軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

551.離れたくない気持ちが先行して

痛いと騒ぐユリアンを、ユリアーナが看病する。いえ、病ではないので表現が違うかしら。冷やしたタオルを使い、何度も交換して冷やし続けたと聞いて、翌朝驚いた。

「私を呼んで良かったのよ?」

「ううん、明日には離れちゃうでしょう? だから……一緒にいたかったの」

私自身の意思だと言い切るユリアーナは、少し不安そうだった。公爵家で過ごしてきて、いつも近くに家族がいた。父、兄、双子の兄……それが一人になるんだもの。寂しくないはずがなかった。姉の私がいても、やっぱり不安は募るはず。

「ユリアーナがいいなら、今日は部屋で過ごしましょうか。ユリアンはお医者様に診ていただきましょうね」

「え? 医者なんて大袈裟だって」

遠慮なのか、強がりか。はたまた医者が怖い? なんにしろ、ユリアーナの不安を消す手伝いをしてもらうわよ、ユリアン。にこにこと笑顔で苦情を受け流し、主治医の手配をした。公爵家専属の医師が到着し、傷口を丁寧に診察する。

その間に、私達は朝食を頂いた。ユリアン達の食事は、部屋に運ばせたの。ユリアーナは世話を焼きたがっているし、私達が食べずに待っていたら気にするから。いつもよりゆっくり食事を終えたら、顔を出せばいいわ。

「ヘンリック様、行きますよ」

背を叩かないと、ドアの前で困惑顔のまま立ち尽くしそう。気になるのはわかるけれど、後にしましょうね。レオンは素直に私と手を繋ぎ、歩き出していた。一緒に歩く私達と閉ざされたドアを確認し、ヘンリック様が追いかけてくる。

「本当にいいのか?」

「ええ、問題ありませんわ。ユリアンのことは、ユリアーナに任せましょう」

「……そうか」

信頼して任せるのも愛情表現の一つです。微笑んで促し、食堂で円卓を囲む。以前はやや狭い気がしたのに、円卓の半分が余っていた。きゅっと胸が痛むけれど、深呼吸して着座した。用意された料理は卵、ウィンナー、パン、スープ、サラダ。最後にお茶の準備もしてあった。

レオンにあーんで食べさせ、パンを千切ってもらう。いつもと同じ風景なのに、音が少ないわ。何かにつけ、騒がしいユリアンのいない食卓を、事前に知ることになるなんて。

「ぼく、たべた……」

にっこり笑い、レオンは滑るように椅子から降りる。走り出そうとするので、慌てて引き留めた。

「どこへいくの?」

「ゆん、とこ」

「まだお医者様がいるわ。お茶を飲んでから訪ねましょうね」

「……うん」

お父様達がいなくなったことで、ユリアンの不在が実感を増した。一番遊んでもらった兄だもの。寂しいわよね。叔父と呼ぶより、兄に近い距離で過ごした。レオンはぎりぎりまで一緒にいたいと思っているのかも。

「ユリアンがいいと言ったら、夜はあの子と寝る?」

「……いぃの?」

「聞いてみましょうか」

「うん」

元気よく返事をして、椅子に座り直す。レオンは用意されたお茶を一気飲みした。そんなに焦らなくても、今日はまだ居なくならないわよ。