作品タイトル不明
4−2.(ユリアーナ)お姉様みたいになりたい
お父様やエル兄様へ、演奏会に関する手紙を書いた。先日買った、兎の絵が入った便箋よ。全体に薄い紫で、白い兎が可愛いの。気に入っているから、使い切ったらまた購入するつもり。
さらさらと文章を書いて、ちょっと失敗したところを、黒いゲジゲジに塗り潰した。オイゲンに渡すなら書き直すけれど、家族だし……いいよね? 封筒に入れて準備した。こちらは急ぎじゃないため、数日後の定期便で運んでもらう。
「王太后のマルレーネ様とのお茶会があるの。レオンやローズも一緒よ。今回はお伺いするから、ディは残していくわ」
首が据わったばかりの赤ちゃんだから、馬車移動は早すぎる。つまり近いうちに、王太后陛下はこの屋敷にいらっしゃるのね。ディルクを見たいと仰るのは決まってるもの。
とにかく、王族の方々はお姉様を好きだった。国王陛下や王弟殿下、もちろん王妹殿下もそうよ。お姉様と過ごすと穏やかな気持ちになれるから、好きになる気持ちは私もわかるわ。お義兄様がヤキモチ妬くくらい、王太后陛下は親しくしていた。
「いつですか?」
「五日後の午後ね」
またお義兄様へお昼を届けて、一緒に食べるのね。そのあとでお茶会……どうしようかしら?
「返事はあとでもいい?」
「ええ、構わないわ。そうね、ご連絡するから三日後には教えて頂戴」
「はい!」
オイゲンとの予定が入るかもしれないし、リースフェルト公爵令嬢からもお誘いがあったのよね。最近は社交について教わっていた。あの方は顔が広いから、接し方やあしらい方が参考になるの。婚約者がいるのに、勝手に触れてきた場合の対処方法は、何種類も教わった。
よほど嫌な思いをされたのかも。私もきちんと覚えて、オイゲン以外に触れられそうになったら、実践して逃げるわ。もちろん、オイゲンがいつも隣にいてくれるから安心だけど。万が一があるでしょう? 話が逸れてお姉様と雑談に興じる。
「対処方法を知っていたら、突然の事態でも慌てなくて済むわ。素敵な友人ができて良かった。大切にしなさいね」
「はい、お姉様」
リースフェルト公爵令嬢に、今度名前でお呼びしていいか聞いてみよう。私のことも名前で呼んでほしいわ。親しく、結婚後も付き合える友人になりたいの。公爵家の方だからではなく、冷たそうに見えて優しい不器用な彼女が好きだから。
微笑むお姉様は、この結婚で幸せになった。レオンはいい子だし、ローズも可愛い。赤子のディも昔のローズを見ているみたい。この屋敷に来て、友人ができたお姉様は笑顔が増えた。
私もお姉様みたいになりたいわ。オイゲンは応援してくれるかしら? 明日が楽しみだわ。