作品タイトル不明
561.久しぶりに妹と二人の夜
ランドルフ様と満足いくまで遊んだレオンは、ご機嫌だった。でもお昼寝の時間を割いて遊んだことで、眠気は突然襲ってくる。食事用のスプーンを握ったまま、頭がこっくりこっくり。前後に揺れるたびに、危ないから手を伸ばす。頭を守るようにして、スプーンを手で覆った。
「奥様、この場合はスプーンを抜いたほうがよろしいかと」
「そ、そうね」
リリーの進言に従い、そっとスプーンを引っ張る。小さな手がついて上がってきた。ど、どうしよう。指を解く? それとも……持たせておく? でもベッドまで持っていたら危ないわ。
「手分けしましょうか」
苦笑いしたイルゼの提案で、私がスプーンを持つ係になった。イルゼが指を緩めて外し、レオンをリリーが抱き上げる。ううん、とむずがるレオンをあやしながら、子守唄を口遊むリリーが退室した。食堂には私とユリアーナだけ。
「子供って突然寝るのね」
「そうよ。あなたとユリアンの時も大変だったわ。同時に二人だし、双子のせいかシンクロして一緒に寝るんだもの」
思わず口に出してしまい、慌てて言葉を切った。まずいわ、寂しさを蘇らせちゃったかも。恐る恐る様子を見れば、ユリアーナはけろりとしていた。
「なぁに? お姉様ったら……私はもう吹っ切れたわよ。それに、不思議とユリアンが無事だってわかるから平気」
双子ゆえのテレパシーのようなものかしら。言葉や感情が伝わるのではなく、じんわり温かいみたい。
「わかるなんて、羨ましいわ」
そんな能力、欲しいに決まってるじゃないの。家族全員を思い浮かべるたびに、無事が伝わって来たらいいのに。そう呟いたら、ユリアーナが呆れ顔で返した。
「全員わかったら、疲れちゃうわよ。特にお姉様は心配性だから、逆に心配になるわ」
「ありがとう、ユリアーナ」
「お礼なんて変よ」
ぷいっと横を向く。ツンツンして可愛い。でも口にしたら拗ねちゃうでしょうね。
ヘンリック様は予告通り、まだ帰らない。レオンはもう夢の中でしょうね。お風呂は一日くらい飛ばしてもいいけれど……。
「ねえ、ユリアーナ。今日は女性同士、二人で休みましょうか」
「え? いいの!?」
驚くほど食い付いてくる。何か相談があるのかも。レオンは眠ったからイルゼかリリーに任せられるし、ローズもマーサが付き添っている。公爵家に来てから一緒に眠ったり、お風呂に入る機会がなかった。
ずっと一緒だった双子の兄と離れたんだもの。きっと不安なんだわ。一晩付き合うつもりで、フランクにそう告げた。さすがに夫婦の寝室はまずいので、入浴後は私室のベッドで休む。
ヘンリック様は夫婦の寝室で休んでいただけば、未婚女性の醜聞にならないはず。フランクも頷いたので、大丈夫そうね。こういうところ面倒だけれど、貴族ならきちんとしておかないと。
お風呂で髪を洗ってあげて、無言で胸を睨まれた。私はあまり立派なほうではないわよ? そう思っていたら、ベッドに潜るなり……とんでもない相談をされた。
「私、オイゲンのために胸を大きくしたいの。何か方法はない?」
知っていたら、私が自分で実践しているわ。オイゲンは大きい胸が好きなのかしらね。未婚の令嬢にそんな話をしたなら叱らないと!
「オイゲンは言わないけれど、こないだ胸の大きな女性を目で追っていたわ」
泣きそうだから、抱きしめて頭を撫でる。私と同じくすんだ金髪に触れながら、言い聞かせた。
「オイゲンに尋ねてご覧なさい。誤解かもしれないでしょう?」
ヘンリック様もそうだけれど、誤解が一番怖い敵なんだから。