軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-1.(リリー)新しい奥様

公爵家に勤めて、早十年。二桁の大台に乗ったところで、新しい奥様が嫁いで来られた。ほとんど帰らない旦那様も、これで屋敷にお戻りになるのかしら? そう思ったのも束の間、やはり帰ってこなかった。

立派な公爵邸は、使用人の区分がはっきりしている。仕事の内容も細分化され、基本的によその仕事には手出ししない。相手の仕事を奪えば、その子がクビになるから。先輩に教えられた通り、自分に与えられた仕事だけをこなしてきた。

ケンプフェルト公爵家は、貴族の中で一番偉い。お給料も高いうえ、賄いや部屋も申し分なかった。侍女服も可愛いので、気に入っている。できるなら、結婚後も勤めたいと思っていた。でも……新しい奥様への対応は、どうかと思う。

不在で手間がかからず、少量の仕事で大金を支払ってくれる最高の雇用主だ。王宮で仕事をしていて、前の奥様との間に嫡男もいる。何も不安がないから帰ってこないのだろう、と認識していた。だけど、結婚式当日に奥様だけ屋敷に来るって……どういうこと?!

一日も休めないほど忙しいわけないよね。奥様は気丈に振る舞われていた。絶対に傷ついたはず。最高のおもてなしをして、少しでもお慰めしなくては……! 新しい奥様は大人しめの金髪の愛らしい人よ。ちょっと若すぎる気がした。旦那様って、若い子好き?

性的嗜好はどうでもいいけれど、年齢差は結構ありそう。前の奥様は別段、若すぎる感じはなかったよね。同僚と話しながら、入浴の手伝いに向かう。侍女長のイルゼさんも世話をするの? 私の仕事、残ってるかな。それより、意地悪な女性だったらどうしよう。

あれこれ考えていた過去が嘘のよう。奥様は最高の女性だった。旦那様がいないなら、それでいいと自由に振る舞う。若様を連れて、毎日幸せそうに笑っていた。ご自分が産んだ子ではないけれど、ことあるごとに可愛いと繰り返す。その笑顔に嘘はなかった。

「リリー、お茶を淹れてくれる?」

「はい、畏まりました」

時間をかけてじっくり蒸し、広がった茶葉の香りと味を引き出す。カップに注いで差し出せば、丁寧にお礼を言われた。奥様なのに、丁寧すぎない? やっぱり、イルゼさんやフランクさんに注意されている。それでも奥様は変わらなくて、お礼の言葉を欠かさなかった。

侍女だけでなく、床磨きや洗濯の下女にも声をかけたと聞く。料理が美味しいと褒められ、料理長はさらに腕を磨いた。おかげで美味しい料理が毎日食べられて、私達も嬉しい。

奥様が嫁いで来られてから、毎日に色が増えた気がするの。