作品タイトル不明
4-1.(ユリアーナ)お気に入りの便箋で
オイゲンからデートの誘いがあった。昨日も会ったばかりなのに、とにかく嬉しい。少しでも一緒にいたいと思う。手紙を受け取ったのが夕食後で、レオンやローズと遊んでから自室で開いた。
失敗したわ。明後日の予定なら、伝令の方に返事を持って帰ってもらえば良かった。大急ぎで便箋を選ぶ。シンプルな便箋が数種類、仲良くなった令嬢と交換した花柄の可愛いのも引っ張り出した。婚約者宛だから、可愛くてもいい? でも、男性はシンプルな方が好きかも。
お姉様に相談してみようかな。もう部屋に引き上げているし、明日の朝にする? でも……朝一番で返事を出したい。迷って、一番気に入っている青い小花の便箋を選んだ。リースフェルト公爵令嬢と交換したものよ。
すっごく可愛いから手元に残したい気持ちより、オイゲンに気持ちを伝えたい気持ちのほうが強いの。それにオイゲンなら大切に保管してくれるわ。枚数がないから失敗しないように。文章を先に考えて、下書きしてから清書ね。
結局、夜遅くまで何度も文章を練って書き上げた。宛名を記して、裏に署名する。封筒も便箋とお揃いなの。それに封をせず、朝食の席へ持って降りた。お姉様に相談すると、さっと目を通して頷く。
「封をしておいて。すぐに準備させるわ」
「ありがとう、お姉様」
「……それは?」
気になったのか、ローズに擦った林檎を食べさせていたお義兄様が尋ねる。まさか、お姉様ったら話さないわよね? 心配になって見つめると、にっこりと笑って「内緒」と返した。お義兄様はそれで引き下がる。
こういう信頼関係、羨ましいわ。私とオイゲンもこんな夫婦になれるかしら?
食後すぐに、フランクさんが公爵家の紋章入りの封筒を出してくれた。薄青の封筒を閉じて、中に入れる。きっちり封をしてから、蝋を垂らして紋章が押された。正式文書みたいでカッコいい。上から押した紋章は、金属製のスタンプになっている。
公爵家でこれを持つのは、お義兄様とお姉様、それからフランクさんだけ。すぐに伝令の人が呼ばれ、馬に乗って出発した。一時間もあれば到着すると思うわ。
「明日の予定を組んで、連絡して頂戴。帰宅時間はフランクに伝えてくれてもいいわ」
「お姉様は出かけるの?」
予定は聞いていないけれど。首を傾げたら、思わぬ返答だった。
「いいえ、温室でハープの練習よ」
先日帰ってきたユリアンは、ピアノがすごく上達していた。驚いたお姉様は、公爵家の使用人達と練習を始めたの。出かけ際に「今度帰ったら皆で演奏会しよう」とユリアンが言ったから。一緒に演奏するためには、上達が必要だって。
私もフルートの練習をしなきゃ……オイゲンも参加しないか、聞いてみましょう。お父様達にも練習するよう手紙を出したいわ。夕飯後、お姉様達に相談しなくちゃ!