軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

569.やっぱり欲しがられたわ

王宮の入り口で、レオンは王宮の衛兵に布の剣を見せた。自慢げに「ぼくの」と胸を張る。衛兵もきちんと受けて、真剣に剣を確認して抜いてから納めた。

「問題ありません。どうぞお通りください」

「あい!」

このノリの良さは、幼子の面倒を見たことがありそう。息子さんか弟さんか、微笑んでお礼を言って通った。

ヘンリック様との食事は、楽しく過ごせた。一緒の時間は早くて、驚くほどよ。文官の方々も差し入れに喜んでくれたわ。午後の休憩時間が楽しみですとお礼を言われる。名残惜しそうなヘンリック様に「早く帰ってらしてね」とお願いし、手を振って別れた。

王宮侍女の案内する道は、すでに見知った廊下だ。レオンとランドルフ様、二人の小さな騎士にエスコートされて温室へ入った。

「わたしも、ほしぃ」

温室へ通された途端、顔を合わせたルイーゼ様が強請る。やっぱりと思うけれど、王妹殿下が腰に布の剣を下げるのは違う。女性騎士を目指す予定ではないし……。

「あらあら。レオンを好きだから、同じものが欲しいのね」

笑うマルレーネ様は、以前より華やかになられた。王妃時代もお綺麗な方だけれど、今のほうが生き生きしている。楽しそうと表現したら近いかしら。

「ルイーゼ様でしたら、そうですね。おままごとセットのほうがよろしいかと」

多少なり微笑ましい方向へ変更しないといけないわ。そう思って提案してみた。野菜や肉に見立てたクッションを作り、剣を包丁にしてはどうか、と。興味を惹かれたようで、ルイーゼ様は包丁でいいと言い出した。

王宮の針子が呼ばれ、提案を聞いてからランドルフ様の剣を確認する。鞘の滑りを良くするため、内側に羊皮紙を入れていたのね。アイディアがすごいわ。

「もう少ししたら、ローレンツが来るわ。今日は会議があって、どうしてもカールハインツは無理だったの」

「……また機会がありますわ」

お茶会のたびに、陛下が参加するのは当然と思っているマルレーネ様に苦笑いする。でもまだ若いのだし、息抜きの場になるなら嬉しいわ。旅立った弟達の話をして、最近の王宮での小さな事件を聞く。

白い幽霊が出ると噂になり、侍女達が怯えていたらしいわ。実際は白い犬だったの。子犬で、どこからか紛れ込んだのね。親が見つかるまで保護するつもりが、そのまま飼うことに決まったみたい。

「犬?」

ランドルフ様は目を輝かせた。彼は猫より犬派なの。オイゲンの実家の大型犬の話に、遊びに行きたいと言っていたくらい。子犬は温室に連れてこられ、一緒になって遊び始めた。危ないからと、布の剣は置いて行かせる。不満そうだけど、犬が戯れて転ぶ可能性もあるわ。

「しっかり預かるから、頑張ってきてね。小さな騎士様」

「うん、らんどぉふ、いこ!」

待たせたのは自分なのに、この発言……自覚がないのね? 声を立てて笑ってしまい、レオンは不思議そうに首を傾げる。ランドルフ様と走っていく後ろ姿は、少しだけ逞しくなった気がするわ。