作品タイトル不明
567.子供は目を離せない
ローズと遊ぶといっても、ほとんどは積み木遊びを見せたり、絵を描いて自慢したりする。今日は粘土遊びをしたのだけれど、ローズが手を伸ばして困ったわ。
レオンは触らせようとするし、マーサは何とか拒みたい。間で私が止めに入り、理由をきちんと説明した。粘土が手に残った状態で、ローズが舐めたら困るでしょう? レオンはしばらく考えて、粘土に指を入れる。口元に運び、ぺろりと舐めた。
「レオンっ?!」
「おい、ちく……ない」
しょんぼりしているところ悪いのだけど、口を濯いで頂戴。何度もうがいをさせ、口に入れないよう教えた。以前はやらなかったのに、ローズが絡んだらおかしな行動を始めて……驚いたわ。
「ろじぃ、ないないよ」
「あばぁ」
会話になっているのかしら。二人を見守る私は、そっと粘土を片付けるよう合図を出した。リリーが拾い上げ、後ろで待つ侍従に持たせる。専用の箱に入れた。
この世界の粘土は、色のついた土だから美味しくない。よく言い聞かせて、絶対に口にしないよう教えた。頷くレオンの手を綺麗に拭いたら、ちょうどヘンリック様が誘いにきた。
「鍛錬と馬だったな。どちらを先にする?」
緊急で届いた書類を確認していた。片付いたようで良かったわ。そこへ、ランドルフ様の到着も知らされる。
「ちょうどいいわ。一緒に遊んでいらして」
私はローズを構ってあげるから。一緒にいる時間を作らないと、忘れられちゃいそう。それに馬も鍛錬も、私は縁がないし。レオンを真ん中に手を繋ぎ、三人で廊下を歩いた。これも久しぶりね。
玄関でランドルフ様と合流、あとはヘンリック様に任せましょう。イルゼ達と並んで見送り、ほっと息を吐き出す。
「奥様、お疲れではありませんか?」
「王宮でお仕事されているヘンリック様より、ずっと楽なのよ」
イルゼの気遣いを、笑って受け流す。ローズの部屋に戻る途中で、ダンスレッスンを受けるユリアーナの様子も確認した。頑張っているわね。新しいことを覚えたり、褒められたりするのが好きだから。あの子に十分学ばせてあげられる環境は、本当にありがたいの。
公爵家が雇うから、王家の紹介で人を選べたもの。近々、王宮へ差し入れに行きましょう。ヘンリック様のお昼ご飯を運ぶ名目で、マルレーネ様達にお菓子を持っていくの。お茶の時間を一緒に過ごしたいわ。
あの方は溜め込んでしまうから、息抜きが必要だもの。お友達だから、いいわよね。事前の連絡は省けないので、ローズの部屋で手紙を書きましょう。毎日が充実して、すごく楽しいわ。結婚当初に想像もできなかった、最高の環境で愛娘に微笑みかけた。