作品タイトル不明
5-1.(エルヴィン)執事がほしい
姉上が筆頭公爵家の夫人になり、王太后陛下や国王陛下とも付き合いがある。湧いて出るのは、見知らぬ親戚や話したこともない友人だった。
いきなり訪ねてきて、姉上に紹介しろと騒いだ男もいる。義兄上に会いたいと嘆願を送ってきた奴もいる。まあ、管理人と一緒に撃退したけれど。公爵家ではどうやって処理しているか聞いたら、家令のフランクさんが対処するらしい。
フランクさんの提案で、シュミット伯爵家に執事を雇うことになった。一般的に子爵家以下なら、執事がいない家もある。男爵家でも商売で成功した家なら、執事がいるようだ。
我が家は特別裕福ではないが、必要な経費は削ってはいけない。これは義兄上が教えてくれた。管理人も同じようなことを言っていたから、有能な人の意見は似るのかな。僕はまだ未熟だから、支えてくれる人達を信じて頑張るだけだ。
成長していつか恩返しがしたいと思うけど、かなり先になりそうだった。執事は特殊な職業なので、下手な人を雇えない。フランクさんの紹介待ちとなった。引退した執事に心当たりがあるらしい。
ケンプフェルト公爵家が助けてくれなければ、シュミット伯爵家は途絶えたかも。タチの悪い親戚は片付いたし、あとは僕が騙されないようにするだけ。人のいい父上にも、何かを決断しないよう言い含めた。
「エル、こんなに立派な芋をもらったぞ」
学校に似た施設を作り、領民に文字や計算を教える父は、今日も現物支払で授業料を受け取ってきた。最初から採算度外視の事業だからいいが、この調子で伯爵家を傾けたのか。経営を学び始めて、父上の失敗の原因と対策を知った。
同じ知識がもっと早く身についていたら、姉上に苦労させずに済んだのだろうか。長男として情けない。弟だからと庇護されてきたが、今後は僕が家長だ。ユリアンやユリアーナを守り、家を繁栄させたいな。
「芋は…… 蒸(ふか) しましょう」
どこで覚えてきたのか、姉上がよく使った料理方法だ。栄養が逃げないとか言っていたが、意味はわからない。熱くてふかふかで、美味しかった。今なら贅沢にバターを載せたい。
「鍋にお湯を沸かすんだったな」
父上も覚えていたようで、鍋を探しに調理場へ向かう。もう侍従や侍女がいるのだから、任せればいいのに。ただ、動く父上は嫌いじゃない。
「旦那様がなさることではありません」
年嵩の侍女に追い返される声が聞こえ、笑ってしまった。
「ああ、ここにおられましたか。こちらの税務処理について、確認をお願いします」
公爵家の雇った管理人ローマンさんが、書類を抱えて現れた。一緒に執務室へ向かいながら、芋の話をする。
「ふかす? 初めて聞く調理方法ですね。興味深いです」
好奇心旺盛な人なので、今度やり方を説明する約束をした。芋が出てくる前に、書類を片付けよう。