作品タイトル不明
557.一人減って一人増える?
フランクが静かな声で来客を告げた。豪華にしようか迷って、いつもの大皿で作ってもらった料理も食べ終え……お茶に手を伸ばしたところ。まだ早い、もう少し。そう思うと同時に、わかっていたことでしょうと自分が返す。
「お客様をお通しして」
顔を見せたのは、予想外の人物だった。ランドルフ様を連れたユーリア様よ。
「ユーリア様、ランドルフ様も……ようこそ」
明日ならよかったなんて、思ってはいけないわ。ヘンリック様も同席した客間で向かい合う。ランドルフ様の意識は、レオンにあるようで……きょろきょろと姿を探した。
「ユリアン達と一緒です。先にお会いになりますか?」
促せば、母親の顔を見てからランドルフ様が頷く。
「お願いします」
もう六歳、立派に受け答えができているわ。バルシュミューデ公爵家の教育水準は高いのね。きちんと頭を下げて、案内するベルントと出ていく。
「突然ごめんなさいね。でも……ランドルフがどうしてもと」
我が儘は久しぶりだわ。そう笑うユーリア様は、ユリアンの旅立ちを知っていた。師となるモーリッツ・アウラー様は、演奏家として名を馳せている。バルシュミューデ公爵夫人ユーリア様は、後援者の一人らしい。音楽家や絵描きなど、芸術関係に出資する貴族は、孤児院への出資者と並んで多い。
アウラー様から話を聞いたのね。それなら、今日はレオンではなくユリアンに会いにきたのかも。
「どうしても、レオン様に会いたいそうよ。ずっと一緒にいたいんですって」
「は、い?」
「驚くでしょう? 私も同じ気持ちなのだけれど……次男だから家を出て、レオン様の側近をするのだと言い出したの」
「兄君のお手伝いではなく?」
以前、兄の手助けをしたいと言っていたけれど。
「それがね。兄上はたくさん側近候補がいるから、僕の入る隙がない。レオン様の一番の側近になるんだ、と譲らないのよ」
小さい子供の発言なので、話半分に聞くけれど。いいのかしら? 隣で無言のヘンリック様に視線を向ければ、彼は会釈して口を開いた。
「もし、レオンを支えていただけるなら、我がケンプフェルト家は喜んで迎える」
迎える? まるで家に越してくるみたいに聞こえたわ。微笑んでそう告げたら、二人に驚いた顔をされた。
「側近はほとんどが、幼い頃から一緒に過ごすものだ」
「ええ。そのつもりで相談に来ましたが……アマーリア様はご存知なかったのですね」
え、本当に引っ越してくるの? 驚いているところに、フランクが申し訳なさそうに割って入る。
「旦那様、奥様。アウラー様がお見えになりました」
ユリアンのお迎えが来ちゃったわ。