作品タイトル不明
555.やっぱりなかなか寝ないわね
風呂上がり、それぞれのベッドに入る。もちろん、子供達が大人しく眠るはずはない。興奮したレオンは走り回った。両方のベッドにダイブして、お尻で滑り降りてまた走っていく。転ばなければいいけれど。
ヘンリック様は私を抱き寄せ、髪を手で梳いている。くすんだ金髪は、派手さがない。
「お母様のきらきらした金髪に憧れていたのよ」
ふふっと笑って打ち明ければ、ヘンリック様は驚いた顔をした。じっくり髪を見つめて、持ち上げる。灯された燭台の火に透かし、得意満面に言い放った。
「ほら、輝いているぞ」
「本当ね、両方楽しめてお得と考えておくわ」
胸の奥がこう……擽ったいというか。むずむずするの。きゅっと手で胸元を握り締めたら、開いたままの扉の陰から、三人の頭が覗いていた。
「大人の魅力ってやつだな」
「お姉様、素敵〜」
「ぼくも!」
双子の感想を吹き飛ばす勢いで、レオンが突進する。手を伸ばして受け止め、勢いを利用してベッドの上へ転がした。仰向けになったレオンを、こちょこちょ擽る。
「きゃあ! やっ、あうっ」
笑い転げるレオンの姿に、ユリアンが立ち上がった。
「ここは囚われた王子様を助けにいかねば!」
「やだっ、これって私がお姫様役じゃない? でも捕まって擽られるのは嫌だわ」
騎士の敬礼を真似るユリアンに、いやんと顔を覆うユリアーナ。本当に……顔立ちは似ているのに、性格が正反対よね。互いに補い合っていた。
積極的で奔放な兄と、意外にも保守的で社交が得意な妹。将来はどうなるのか、本当に楽しみだわ。擽る手を止めたら、笑い疲れたレオンが必死で逃げる。また捕まえようとしたら、ユリアンがレオンの足首を掴んで引いた。
「逃げるぞ、王子様」
「うん!」
ごっこ遊びが楽しいようだけれど、レオンは腰が立たずに座り込む。ユリアンが背負って逃げ帰り、ユリアーナはひらひらした寝着の裾を翻して追いかけた。
「どうなさったの?」
「ああいった遊びも楽しそうだな、と思ってな。子供の頃なら、参加しただろうと……」
「あら、参加なさったらいいわ。私は悪の女王役を楽しみますもの。捕まえたら、片っ端から擽って倒します」
「王子の仇っ! えい」
果敢にも飛び込んだユリアーナを捕獲し、擽りの刑に処す。宣言したら、今度はレオンが助けに来た。交互に囚われたり助けたりを繰り返す。ヘンリック様も捕まえて擽ったら、私が捕まっちゃったわ。
「今夜はここで終わりだ。次はエルヴィンやオイゲンも一緒に……っと、いろいろまずいか?」
「外聞が良くないですね。夜ではなく昼間遊んではいかがでしょう」
提案が気に入ったようで、皆でまた擽りごっこをすると約束した。小さな約束を積み重ねて、いつか……その重さを実感する日が来る。それが大人になるということかもしれないわ。