軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-2.(リリー)一生ついてきたい

同僚と話した際に聞いたのは、継母が継子をいじめる話。世間でよくある物語だし、現実でもあった。だって後妻に入る方にしたら、自分の血を引かない子よ? 可愛いと思えないのが普通だわ。同僚も、後妻と折り合いが悪くて家を出ている。

「レオン、おいで」

手招きして若様を膝に座らせ、今日も手ずから食事をさせる。それは侍女や乳母の仕事では? と思うが、奥様にとっては楽しみだと返ってきた。侍女長のイルゼさんが言うなら、私に異論はない。

「こっちも食べてみる?」

「うん」

頷く若様は嬉しそう。今までずっと一人だったから、自分だけを見てくれる人に懐くのは当然よね。しかも新しい母親なんだもの。血の繋がりがどうとか、そういうのを理解できる年齢じゃない。ただ優しい人に構ってもらえて、嬉しいだけ。

イルゼさんが指先で眦を押さえた。涙が出ちゃったのかも。涙脆くなったと苦笑いしていたのは、昨日よ。食事の時にそんな話を聞いた。隣のフランクさんが「そんなものだ」と笑い飛ばしていたっけ。お似合いの夫婦だわ。

私もこの屋敷で出世して、ここで働く誰かと結婚したい。それで、若様みたいに可愛い子を授かったら……最高だった。夢見るのは自由よ。

「入浴を……奥様が? それはいけません」

若様の入浴について、イルゼさんがしっかりと説明した。大きな屋敷は、それ自体が一つの共同体。誰かの仕事を奪えば、その人の存在意義をなくすことに繋がる。だから、使用人の職分には絶対に手出ししないこと。奥様が怒るかと思ったけれど、そうなのねと納得されていた。

きちんと話が通じる上司がいると、仕事がしやすいのね。いなくても動いていた公爵邸の有り様は、ちょっと問題だったと思う。上司が有能すぎたんだわ。

「おか、しゃ?」

「なぁに、レオン」

若様はことあるごとに、奥様を呼ぶ。お母様と辿々しい口調で、何度も呼びかけては確認しているみたい。私ならいい加減「うるさい」と言いたくなる回数なのに、奥様はその度に少しずつ表現を変えながら応じる。微笑んで手を伸ばし、触れれば引き寄せて抱き上げた。

愛しくて仕方ない、そんな顔で頬を寄せて……。尊敬しちゃうわ。この方が嫁いできてくださったお陰で、私もすごく成長している。人との挨拶、関わり方、優しさの本質。覚えることが多くて、忙しいのに心は満たされた。

「奥様は、若様が邪魔だと思わないのですか?」

己の腹を痛めて産んだ子であっても、面倒を見ないのが貴族夫人だ。公爵家の女主人、それも継子なら面倒見なくても誰も責めたりしないのに。

「そう、ね……邪魔だなんて考えたこともないわ。だって、旦那様が不在でしょう? 私の子供はレオンだけなの。こんなに可愛くて、素直で……疎む理由なんて一つもないわ」

誇らしげに若様を褒める奥様に、一生ついていこうと思った。こんなに素敵な奥様の専属侍女なんて仕事、二度とお目にかかれないと思うから。