作品タイトル不明
568.剣を持って王宮へ
ランドルフ様は順調に馴染んで、一週間もすれば屋敷に泊まるようになった。二日に一度くらいの頻度で泊まりたいと言う。きちんとご両親に話してからね、と言い聞かせたら、ユーリア様から許可の手紙をもらってきた。
仕事の早い大人になりそう。ランドルフ様と遊ぶレオンは、鍛錬ごっこに夢中だった。棒で打ち合いは危険なので、長細いクッションを作ってもらう。細い棒状に縫った中に、綿を詰めた特製の一品よ。やや厚い布で柄のようなものも作り、随分と凝った形に仕上がった。よく見ると、紋章が刺繍されているじゃないの。
針子達が張り切ったみたいで、今度は鎧もどきも作るとか。そのうち兜もできそうと笑ったら、すでに計画していた。レオンが楽しそうだし、ランドルフ様も気に入っているようだから。好きにさせましょう。
二週間も経てば、王宮へ差し入れを持っていく日が近づいた。用意したのは、ヘンリック様と食べる昼食とお菓子よ。お菓子は、文官の方々と食べる分に加えて、王太后陛下にお渡しする分も必要なの。きっと楽しみにしておられるわ。
ドライフルーツを多めに載せたカップケーキと、前世の記憶を駆使したアイスボックスクッキー。白と黒が渦巻きになったクッキーは、やや厚くてふっくら仕上げた。硬いのも好きだけれど、差し入れは相手に合わせないとね。
マルレーネ様は小さく割って、口に入る大きさを食べる。硬いと粉が落ちてしまうから、柔らかめのほうがいいと思ったの。それぞれを籠に詰めたので、荷物は三つ。
「レオン、それは置いていきましょうか」
「やっ」
即答で断られる。鍛錬ごっこで使う布製の剣を持っていく気でいた。どう説得すればいいかしら。
「ルイーゼ姫様と遊ぶでしょう?」
「うん」
「姫様に剣を向けるのは失礼よ」
「きし、ちゅるぎ、ここ」
騎士だから帯剣すると言いたいみたい。間違っていないけれど、参ったわね。
「でも抜き身だから失礼……え?」
鞘がないのはダメと言いかけて、よく見たら布のカバーに入っている。あれ、鞘かも……。張り切った針子の一人が、作ってくれたとリリーが耳打ちした。鞘に入っているなら仕方ない。
「わかったわ。絶対に抜かない、叩かない。これを約束してね」
「うん」
迷ったランドルフ様は、レオンが持っていくならと布の剣を手に持った。忠義はありがたいけれど、置いて行ってもいいのよ? 口に出せない気持ちを眼差しに込めたけれど、ランドルフ様には早かったみたい。読み取れなかったようで、レオンと馬車に乗り込んだ。