「なんだ、これ」
「食べ物が混じらないの」
「ああ。そういうことか」
納得した。皿が三等分されて、境目が少し盛り上がっているんだ。料理のたびに皿を交換せず、欲しいものを載せて食べる。一度に数種類取ってもらえるし、食べるほうも混じらなくて楽だった。シチューなどの汁物は、別に小さめのスープ皿があった。
「ピアノのほうは……どうだ?」
公爵様に話を振られて、師匠のところの話をする。日常的なことから、ピアノのレッスン時間に至るまで。そんなに話すことはないと思ったのに、話し始めたら止まらなかった。笑顔で相槌を打つリア姉はともかく、公爵様は退屈なのでは?
一度話を止めて様子を見れば、先を促してくる。以前のとっつきにくさが薄れて、親しみやすくなったかな。ユリアーナは他国での演奏会の話を聞きたがり、レオンも手を叩いて喜んだ。求められるまま話し続け、その合間に料理を頬張る。
師匠のところの料理もうまいけど、公爵家は材料が違うのかな。絶品だった。いや、家族がいるから美味く感じるのかも。そんな話を師匠がしていたのを思い出す。
明日は公爵様が休みで、演奏を聞かせてほしいと言われた。まだ演奏家を名乗る腕前じゃないけれど、家族だからいいよな。聴いてもらうことにして、食後の団欒も早めに切り上げた。旅で疲れただろう、と気遣ってくれる。
居心地がよくて、温かくて。俺は幸せだと改めて実感した。好きなピアノを習わせてもらい、生活の苦労もすべてリア姉や父様が負ってくれた。エル兄だって家を継ぐ道を頑張っている。ユリアーナは嫁ぐけれど、それも家の助けになるはずだ。
俺も演奏家として名を馳せて、他国の王族に名指しされるくらいの有名人にならないと! 平凡なピアノ弾きじゃ、恩返しの一つもできないだろ。
翌朝、食後の休憩を終えるとレオンが飛びついてきた。ローズはまだ距離があって、ちらちらと俺の様子を窺っている。帰るまでに、レオン以上に懐いてくれるよう頑張るか。やっぱり話しかけるのがいいのかな? ユリアーナに相談したら、遊んであげたらいいと返ってきた。
貴族の女の子と遊ぶ? ユリアーナみたいに取っ組み合いは無理だから、え? 人形遊び? やったことないぞ。まあ、何でも挑戦してみるか。