作品タイトル不明
545.ローズが刺激になったみたい
マルレーネ様の顔を見て、ローズは手を伸ばした。ふっと微笑んで指先を伸ばす。触れた途端、ローズはきゅっと掴んだ。いつもと同じ仕草ね。
「可愛いわ。目元は公爵に似ているかしら……でも全体の雰囲気は、アマーリア似ね」
「ぼくも!」
足元でレオンが声を上げる。あら、手も上がってたわ。
「うふふっ、小さな紳士にそっくりね。とても可愛いわ」
にこっと笑顔で合わせてくれる。さすが、三人のお子様を育てただけあるわ。後ろから肩を叩かれ、ご機嫌のレオンは飛びついた。
「ヘンリック様へ行っちゃうの、寂しいわね」
ちょっと嫉妬してしまう。思わず呟いたら、レオンはヘンリック様に抱き上げられた。そのまま振り返る。
「ちあうの、だめ、らもん」
何がダメなの? 聞き取れたが、意味がわからず首を傾げる。すると、ヘンリック様が代わりに答えてくれた。
「綺麗に着飾った時に飛びつくのは、騎士らしくないからダメらしいぞ」
「立派な紳士……いえ、騎士だったわね」
マルレーネ様が褒めたので、レオンは嬉しそうに足を揺らした。ヘンリック様を蹴飛ばしているわ。すぐに気づいて、大人しくなったけれど。こういうところが、成長した部分かしら。以前なら、気持ちのまま足を揺らしていたもの。
「それにしても可愛いわ。将来は美人さんね」
マルレーネ様の言葉に誘われて、ユーリア様やパウリーネ様も集まってきた。
「まあ、愛らしいこと。うちのヴェンデルガルトもこんな時期があったのよね」
パウリーネ様は目を細め、微笑みを深めた。隣のユーリア様は、切なそうに溜め息をつく。
「私も娘が欲しかったわ。言っても仕方ないけれど」
「あら、まだお若いのだし……バルシュミューデ公爵に頼んでみたら?」
マルレーネ様に言われたユーリア様は、ちらりと夫のほうへ視線を向けた。こちらの会話を聞いていたのか、じっと見つめ返される。私達も息をひそめ、二人の様子を窺った。
「そうですわね。相談してみましょうか」
バルシュミューデ公爵は不自然な咳払いをして、すっと目を逸らす。レオンはヘンリック様の抱っこも気に入った様子で、また小さく足を揺らし始めた。あれに似ているわ、猫の尻尾! 気分を示して揺れたり止まったり、そっくりじゃない。
「私どもも、公爵令嬢にご挨拶させていただけますか」
「もちろんですわ、どうぞ」
文官の奥様達が、次々とローズに微笑みかける。きょとんとした顔のローズは、大きな欠伸をした。目がとろんとして、眠ってしまいそう。
「そろそろ限界かしら。ベッドをお願い」
ベビーベッドを運んでもらい、部屋の中で休ませましょう。お披露目を兼ねているんですもの。そう思ったけれど、下ろすと泣いてしまった。ベッドのほうがいいと思うのに、なぜかしらね。