軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-4.(ユリアーナ)大人の味だわ!

香りのいい花の話で盛り上がり、途中で見つけた不思議な色の花びらに目を奪われる。綺麗な紫色なのだけれど、ややピンク寄りなのよ。一般的に紫の花はスミレのように濃い色が多かった。透き通るような花色に惹かれて、植物園の売店で探す。同じ色の花を見つけ、公爵邸へ送る手配をした。

「綺麗な色だったな」

「ええ、あの花を温室で育ててもらえないか、聞いてみるつもり」

ダメなら私の部屋でもいいわ。日当たりのいい二階の窓際へ置いたら、輝くと思う。そんな話をしながら、近くにある菓子店まで歩いた。オイゲンの説明通り、とても鮮やかな菓子が並んでいる。一人一つ選び、飲み物をつけて座るのがルールみたい。

「予約したティール侯爵家だ」

オイゲンは入り口で店員に予約を伝え、奥の部屋へ私をエスコートする。他のお客さんの間を抜けて、店の裏側へ出た。

「すごい! 植物園みたい」

「植物園の裏側らしいぞ。この辺の木は塀の向こう側だろ?」

どうだ、と彼が誇る。侯爵夫人がお気に入りなのは、この風景があるからね。お菓子屋だけれど、軽食も用意している。運ばれてきたのは、サラダやハムの盛られた皿とパンだった。飲み物は黒いコーヒーで、ちょっとだけ驚く。

「コーヒー?」

「ああ、珍しいから頼んでみた。飲めなければ、紅茶を運ばせるよ」

気遣いが嬉しいし、挑戦してみたい気持ちが勝った。お義兄様から話は聞いたけれど、子供には早いと言われたのよ。笑って伝え、出されたコーヒーを見つめる。黒くて底が見えない。カップを手に取って傾けると、紅茶よりどろりとした印象ね。

緊張しながら口をつけた。一口で、苦い! でも飲み終えたらさっぱりするわ。二口目はゆっくり口の中で転がした。苦いだけでなく、香り高い。ほんのり酸っぱいかしら?

「どう? 俺は好きなんだけど」

「まだ好きかわからないの。でも……大人になった気分だわ」

好きだから味わってほしかった。オイゲンの言葉に、正直な気持ちを返した。嘘はつけないわ。お姉様が教えてくれたのは、小さな嘘が大きな亀裂に繋がること。オイゲンとの間に亀裂なんて嫌だもの。

「苦すぎるなら、砂糖やミルクを入れてみたらいい。母上はそうしているからね」

ほんの少し、ミルクを垂らした。砂糖はやめておくわ。食後のお菓子に、甘いタルトを選んだもの。濁ったように色が変わったコーヒーは、全然違う飲み物みたい。

食事も景色も、もちろん会話も楽しんだ。手土産のお菓子の箱は、オイゲンが持つ。こういうときは男性に華を持たせるのよね? 覚えた内容が実践に結びつくと、学んだ甲斐があって嬉しい。